第43話
「え?」
これはドッキリですか?
いや違う……
親父の顔が真剣そのものだ
それに薫の手が震えている
薫の手を握る
震えは止まったが顔を上げない
「何の冗談ですか?」
冗談ではないことは分かっている
だけど認めたくない
薫が遠くに行ってしまうなどイヤだから……
「冗談ではない。いたって真剣な話だ」
再び震えだした薫を引っ張り、抱きしめる
「今までのように俺の家に居ることはできないんですか?」
「……3日後には薫を連れて帰るつもりだ。もしどうしても嫌だと言うのなら後でこれを読みなさい」
茂さんから封筒を受け取る
いったいこの中の手紙には何が…
「私達はもう帰るわ。あとはお父様と話をなさってください。タク君も聞きたいことがあるでしょう?」
ふふふと微笑みながら薫を連れ帰っていった
薫は出て行く間際に『また明日』と言ってくれた
暫くドアを見ていたが親父に視線をうつす
「親父には聞きたいことがある」
二人とも目は真剣だ
たぶん何を聞いても答えてくれるはず
「何が聞きたい?」
微笑んではいるが硬い表情だ
「3つある。まずいつ退院できる?」
「明日だ」
即答だった
てか意外と退院するの早いな…
「次は……」
目を深く瞑り、軽く深呼吸し目を開く
「右足はどうなっている?」
親父は固まった
室内の空気も凍りついた
先に口を開いたのはどちらでもなく
「膝の筋肉組織が地面にたたきつけられた衝撃で破壊された」
ケンだった
ケンの登場に2人とも意外にも驚かなかった
なんとなくいるような気がしたから
「詳しく説明すると難しいから簡潔に話すよ?」
「ああ」
たぶん俺の考えているとおりなら…
「タクは……もう走れないし、飛べない。ようはバスケどころかスポーツはできない」
ケンの言い終わると同時に俯いた
「やっぱりな」
俺の言葉に2人は驚愕の表情になった
「目を覚ました時からわかってたよ。動かそうにも右足だけが動かねえんだからさ。はあ………だいたいそこで立ち聞きしてて気づかれないとでも思っているのか?薫」
「「………」」
さらに驚愕の表情になった
「バレてた?」
開かれっぱなしのドアから薫が出てきた
顔はさっきよりも少し青白かった
たぶん今の話は初めて聞いたのだろう
「当たり前だ。なんせ俺はお前の彼氏だからな。な〜んてね」
場の空気を和らげるため少しオドケてみる
「ほら他の4人も出てこい」
「まいったな…」
流石にケンは苦笑した
バレない自信があったのだろう
「はあい」
やはり居た
瞳
元希
桜
母さん
の4人が…




