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戦の華  作者:
6/8

応仁の乱

その日は、雨雲が空の大部分を占めていて、綺麗なスカイブルーを見事に汚してくれていた。


麻倉美明は、四方八方に飛び散った髪をムースで落ち着かせ、藍色リボンをそっと制服に付ける。


教室に静かに入り、まず、5秒ほどでクラスメイトを確認する。



6年1組ー





美明は、脳内がやたらガヤガヤとー何かの宴会のように騒いでいるのを、すでに感じ取っていた。

始業式から3日がたった。


「学級委員長ー足加賀 政信」


担任は、黒板にそう書き終えると、足元に転がっていたピンクのチョークの欠片を拾い上げた。


「ということで、学級委員長は足加賀政信に決定でいいかね?不満があれば、いつでも変えられるから」


学級会の成立。


これが、後々クラスの運命を揺さぶっていくこととなった。


「えーっと。学級会委員長の足加賀でーす。まーあ、とりあえずー明るくてー元気なクラスを作っていこうかなあーっと」


足加賀は、めんどくさそうにアクビをしながら言った。

「とりあえずーよろしくー」

________________________

「あ、あのー」

その子が美明のもとにきたのは、あれから数日後のことだった。ちょうど、トイレから帰ってきたところを捕まえられたのだ。

少女はモジモジとしながら、

「ちょっと、いいですか」

「いいですけど?」

その子は小豆色リボンをぶら下げていて、恥ずかしそうに顔を真紅に赤らめていた。3年生くらいだろうか?

「足加賀政信くん、って子いますか?」

「あー、足加賀なら、運動場にいると思うけど。どうせ、靴箱掃除サボってるだろうし」



美明は何気なく「呼んでこようか」と付け加えたが、

「いいえっ、いいんです!さよならっ」


と言って、バタバタと逃げるように帰っていった。


________________________

「ねえ、ちょっといいかな」

その数分後、今度は読書をしているとまたまた3年生くらいの子が声をかけてきた。さっきの子とは違い、堂々たる態度だ。

「何?」

「私、足加賀政信って人探してるのよ。いないかな?」


「そういえば、さっきもあんたと同じくらいの背丈の子が探してたわよ」



美明がさりげなく言うと、その子は顔を曇らせた。

「そう。どうせ、舞瑠ね。ごめん、読書中」


どうやら、さっきの子は舞瑠というらしかった。

「ところで、あんたは?」

「樋野文子。3の2よ。同じく、坪根舞瑠………も」

文子という少女はそう言うと、美明をじっと見つめて首を傾げた。


「もしかして、興味あるの?」


それを聞いた美明はパタリと本を閉じた。

「大ありよ。で、どうなの?2人して政信の取り合い、かな?」


「え、なんでわかったの?」


文子は思わず声をあげた。

「女の勘というものよ。はい、続けて」


「ええと。まず私が政信と知り合ったのは、塾なんです。話したら気があってー。だけど、政信は舞瑠にメロメロなんです。まあ、それはそのはずですよ。舞瑠はすごく、美人だもの」


文子自身ー最後のあたりは声が震えているということに気が付いていた。


「ふーん。なるほどねえ。でもねえー私は、足加賀のどこかいいか分からないんですけど!」


________________________________________


次の日、美明はまた同じ場所で読書をしていた。

「あの、昨日の人」


聞き覚えのある声だ。

ゆっくり顔を上げると、そこに文子と、舞瑠と、見知らぬ少女の顔があった。舞瑠は警察に捕らえられた盗っ人の様な表情を浮かべている。


「あ、文子と舞瑠ちゃん」

ちょうど、教室内には政信がいた。

「2人揃って、どうしたの?」


美明は、「あんた、ほんと女心わかってないわねえ」とでも言ってやろうか、と思ったがやめておいた。


「あ、政信う!」

文子はあり得ないほどの、満面の笑みを見せ、猫なで声で手を振った。

「んもう。最近、塾来てなかったじゃなあいのお!」

そう言って、「私だけを見て」と言わんばかりに、勢いよく舞瑠を押しのけた。



「それでー。なんだい話って」

政信が苦笑いを浮かべながら聞くと、

「あのね。まずこれ見てえ」

最初に声を漏らしたのは、部外者である美明だった。



「何それ、痛そう!」


文子の太ももにカッパリと、真紅の悪魔の口が開いていた。彼女は「政信に最初に言ってもらいたかったのに」というような表情を見せて、威嚇する。

「わー、痛そうだ。どうしたの?」

「よくぞ聞いてくれました!」


文子は怪しげに笑い、舞瑠を前に出した。


「舞瑠ちゃん、に押されたのよお。私が廊下を歩いていたら、いきなり押してきたの………」


「ち、違います!それは嘘です!私は何もしていません」


舞瑠が目に涙を浮かべて抗議した。政信は、オロオロとうろたえている。


「ど、どっちが正しいのー?」

その次の瞬間、だった。


「文子さん、あなたが正しい。舞瑠さんの言うことは間違っています」











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