見返しジャンプサーブ
初めて見たコートは、キラキラ輝いて見えた
宙に舞うボールは回転し床に落ちる
「貴方方が、昨日電話を下さったのかな?」
話しかけてきたのは、三十代後半らしき短い髪を刈り上げた目付きの悪い男だった
「え、えぇ、入団を希望しているんですが」
「入団ね……」
なんかジロジロ見てくるんだけど
「君……バレーはやったことある?」
話し掛けてきたんだけど
「少しなら」
「へぇ……、まぁいいや」
すると、男はホイッスルを鳴らした
「集合!!」
瞬く間に、集まった選手に男は言った
「今日から新しく加わるから面倒みろよ……」
男が私を見て顎を使った
なに?自己紹介でもしろと?
「岬ヶ岡小学校の平山杏樹、小学2年……です」
「以上だ、サーブ練を始める」
嫌いだ、この男
周りにいた選手達は一斉に四方に散り、各自サーブを打ち始めた
「どうすんのよ」
「どうしようかね」
私に続き松山が応えた
その後、ずっと見ているだけであった私
しかし、サーブ練が終わる間近に男が私に近づいた
「打ってみろ」
めんどくさそうにボールを放ってきた
私は松山を見た
パチン!とウィンクをしてくる松山
度肝抜いてやれ!そういう雰囲気が漂っていた
サーブラインのかなり後ろに立ちコートを見渡した
皆が私を興味津々に見ていた、打てるわけないのに、かわいそー、だとか言っていた
軽く跳ねさせ向こうのコートを見つめた
思い切り真上にボールを放る
思いっきり助走を付けて……
飛ぶっ!!
手のひらに吸い付くようにボールが来る、肩から全身にかけて心地いい振動が体を駆ける
低く鋭い音が響き、いつの間にかボールは向こうのコートに落ちていた
ティンッテイン、ボールが転がる
「ふんっ」
男の間抜けな顔に、満足気に微笑んだ