第41話
拓也はその日目を覚ますことはなかった
翌日の昼前に叔父さん達が帰国した
ついでに私の両親もやってきた
「拓也……」
何度名前を呼んだだろう?
「薫。これ買ってきたから食べなよ」
ケンちゃんはコンビニの袋をベッドの横の机に置く
でも食欲はない
「じゃ僕は戻るよ…」
そう言ったケンちゃんの目を見て直ぐに私は眠れなかったんだということが分かった
ケンちゃんが出て行った5分後に叔父さん達が入ってきた
「拓也……」
おばさんからはいつもの明るさが消えていた
「早く目を覚ましてほしいな……」
叔父さんからも暗い感じがする
私は1日中手を握り名前を呼んでいた
まるで機械のように……
――――――――――――――
「ここは?」
気がつくと周りには何もなく、真っ暗な闇だった
「あれ?おかしいな…」
記憶をリピートしてみよう
確か……
男の子が飛び出して……
俺が庇って
………………車にひかれた?
ってことは………
俺は死んだ?
いやいやいや………
などと1人考えていると何やら宙に浮かぶ丸い光が目に留まった
何だこれ?
電球……じゃないな
ゆっくりと手を伸ばす
光に触れた途端に記憶が舞い戻る
『私も好き』
想いを告げてくる薫
『タクちゃん約束……』
涙目で俺と約束を交わしている薫
『ありがとう』
嬉しげに微笑む薫
『拓也って呼びたいの!』
俺の名前で呼ぶ薫
薫…………
会いたい……
薫に無性に会いたくなった
会いたくてたまらない………
そう思ったときだった…
左手に温もりを感じる……
何もないのに……
でもこの温もりは……
「薫……」
―――――――――――
なんだろ………
頭に何かが当たっている
いや違う
撫でられている……
まさか……
ううんきっとそう
この優しい撫でかたはをするのはこの世に1人だけ……
目をゆっくりと開くと視界に月を眺める愛しい人がいた
「た‥く‥‥や?」
声に気づき視線を私に向けてきた
綺麗な澄んだ瞳が私をとらえた
「ごめんな‥薫」
微笑むその顔が……
優しい声が………
握り返す温もりのあるこの手が……
すべて愛しかった
「私…ね…寂し…か…ったん…だよ」
「ごめん」
優しく私を抱きしめる
でも私の目からは次々と涙があふれ流れる
「怖…か…ったんだ…よ?もし…拓也が」
「俺は死なない。前に約束したから」
ギュッと強く抱きしめてくる
「うわああぁぁん!」
私の泣き声は廊下まで響いた
「泣くなよ…」
私は拓也の腕の中で泣き続けた
悲しいのか嬉しいのか分からないが泣き続けた




