オールドゴールド
懐かしい、
*
「なあ君、俺で妥協せぬか?」
「……、はあ?」
華の金曜日、午後六時。ちょっとどころじゃなく変わったイケメンに、駅前で声をかけられた。
「だーから、俺で妥協せぬか?」
「いや聞き返してるわけじゃないから」
「そうか、聞こえていたか! ならば話は早い、いわゆるナンパという奴なのだが、いかんせん慣れておら」
「無理っす」
「あっはっは、せめて最後まで言わせてほしかったな!」
何、この人。
そう思って顔をじっと見つめてみると、どこかで会ったような気が、しないでもない。けどこんな人は知らない。……はず。
「ううむ、どうしたものかな。一向に女子が捕まらん。そもそもナンパとはどのようにするのが無難なのだ?」
「……あの、」
「いや、諦めぬよ! 俺は!」
「あの?」
「む、どうした」
首を傾げられても、可愛くないんだけど。
「いや、あんた、うちのハルちゃんに似てるなー、と」
「ハルちゃん?」
「うん、実家の犬。」
「……俺は一応人間なのだが」
「お手」
「わんっ」
「……やっぱり犬、」
「違う! 断じて違うぞ!」
素直すぎる性格なのだろう、素早く反応してくれた。先までの堂々っぷりはどこへやら、もう既に犬にしか見えない。
よーしよし、と、少し背伸びをして頭をなでてみると、不満げな表情で頬を染めていた。
(捕まって、やらなくもない)
ついったの「ヘイ彼女! 俺で妥協しない?」ネタに感化されて。
これをやったのがこんな人だったら、おもしろいな、って