2度目で知る
振り返る
「……松山先生」
担任の松山が驚いた顔でこちらを見ている
松山は42歳の外見はかなり強面だが、ノリがかなりよく優しい、男の癖に女子力が高い
「杏樹、朝早くからバレーボールかい?」
「……えぇ、まぁ」
「少し見せてもらったけどスゴク上手だね、少年団にでも入ってるのかい?」
「いえ、入ってません」
「そんなそんな冗談を……」
「……」
松山の顔が真顔になった
「……ほ、本当に少年団に入ってないのかい?」
「……えぇ」
松山は、いや、そんな、なんて暫し呟きながら、意を決したようにこちらに向き直った
「杏樹、プロになる気はないか?」
「……は?」
少年団に入る気はないか?でもバレーを本格的にやらないか?でもない
プロ?私が?
ないないない、ありえない
「杏樹、君は一流の選手になる……だから」
「そういうの………………いらない」
「ん?」
「私は私が好きなようにやりたいだけ、好きなときに好きなだけ」
すると、松山はポカンとした顔をしたあと大きな口を開けて笑った
「あっははは、杏樹らしいな~!最近妙に大人しくなったと思ったがそういうところは変わらないな~」
「な、なに」
「杏樹」
松山がニコニコしてこちらを見る
「僕はね、春高バレー優勝高のキャプテンだったんだ」
「は?……はぁ!?」
初耳なんですが……
「君を見てるとね、あの時の事を思い出すよ
僕の好敵手に……彼は天才だったな~」
「だ、だからどうしたんですか?」
私には関係ない事でしょうに
「いや、ね?僕が学校の先生になる前は、強豪校のバレーコーチをやってたんだよ、でもね」
「?」
「誰も僕の期待には応えられなかった」
自嘲気味な松山の顔
「少しの間、聞いてくれるかな?」