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戦の華  作者:
5/8

すべての始まり

「じゃあ、教えてもらえますか?」

「いいですが、まずあなたは………ここのクラスの存在意義を200字以内で答えられますか?」

「無理です」

はい、即答。

「でしょうねえ。まぁー単刀直入に言えば、私たちは実験台ーモルモットな訳です。まず、地球温暖化に対抗して作られた物質ークラニウムの出現」

「知ってます。酸素にかわる物質とかなんとか」

「あと、一時の問題にすぎなかった、少子高齢化問題」

「そんなことも、ありましたね」

「食糧危機」

「あー」

「じゃあ、エネルギー問題」

「懐かしいなあ。でも、石油に代わる物質が出てきたとかなんとかで、おさまりましたよね」

彼女はそう言った後も、淡々と話を続けた。

「つまり、政府は子供たちに勉学やスポーツ面などで競争し、互いをを高め、磨いてほしいーと考えてるんじゃないでしょうかー?あ、少し後に体育祭があるのはもちろん知ってますよね」

「もちろん知っています」

「あれ、政府の人間が親たちに紛れて、偵察しに来るらしいですよ。ちゃんと、計画が順調に進んでいるか」


体育祭。井草小学校3大イベントの1つー

らしい。


「あと、ここで生き残るためには、同盟なんかも必要ですからね。それを破棄することも、時と場合によっては必要だけど!………はい、分かりましたか?」

麻倉さんはそう言い終わると、横目で腕時計を見た。シルバーのイミテーションの宝石付き。きっと、どこかのブランドのものだろう。


「………といっても、もう終っちゃいますね、休み時間」


「それじゃあ、どうすれば?」


私が半ばイライラしながら聞くと、


「なら、放課後にしましょう。そうですねえー4時20分に、たいやき屋の『やましろ』に集合ですよ。あ、たいやき屋の場所、分かります?」


「まぁ………」


私は、人差し指で机を叩きながら曖昧に答えた。

校門を出て、横断歩道を渡ると、田舎にあるような一軒家が見えてくる。


かなり、古い建物だ。


『やましろP』


駐車場らしき、空き地にそう書かれた看板が出ていた。



いそいそと中に入ると、木のテーブルとイスのセットがいくつか、目に飛び込んでくる。これもまた古いけど、上品な色合いで長時間眺めていたくなるほどだ。


「注文は」


テーブルを拭いていた、若い女性が口を開いた。


「はー、迷うことないでしょう。カスタードか、粒あん。さあ、どっち」

奥の方に目をうつすと、肩まで伸びた黒い髪の少女ー麻倉さん座っていた。


「遅くなったから、怒られそうだな………」


そうぼやきながら麻倉さんの表情を恐る恐る見た。


その表情は、私が想像していたものとはどれも違ってー限りなく和やかで、でもどこかぼうっとしていて。まるで、花嫁を見つめる母親のようだった。


_________________________________


あれは、4月。始業式の日。


あれは、4月。全ての始まりの日。

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