異論は認めん
間抜けな顔した男は、1拍置いてからものすごい勢いで詰め寄って来た
いつから練習してたんだ、どんな練習したんだ、経験者が周りにいたのか、等々
松山は、生暖かい目をして微笑んでた
「練習……しないんですか」
収集がつかなくなると面倒なので切り出してみた
すると、男は少し考えた後に
「ゲームをする、フルセットだ」
「ふ、フルメンバーですか?でも、そうなったら相手はどうなるんですか?」
高学年らしき女子選手が男に聞くと
「女子対男子でやる」
異論は認めん
「これより、男子対女子のゲームを始めます」
審判がコチラをチラチラ見る
「杏樹~頑張れ~」
ヒラヒラ手を振り松山が遠目から生暖かい目をして言っていた、禿げろ
同じチームの子からも苦々しい視線を感じるし、あの男は何を考えてんだ
お、試合が始まる
身長の高い前髪がアシメな男子がサーブを打った
この歳にしては威力もある、早さもある、でもコントロールがない
「っ、はいっ!」
レフトにいた子がアンダーで取るが、ボールは頼りなく上がる
「……」
パシュッ
難なくボールをセンターに上げる
「っ!」
センターにいたベリーショートの子のスパイクが決まった
「な、ナイストス」
「……どうも」
1-0
生意気そうな顔つきの子がサーブを打つ
「陽太!」
「おっす!」
先程、サーブを打った男子がスパイクを決める
決まるってわかってんのに何で誰も動いてないんだろうか
私はセッターのポジションに配置されてる
でも、スパイクが決まりそうなのは反対方向のレフトとライトの間
体のバネ全部を使って飛び出した
指一本でいい、地面に落ちてないならボールはまだ、生きてる
「っ!」
上半身を滑り込ませボールが落ちる前に下に指をすりこませる
ボールは綺麗な虹を描き上がる
「うそっ!」「今瞬間移動した!?」「どうやって取るのよあんなボール」
センターの子がボールを上げ、レフトの子がスパイクを打つ
レフトの子のスパイクが甘かったのか、受けた男子は難なくボールが上げる
しかし、先程のプレーに興奮してか中々プレーに集中していない
「うるさいんですけど」
静まり返るコート