第42話
次の日の朝はこの病室だけ大騒ぎだった
瞳と桜は俺の動く姿を確認すると泣き出し、ケンと元希は無事を喜び騒いでいた
みんなが俺のことをここまでも大切に思ってくれていることに嬉しく思い少し涙が流れた
「拓也!」
入口から高速スピードで移動し俺に抱きついた母さんに一言申したい
その行動は一般的に抱きしめるじゃなくてタックルと呼ばれているのだと
「ゲホゴホ…親父は?」
薫の話によると親父もいるはずだか……
「あ〜……ちょっとね」
母さんが言葉を濁したということは………
親父の身に何かあったのだろう
例えば……
俺が目を覚ましたことに喜び勢いで親父をボコボコに……あり得ないこともない
「薫ちゃんのご両親と話してるのよ」
うわ〜……
俺の推理とは全然違うパターンできたか
なんか敗北感が……
「あ〜じゃ僕たち4人は帰りますね」
「え?ちょっと健太??」
瞳はケンにズルズルと引き面れていった
「また明日来るから」
「安静にな」
2人は苦笑しながらケン達を追って帰っていった
「じゃ〜母さんも帰るわね。後で父さんと薫ちゃんと薫ちゃんのご両親が来るから」
なぜか悪戯な笑みを浮かべながら母さんが病室から去っていった
その間ぞっとして鳥肌が立った
しばらく病室の窓から外を眺めていた
雪が降り寒そうだった
《コンコン》
ノックの音が聞こえた
「開いてる」
たぶん親父達だろう
だがまたしても俺の推理ははずれた
病室に入ってきたのは男の子だった
すぐに母親と女の子が入ってきた
…………だれ?
「すいませんでした!」
母親は頭が地面にめり込みそうな勢いで頭を下げてきた
てか何か謝れるようなことは………ある
男の子をよく見ると俺が助けた子だった
「頭を上げてください」
なるべく優しく、穏やかな声を出す
「……はい」
少し間はあったが顔を上げてくれた
と同時に男の子が俺の近くまで歩み寄ってきた
「ありがとうございました」
ニッと笑い御辞儀をする
すると女の子が男の子の隣まできて
「ありがとうございました」
と同じく礼を述べ御辞儀する
「どういたしまして」
笑顔でこたえる
「君たち名前は?」
「火野螢です。小学2年生です。趣味はバスケです」
丁寧に学年と趣味まで公表してくれました
趣味がバスケとは…
良い趣味してますね(笑)
「下田奈緒といいます。学年は螢と一緒です。趣味は読書です」
アンタ本当に小学生?
なんか大人だね……
「火野和子主婦です。年齢は言いたくありません。趣味は息子と同じバスケよ」
誰もアンタには聞いてねぇよ
しかも趣味一緒かよ!
だいたい年秘密って……
《コンコン》
再びノックの音がした
今度は間違いなく親父達だろう
「どうぞ」
《ガラガラ》
久しぶりに親父登場
続いて薫とその両親が入ってきた
薫は俺と目が合うなりニコッと笑ってきたので笑いがえした
ん?
よく見ると親父の頬が一部色が変だ
「拓也……」
親父の目には多少涙が……
だが親父よ……
感動の御対面に悪いが言わせてくれ
「右頬が変色しているのはなぜだ?」
涙が消え去り体が震えだした
「母……聞くな」
どうやら俺の推理は当たっていたようだ
明らかに今『母さん』と言おうとしたからな
「私達は今日は帰ります。また明日お伺いします」
「お兄ちゃんバイバイ!」
元気よく声を出し奈緒ちゃんにひっばられ出て行った
「タク君大丈夫か?」
相変わらず人のことを心配しているように見えない
「大丈夫ですよ茂さん」
「はいこれ。アメリカのお土産」
「早紀さんありがとうございます」
お土産を受け取り、ひとまず机の上に置く
「母さんが言ってたけど話って何?」
俺の発言に薫は俯く
「実は私達が日本に帰ってきたのはあなたに話があるからなのよ」
話ね……
たぶん俺と薫が付き合っていることについてだろう
「君と薫が付き合っていることについては君の御両親から聞いている。ただ……」
「ただ?」
何が言いたいんだ?
ハッ!
まさか別れろと?!
「ただ…私達の予定に変更があってアメリカに10年ちかく居なくちゃならなくなったんだ。それで薫を引き取りに来たんだよ」




