第52話
「あ!お姉ちゃんだ♪」
「え?」
リムジンを降りるともの凄いスピードで正面から私に抱きついてくる女の子がいた
「えへへ♪」
「えっ…と」
誰?
可愛らしい笑顔をこちらに向けてくるこの子……
見たことあるような……
ないような………
「お姉ちゃんこんにちは!」
前方から今度は男の子が…………誰だっけ?
誰か教えてえぇぇ!!
「薫ちゃん久しぶりね」
「和子さん?!ってことは!!」
「あら?もしかして分からなかったの?」
ふふふと笑う和子さんは男の子の腕をとってこちらに見せてきた
手首には小学生にはちょっと大きめの赤のリストバンドがしてある
「螢君と奈緒ちゃん?」
「「うん!」」
元気いっぱいの2人
たった1年半でこんなに大きくなるとは……
驚きです
「お姉ちゃん行こう!」
奈緒ちゃんはグイグイと私の手を引っ張る
「え?あ…ちょっと!どこに?」
小学生相手に動揺する私って……
ダメだね……
「いいからいいから」
「私たちも行くからって………時間!!」
私以外みんなハッ!とした表情になる
私は腕時計に目をやる
午後3時すぎ
「健太&元希!」
「「承知!」」
「「へ?」」
健太と元希はそれぞれ奈緒ちゃんと螢君を肩に抱え走り出した
螢君は若干嫌がっている
「ほら薫も走る!」
桜に背中をたたかれ私も走り出した
建物中に入ると歓声やら太鼓の音やら沢山の音が聞こえてきた
階段を走って登りドアを勢いよく小学生を抱えた2人が開く
下ではバスケの試合が行われていた
「見せたいものってコレのこと?」
私の問いに瞳達は笑顔で頷く
「インターハイ2回戦だよん♪」
瞳の声の後に
《ガツン!》
という激しい音がした
さっきまで聞こえていた音どもは消え一瞬で静寂状態になった
そんな中……
黒のユニフォーム…背番号18番を身に纏った1人の男がリングに片手でぶら下がっていた
敵も味方も観客も唖然としていた
《ブー》
試合終了のブザーだろうか?
とにかく音がした
男はリングから手を離しこちらに背を向けたまま着地する
私はその男の後ろ姿に見覚えがあった
右膝にはサポーターがしている
《ワー!!ワー!!》
《ドンドンドン!》
再びいろんなもの入り混じった音がが出始める
と同時に
「お姉ちゃん?!」
後ろから奈緒ちゃんの私を呼ぶ声がした
私は走って階段を降りコートを目指した
「あ……」
私は瞳の言う『見せたいもの』の意味が今になって理解できた
コート内で走り回りパスを受けシュートを決めている背番号18の男
《ブー!》
機械のブザーの音がして次に審判がの笛の音がした
選手全員が整列をして例をする
今度こそ試合が終わったのだ
ドアの横で私は待つことにした
なんて声をかければいい?などと考えながら
1人……
また1人とドアから人が出てきた
そして……
「あ…」
1人の男が目の前で立ち止まった
右膝にはサポーター……
背番号18………
急に視界がボヤケた
「泣くなよ」
彼は困ったような笑顔で私の頭を優しく撫でる
「だっ…て……」
「薫……」
「な…に?」
頑張って泣くのを止め返事をする
「ただいま」
その一言で私は完璧に泣き止み笑顔になる
そう……
ずっとコレを言える日を待ち望んでいた
「お帰り拓也!」