あかいろ
君にもたれかかって揺られる電車の中は、案外心地よくて、つい瞼を落としてしまうような、よくある午前のこと。
もう少しこうして君に触れていたいなと、時間よ流れないでくれと、そんなありきたりなことを思いながら揺られて。
ふと遠くの青を見つめて呟く。
「このまま一緒に行ってしまおうか」
車両が段差にがたんと音を鳴らし、君は黙ってうつむく。
「そうすれば、ほら。僕たちはもう離れることは無くなるんだから」
がたん。ごとん。がたん。
きぃぃ。
「……ああ、着いたみたいだ」
ゆっくりと停止した電車は、ドアを開けて、僕に青を映して見せる。
腰を上げて君の名前を呼んでも返事はない。そんなにぐっすり眠って、全くもう、仕方ないなぁ。と、君をおぶって青に向かって歩く。
軌跡を君の赤で塗りつぶしながら。