第44話
「母さんは知ってただろうが……みんな知ってたのか?」
やや間があって全員が首を縦に動かす
「そうか…薫は?」
「わ、私は……さっき」
そう言ってすぐに俯いた
手は自分の服を力強く握り締めている
たぶん泣くのを堪えているのだろう
「親父…最後の質問だ。この手紙の内容を知っているか?」
「知っているよ」
親父の目は真っ直ぐ俺の目を見ている
「いずれ薫と相談しないといけないこと?」
「そうだ」
ケンの方に視線を向ける
眼にはいつものような優しい、落ち着ける色をしていた
「リハビリの必要は?」
「ある。と言うよりしないと歩けなくなるよ」
「その期間は?」
「半年から1年」
次に瞳に視線を向ける
「あと3日間別荘使えるか?」
「ええ使えるわ。でも3日後から学校よ?」
「わかってる」
もちろん嘘です
知ったかです
ホントは知りませんでした
てゆうか学校始まるの早くねえ?
「俺と薫だけこっちに残るよ。次の日に地元に帰るよ」
「わかったわ。くれぐれも変なことしないでよね?」
「するか!」
何を言うか!!
「瞳!からかっちゃダメだよ」
「桜と同意見だ」
カップルらしくなった桜と元希は俺の援護をしてくれた
普段と変わらない態度の4人
はっきり言って嬉しかった
変に気を使わせたり、使ったりされては嫌だったから
「タクは地元に戻ったらうちの親父が待ってるから頑張りなよ」
ケン…
「薫と早くデートできるように頑張りな」
瞳…
「拓也には薫が居るから大丈夫だよ」
桜も…
「頑張れ」
元希も……
みんな心から応援してくれているのが分かった
なぜかって?
簡単さ……
こいつ等は俺にとって大切な人達だから
「ありがとう。俺頑張ってみるよ」
「私達も応援しているわよ」
親父と母さんも…
「ありがとう。全員に悪いんだけどちょっと部屋から出てってくれないか?薫と話があるから」
薫はまださっきと同じ態勢だった
「わかった。みんな1度部屋から出よう」
「いえ僕達はホントに今日はもう帰ります」
じゃあまた明日
と言ってみんな出て行った
ついでに言うと親父達も今日は帰るらしい
「薫…こっちにおいで」
手招きをしながら呼ぶとベッドに腰を下ろした
俺に背を向けて
「…泣くな」
後ろから抱きしめる
薫は俺の手を掴む
「だって…も…う」
わかっている
次に何というか分かっている
「いいんだ。もう…」
「じゃあ…な…んで…泣いて…るの?」
「え?」
薫に言われて気づいた
俺の目からは涙が流れていた
大丈夫だと自分の心に何度も言い続けてきた
そして割り切れたつもりだった
でもダメだった
体は正直だ
薫をさっきより力強く抱きしめる
2人とも声を押し殺して泣いた
泣きやんでから数分たった
そろそろ本題にはいることにした
「薫は手紙の内容は?」
「知らない…」
「わかった。一緒に読もう」
真剣な眼差しを俺に向けながら頷く
封筒から紙を取り出し読み始める
…………………
「「はあああぁぁ!?」」
手紙の内容は俺達を驚かすものだった




