手に馴染んで儚い
前の私は、赤やピンクが好きだったみたい
部屋のカーテンはピンクと白のチェックでいちご柄が入っているもの、ベッドはセミダブルの土台が引き出し式のタンスになっていてこちらも赤とピンクだ、ベッドシーツも赤のハート柄くどくどしい程に赤とピンクだけの部屋だ
私はネイビーが、好き
私はこの色を地味だとは思わない
黒とは違う深みがある色
私の月のお小遣いは1000円
小学2年生なら妥当だろう
しばらくの間はこの部屋で我慢しよう……
朝から花に水をあげ、ゴールデンレトリバーのマリアを散歩に連れていく
家に帰宅すると、学校に行く時間帯になっていた。
明日からはもっと早く起きないとな……
唯一紺色のジャージを着て学校に向かった
小学校は全校生徒が少なく、たったの18人だ
田舎だから仕方ない、だが、学校の設備はかなり良いものと言えるだろう
校舎はかなり清潔で、新品同様
先生はとても教養がある人ばかりで、滅多な事以外は生徒の自由にしてくれる
体育館は、ありとあらゆる機材がそろい一度も使われた事も無いものが数多くある
私は毎朝、他の生徒よりも早く学校に行く
体育館に行く
バレーボールを……しに行く
物心ついた時からバレーボールを触っていた
ボールを持つ手が嫌に馴染んで、その感覚が儚く、逃げないようにそっとボールを弾ませた
弾いて飛ばして打って
楽しいなぁ……
無我夢中でボールを追った
「杏樹……?」