表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RAN&JUMP  作者: 月明かり
49/53

第49話

《ザッザッ》


土を掘る音だけが公園に響いていた

目の前ではケンがひたすら穴を掘っていた


「でもビックリしたよ。いきなり帰ってきたかと思えば穴を掘ってほしいなんて」


作業をしながら顔をこちらに向けてきた


「仕方ないだろ?俺はこんな状態なんだし」


そう……

俺は車椅子に乗っていた

単純に立って歩くことができないからだ


「まぁ…その状態が嘘のように完璧に治る方法があるけどね」

そう言ったケンはどこか遠くを見るような悲しい眼をしていた


「それってど」 「ジュース買ってきたよ」


ケンへの問いかけは薫の元気な声によってかき消された

もう聞く気も失せたので聞かなかった


《ガツ!》


シャベルが何か堅いものに当たった

ケンは器用に当たったものの周りだけを堀り、取り出した



「これって……」


そういえばケンにこのカンカンのこと言ってなかったな


「はい」


「え?」


「タクが開けなよ。これの発案者なんだから」


ニコニコと微笑みながらカンカンを手渡してくる

そっと手に取り、開け…

開け……


…………


開かない


「ふんがぁ!!」


指に思いっきり力を入れ蓋を引っ張る


《ガパン!》


開いた!


「御対面だね」


薫は無理して笑顔を作っていた

そのことはケンも気づいたみたいだがあえて言わなかったようだった


3人とも昔自分が大切にしていた物と将来の夢を書いた紙を手に取り読み始める


「僕は医者になるって書いてあったよ」


アハハと笑うケンからも無理していると感じられた

薫はこのあと答えを出さないといけないから無理して笑うのはわかる

だがケンが無理することが理解できず腑に落ちなかった

それにさっきの言葉も気になった


「本当は知ってるんだ…全て。茂さんと親父から話を聞いてるんだ。婚約のことも…これから病院に行って起こることも………」


「これから起こること?」


薫が呟く


なんだよ……

これから起きることって


「病院へ行こう。そうすればわかることだから」


ケンに押されながら公園をあとにした

気がつけば病院についていた


「タク…薫……」


「何?」


「僕はタクと薫がこれから出す答えには何も言わない。ただ後悔はしないでね」


再び押し始め、みんなが待つであろう診断室に入った

入ると案の定、俺の両親と薫の両親とケンの親父が居た


「さて答えを」


「はい」


俺は薫に視線移しまた茂さんに向ける

目を瞑り薫が話した昔話の続きを思い出す


―――――――――――



「先に入れておこうよ」


薫はなぜか挙動不審だった


「そうだな…入れとくか」


互いに大事なもの(僕は空気の抜けたバスケットボールで薫は去年に撮影した3人で写った写真)を入れ、最後に手紙を入れた

将来の夢を書いた紙をそれぞれ入れようとした時だった

《ブァ!》

勢いのある風が吹いた

と同時に


「あ!」


薫が手に持っていた紙が飛ばされた

なぜか薫は固まっていた

仕方なく地面に落ちた紙を僕が拾いに行く羽目になった

拾ったさいに偶々……

偶然に…………

薫の書いた将来の夢が見えてしまった


「…………。」


「タクち……見ちゃだめええぇぇぇ!!」


叫びながら僕の手から紙を奪い返すがもう遅い

しっかりと見てしまったから


「……見た?」

涙目になりながら言う薫に焦ってしまい素直に首を縦に振る


「どう…思った?」


「どうって言われても…」


紙にはこう書いてあった


『タクちゃんのお嫁さんになること』


「僕等まだ結婚できないよ?」


「知ってるよ」


とうとう薫は座り込んで顔を俯けた


「18歳にならないと結婚できないんだよ?」


「そうなの?」


本当に驚いたのだろう

薫はすごい勢いで顔を上げてきた


「そうだよ」………。」



沈黙


「「………………。」」


『『ケン(ちゃん)早く帰ってきて(くれ)』』

心の中で神に…じゃなくてケンに祈る


だいたい僕はどうすればいい?

別に薫は嫌いじゃない

だからと言って結婚したいわけでもない


「僕まだ薫と結婚したいかわからない」


だからここは正直に素直な気持ちを言ってみよう

だってここで言わないともう言うチャンスがないかもしれないから……


「だから薫がまたこっちに帰ってきた時に僕が18歳で薫のことが好きだったら……」


少し言うか戸惑ったがそんな事言ってられない

時間がないから……


「僕たち結婚しよう!」


言われたことがわからないのか薫はポカンとしていた


「か薫?」


「へ?」なんとも間抜けな返事だ


「結婚……」

「うん♪したい」


小指を立てる


「指きり」


「なんで?」


「約束だから」


小学生のくせに溜息をつく

でも結局は小指を立て薫の小指と絡める


「「指切りげんまん―――――」」


指切ったと言うと同時に指を離す


「終わった?なら僕も紙とオカリナ入れるね」


いつから戻っていたのですか健太さん?!

しかもオカリナ入れるのかよ?!


「ほら埋めちゃおうよ」この後のことはあまり覚えていない

ブランコで遊んだ気もする………だがハッキリと思い出せない

唯一ハッキリと覚えているのは薫を見送る時に3人で泣いたことだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ