第17話
「以上椎名拓也の昔話でした」
「そんなことがあったんだ…………その〜……話してくれてありがとう」
「どういたしまして」
しばし沈黙
ん? 瞳が俺と薫を交互に見ながらニヤツいてる
「拓也は薫との約束守ったの?」
なんてこと聞いて来やがるんだこの悪魔!!
仕方ないな……
ここは奥義………!
「さぁ〜て帰るか?」
話を逸らす
地味な奥義ですいませんね
「約束は守ってもらったよ♪」
あ〜あ〜言っちゃったよ
言っちゃいました横の娘が
「拓也の秘密ゲット!」
悪魔を通り越して閻魔大王だな
メモってんじゃねぇ!
「……帰ろうか?」
「ケン……そうだな」
俺は靴を履き替えている
振り返るとちょうど薫が靴を取り出した………と同時に何かが地面に落ちた
「なにこれ?手紙?」
え?マジで!?
俺は固まった
「薫?どうしたの?………なにそれ?」
瞳が薫の手から手紙を奪い取る
そして声に出して読み始める
「えぇ〜なになに?………『堂本薫様 今日の夕方5時に体育館裏でお待ちしています』って……これラブレターだね」
「「えぇ〜!?」」
ハモる俺と薫
「今時ラブレターなんてスゴいな」
ケン…感心してる場合か!?
「今は4時52分……薫どうするの?行く?」
なに楽しんでんだよ瞳
ってなに焦ってんだよ俺?
行かないよな?薫?
「行かないよ?」
よし!いいぞ薫
「でも手紙の人が可哀想だよ?会ってきてやりなよ?」
ケン……貴様後で処刑だ
「わかった……じゃ〜行ってくるね」
薫は走り出した
止めなきゃ!
「薫!!」
「なぁに?」
「いや……なんでもない」
「?」
情けないな俺……
薫は視界から消えてから5秒経過
「ちょっとトイレに行ってくる!!」
「トイレという名の体育館裏ですか?」
「………はい」
またバレた………
瞳!笑うな!
「はやく行きましょ?」
まだ笑ってやがる
「ほら!はやく走らないと間に合わないわよ?!」
「わかってるよ!ってもう居ねぇ〜………」
足速すぎだろ?
「タク…なに焦ってんの?」
「え?」
「いい加減さぁ〜………素直になりなよ?なんでタクはさっき薫を止めようとしたのか。そして今なんで焦っているのか。自分に素直になれば気づくはずだよ?」
「…………?」
「はぁ〜………とにかく体育館裏に行こう」
俺は走しりながらさっきケンの言ったことの意味を考えた
俺はなぜ薫止めようとしたのか……簡単だ
手紙の主にあってほしくないからだ
焦っている理由も簡単だ
薫に恋人ができたらイヤだから
なぜイヤなのかも簡単だ
素直になれとはそういうことか………
ケン……わかったぜ
俺は薫が好きだ
今なら心からそう言える
「薫が好きだ」
口に出してしまった……
横をチラリと見る
ケンがニコニコと笑っている
「やっと素直になれたみたいだね」
「まぁ〜なんだ……その…………サンキュー」
「はいはい」
ケンの処刑は取り消しだな




