その二 限界を目指して
―(玉環結衣)―
「よーい!」
その合図の後、一拍の間を置いて陸上部の顧問の先生が高く掲げたピストルを鳴らした。
パーンと空気を震わせると同時に、わたしは地面を蹴り上げ、加速していく。
「はっ……はっ……」
規則正しく呼吸を繰り返すたびに、肺の奥が冷たく喉が痛くなる。
そのことがもうすぐ春になるとはいえまだ残っている冬の寒さを実感させる。
ちなみにわたしは夏よりも冬の方が好きだ。
夏は汗が気になってしまうし、暑さですぐにバテてしまう。
でも、冬なら運動していても暖かくなるので問題はない。
ただ、その分筋肉が冷えて固まりやすいので怪我には細心の注意を払う必要があるのだが。
「……25.78秒です」
わたしがきっちり二百メートルを走り切ったのを見て、計測係の一年生がタイムを告げた。
それを聞いて、わたしは内心でガッツポーズをする。
自分で言うのもなんだけど、タイムはなかなかの記録だと思う。
ここ数ヵ月でタイムが徐々に良くなっているので、もしかしたらインターハイに出場できるかもしれない、などと思い始めている。
「玉環、また記録が上がったな」
それは駆けつけてきた顧問の先生も同じ考えのようだった。
「先輩、本当に速くなりましたね」
計測係の子も同じようにわたしのことを褒めてくれる。
その手放しの称賛がわたしにはすごく心地良過ぎて、逆に照れてくる。
「あ、あははは、インターハイまでに壁を越えられればいいんだけどね」
先ほどのタイムならばインターハイに出場できる可能性は十分にある。
だが、ベストコンディションでない状態であっても大会当日にこのタイムを出せなければ意味がない。
私のその考えが顔に出ていたのか、先生や後輩はわたしに言う。
「今のお前以上に速い奴は、この地区にはいないと思うが」
「そうですよ! 先輩以上に二百が速い人はいないですよ」
「ありがとうございます。この調子で頑張ってみますよ」
二人にお礼を言うと、私は軽く流すだけの練習に戻る。
常に全力疾走では体が保つはずもないので、今日は三本だけ計測して後は軽く運動するだけとあらかじめ決めていたのだ。
さっきのがその三本目の計測だったので、今日はこれで計測は終了だ。
部活も終わり、わたしは制服に着替えて校舎から出る。
空はまだ五時過ぎだというのに日は沈みかけているため、星がいくつか輝いていた。
もうじき進級を控えた二月の半ばなので、まだまだ日が早く沈む日が続くだろう。
友達はみんな用事があるとのことなので、今日は一人で帰る予定だ。
家は徒歩で帰れるぐらい近い。
わたしは一応玉環財閥のお嬢様という立場ではあるが、私の家は分家みたいなものなのでこうして普通の生活を送らせてもらっている。
だから、お迎えがあったり、家やお弁当が豪華だったりなんていうことは一切ない。
多分、他のみんなと同じ一般的な家庭と言えるだろう。
一つ異なる点は、年に数回玉環財閥主催の社交パーティーがあり、親族のほとんどはそれへの参加を義務づけられている。
正直、面倒だといつも思っているのだけど、わたしは同年代の親戚にも会える場所だと思って割り切って参加している。
今年のパーティーはいつ開催するのだったかと考えながら歩いていると、校門で久しく見ていなかった人物に会った。
「あっ」
「玉環さん、久しぶり」
「……先輩」
今年度の夏、県大会出場を賭けてわたしと二百メートルで勝負した野方つぐみ先輩だ。
先輩はわたしのことを待っていたようで、そのままわたしは彼女と帰ることになった。
歩きながら、わたしと先輩は話をしていた。
「今日の部活見ていたけど、玉環さん、夏のときよりずっと早くなっていたね」
「そ、そんなことないですよ」
「謙遜しなくても分かるよ。間違いなく私と県大会賭けたときに比べてタイムが縮まってた」
「あ、ありがとうございます」
先輩は本当に変わったと思う。
去年の夏、わたしがまだ一年生のときに先輩と勝負をして勝った後、彼女は部活に来なくなった。
それがわたしのせいでそうしてしまったのだと思うと内心心苦しかった。
挫折は人の努力を簡単に終わらせてしまう。
それは本人にしか分からない苦しみだ。
わたしにはそれがなんとなく分かっていたから、周りの人が先輩のことを悪く言っているのを聞くたびに辛い思いをした。
あのとき、わたしが勝たなければよかったのではないのか。
そんな馬鹿なことまで考えてしまったほどだ。
だけど、冬休みが終わって三学期が始まると先輩は部活に復帰した。
来なくなる直前の苦しそうな表情と一転して、そのときの先輩は目が輝いていた。
そして、彼女のタイムは復帰前に比べ縮まっていた。
これにはウカウカしていられないと思ったわたしは先輩に負けないよう努力をした。
今年の夏の県大会も結局は先輩に勝ったわたしが出場したわけなのだけど……。
「先輩、今日はどうしてわたしを待っていたんですか?」
「うん、そのことだけどね。卒業前にちょっと言っておきたいことがあってね」
「えっ?」
そこで先輩は足を止めた。
わたしも彼女にならって、歩みを止める。
ちょっとと先輩は言ったけれど、きっとこれから話すことは大事なことに違いない。
「私とあなたは同じ短距離走のライバルとして部活内じゃあ張り合っていたけれど」
そこで先輩は言葉を切る。
先輩はわたしのことをじっと見ていた。
「正直、玉環さんのこと嫌いになった時期もあったけど、今では感謝しているの」
そして、彼女は頭を下げる。
ためらう様子など一切なかった。
「本当にありがとう」
そして、お礼を言われた。
先輩が苦しんでいるときに何もできなかったわたしなのに。
「そ、そんなこと、こちらこそ、先輩からは色々と教わりました」
「高校に入ってから陸上を始めて、すぐにエースになったあなたに教えたことなんてないと思うけど」
頭を上げた先輩は笑っていた。
その表情を見て、わたしは先輩が色々と抱えていた何かを解決できたのだと理解した。
そして、再び歩き出すわたしたちだったが、すぐにわたしと先輩が分かれる十字路に到着してしまった。
このまま「さようなら」と言って別れるのが残念でならなかった。
そんなわたしの気持ちを察したのか分からないけれど、先輩はわたしに向かって言った。
「私ね、大学でも短距離走を続けるつもりだから、玉環さんも頑張って」
その“頑張って”が何に対して何か、わたしは分かる。
二年連続県大会に出場したわたしだったが、一度もインターハイに出場できていない。
だから、インターハイに出場ひいては優勝を目指せと、彼女はわたしにその夢を託したのだ。
そう思うと、わたしの胸の奥から何かがこみあげてきた。
「先輩、わたし、今年のインターハイに出場できるように頑張ります!」
少し涙声になっていたと思う。
それでも、わたしは今までの感謝やこれからの祝福を込めて、先輩に言葉を送る。
「だから、先輩も頑張ってください」
「ありがとう、玉環さん」
別れ際に見せた先輩の表情はやはり笑顔だった。
そんなこともあって、わたしはそれからより練習に熱を入れるようになった。
タイムはその努力に応えるように縮まっていくのだが、残念ながらインターハイ出場選手がベストコンデションでなくてもこれぐらい走れるだろうというタイムだった。
だから、わたしはより速く走れるように色々と工夫をしてみるのだが、思いつく限りのことはどれもあまり効果が見られなかった。
正直、焦っていたのだろう。
先輩から託された夢を一刻も早く形にしたいからと。
わたしですらそう感じたのだから、周りから見ればもっと明確だったのだろう。
三月も間近のある日、いつものように授業が終わり帰り支度をしているわたしに何人か友達が近づいてきた。
「結衣、これから暇だったらお茶しない?」
その内の一人がわたしを喫茶店に誘ってくれた。
幸いなことに、今日は部活はない。
オーバーワークになりかけていたわたしは、これを渡りに船だと思い、二つ返事で承諾した。
バスに揺られて東西京駅前に来たわたしたちは、早速目的の喫茶店――アリアンスというお店のドアを潜る。
わたしにとっては初めて来る場所だ。
「いらっしゃいませ」
店員に促されたテーブルへと座ると、早速メニューを見てみる。
まず驚いたのはコーヒーの種類がやたら多いことだ。
豆の種類ごとにあるのは分かるのだが、それが十近くもあるのだからこのお店のこだわりが垣間見えて面白い。
きっと、このお店の店長がコーヒー好きなのだろう。
しかし、残念ながらわたしはコーヒーが苦手なので、紅茶を注文することにする。
コーヒーほどではないが紅茶もそれなりに種類があった。
それなりに悩んだ後、わたしはダージリンを頼んだ。
友達の一人はキリマンジャロコーヒーをブラックで頼んでいた。
「なんでキリマンジャロにしたの?」
豆の違いがさっぱり分からないわたしはそんな素朴な質問をした。
「え、だって、名前がカッコいいじゃない」
だけど、返ってきた答えはわたしの予想とは異なるものだった。
わたしはそれ以上、何も言うことができなかった。
それからしばらく、わたしたちは友達と学校のことについてあれこれ話をした。
試験のこと、部活のこと、誰が誰と付き合い始めたこと……。
その話の中に、有賀くんと黒永さんのことも出てきた。
わたしが有賀くんに告白したことはおろか、有賀くんを好き“だった”ことは誰にも言っていない。
理由としては恥ずかしかったからという、ただそれだけだった。
当然、友達は誰一人そのことを知らないので、二人の話をわたしに構わず続けていた。
二人は十二月ごろから付き合い始め、今では放課後実験室で実験をしているらしい。
わたしは友達の話を聞いて、二人の実験の様子を想像する。
夕暮れの実験室。
机の上でガスバーナーがビーカーを温めている。
沸々と湯気を立てるビーカー。
その奥で試験管を揺らす黒永さん。
隣には何かをメモする有賀くん。
不意に二人の肩が触れ合い、顔を見合わせる。
そして、二人の顔が徐々に近づいていき、唇が重なる――。
「結衣、どうしたの? 顔真っ赤だけど」
「へっ!?」
友達の一言でわたしは妄想の中から現実へと帰ってきた。
「結衣もそろそろ彼氏ぐらい作ればいいのに」
「有賀くんの話を聞いて、自分も彼氏ほしいなーなんて思ってたんでしょ?」
友達のからかいにわたしは頬が熱くなっていくのが分かった。
「そ、それは……欲しいと言えば欲しい、よ。だけど……」
「だけど?」
「わたしは今は部活に賭けたいから」
その一言で場が一瞬固まったのが分かった。
だけど、今のわたしは恋愛よりも部活動一筋なのだ。
友達はそのことが分かっているので、それ以上は追及するのを諦めたようだ。
「まったく、この部活バカは」
「部活バカって言い方は酷くない?」
「分かっているけど、インターハイまでまだ時間もあるんだから、無理はしちゃダメだよ」
「分かってるよ」
そのとき、カランコロンと鐘が鳴る音がした。
他の客が入ってきたのだろう。
店員がその二人組をテーブルに案内していた……って。
「有賀くん!?」
「あれ、こんなところで偶然だね」
その二人組はよりにもよって、有賀くんと黒永さんだった。
噂をすれば影が差すとは正にこのことだ。
こちらに気づいた彼はわたしたちが座るテーブルに近づく。
「有賀くんこそ、こんなところでデート?」
「ま、まぁ、そういうことになるかな」
友達のからかい半分の言葉に有賀くんは顔を赤らめた。
一方、彼の後ろにいる黒永さんは聞こえていないかのように全くの無表情だった。
彼女のことは皆知っているので、黒永さんには誰も話しかけようとはしなかった。
「あ、デートなんだ。有賀くんもやるねぇ」
「からかわないで欲しいな、近藤さん」
「褒めているつもりだけどね」
「そ、そんな、照れるな……」
「照れるのもいいけど、有賀くん、いいの?」
「何が?」
「黒永さんのこと、放っておいて」
その言葉に有賀くんはハッとして後ろを振り返る。
わたしも黒永さんの方に注目してみる。
彼女は先ほどと同じように無表情だった。
だけど、その視線がどことなく冷やかに見えるのはわたしの気のせいではないはずだ。
有賀くんも同じように思ったのだろう。
彼の唇の端が少しひきつっていた。
「えーっと、黒永さん?」
「話は終わったのかしら?」
彼女の声のトーンが一段階低く聞こえる。
わたしの周りにいる人間による黒永さんの評価は、天才で変人という点以外には“クール”“無口”“何考えているか分からない”“ぼっち”といったものが多い。
だけど、目の前にいる彼女は誰がどう見ても嫉妬している。
あの黒永さんが、だ。
有賀くんがちょっと別の女子と楽しげに会話しているだけなのに、クールで無口な彼女が嫉妬している。
何を考えているのか分からないなどと言った人に、今の彼女の姿を見せてあげたいぐらいだ。
「ご、ごめん。そろそろ席に着こうか?」
「……しょうがないわね」
呆れた顔で黒永さんはそう言った。
それで喧嘩(?)は終わったのだろう。
二人は仲良く案内されていたテーブルに座った。
席が離れているので何を話しているのか聞こえないが、誰が見ても仲睦まじいカップルにしか今は見えなかった。
「あの二人、本当に仲が良いよね」
「わたしも、そう思う」
ちょっと悔しいけど、有賀くんが黒永さんを好きな気持ちは本物だっていうことはわたしはよく知っている。
だから、もう二人に対するわだかまりはない。
それにわたしにはインターハイという目標もあるのだ。
そういえば、とわたしは去年のことを思い出す。
体育祭のとき、四百メートル走の選手として走ったときのことだ。
あのとき、一位はわたしだったけれど、二位はあの黒永さんだった。
それもただの二位じゃない。
普段体を動かしていない彼女はわたしに迫るタイムだったのだ。
そこまで思ったとき、わたしは気づけば立ち上がって、二人が座るテーブルに向かっていた。
「結衣?」
友達の声が聞こえるが、わたしは気にせず二人に近づく。
有賀くんたちは何かを話していたようだったが、そんなわたしに気づいて会話を止める。
「玉環、さん?」
有賀くんの戸惑う声を無視して、わたしは黒永さんへ視線を向ける。
彼女もまたわたしをじっと見つめている。
その目は、何の用だとわたしに問いかけているように見えた。
「話の途中でごめんね。黒永さん、ちょっと聞きたいことがあるの」
「私に?」
特に驚いた様子もなく、彼女は言った。
「わたしが陸上部なのは知っている?」
その問いに黒永さんは首を横に振った。
「そう。わたしは二百メートル走の選手なんだけど……六月の体育祭のこと、覚えてる?」
「体育祭の何についての話?」
「ほら、黒永さん。あの時四百メートル走に出場したでしょ? そのとき一緒に走った選手の中に玉環さんがいたんだよ」
わたしの言いたいことを察して、有賀くんが代弁してくれる。
彼の言葉を聞いて、黒永さんは「あぁ」と呟いた。
「そういえば、いたわね」
「いたわねって……黒永さん、忘れていたの?」
「走ったことはもちろん覚えているけれど、誰が一緒だったかまではさすがに覚えてないわ」
黒永さんにしてみれば、出た競技にたまたまわたしがいただけの話なのだろう。
わたしにしてみても、黒永さん以外誰がいたのか覚えているわけじゃないので、そのことについて何か感じることはなかった。
それに本題はそこじゃないのだ。
「それでね、黒永さんは普段運動しているわけじゃないのに、トップを走っていたわたしに迫る走りを見せていたじゃない?」
有賀くんはわたしの言ったことを覚えていたのか、何度かうなずいていた。
「だから、それだけの走れるコツとか方法があるのなら、聞いてみたくて、ね」
「陸上に関しては素人の私にそれを聞くの?」
「ええ、お願い」
わたしは頭を下げる。
それだけ本気なのだと、彼女に分かってもらうために。
わたしの行動が突拍子もないからなのか、それともどう返事をするのか迷っているからか、黒永さんも有賀くんも何も言わなかった。
黒永さんが口を開くまで、わたしは頭を下げたままだった。
「……いいけれど、条件があるわ」
少し頭を上げると、黒永さんは言ったこととは違い偉ぶることなく聞いてきた。
「あなたが頭を下げてまで私から教わりたいと思うきっかけは何かしら?」
「えっ?」
「“記録を伸ばしたいから”というのは分かっている。けれど、伸ばしたいと思うきっかけがあったはず」
わたしが答えに窮していると、黒永さんはさらに言葉を続ける。
「“インターハイに出場したいから”というのは全国の陸上選手がみんな思うことだから、それ以外の何かでしょう? さしずめ、“誰かのために”と言ったところかしら」
……すごい。
どうして分かったのか分からないけど、黒永さんが天才と言われる訳が垣間見えた。
「その理由を教えてもらえないかしら」
「……黒永さんって、エスパーなの?」
「私は人の心が読めるわけじゃない。あなたの思考を分析しただけ」
当然と言ったように黒永さんは言う。
しかし、簡単に言っているけれど普通できるものじゃない。
やはり黒永さんは天才なのだとわたしは改めて思い知らされた。
「分かったよ」
別に隠すほどのことではない。
先輩との約束だから、大きな理由はそれだけなのだから。
わたしはこの前先輩に会い、そのときに彼女にインターハイに出ることを宣言したことを伝えた。
わたしが話している間、黒永さんは黙って耳を傾けていた。
「先輩のために、か」
話し終えての第一声はそれだけだった。
黒永さんはチラッと有賀くんの方を見て、私の方へ向き直る。
「教えてくれてありがとう、玉環。私はね――」
それからしばらく黒永さんの説明が続いた。
筋力も大事だが、足の回転数や姿勢、風向き、グラウンドの状態などが大事という当たり前の説明がほとんどだった。
だが、それらを語る彼女は活き活きとしていた。
きっと黒永さんは走ることが好きなのだとすぐ分かった。
単純にそう思えたら、どれだけ楽しいだろうかと思う。
いや、別に今の状況が辛いわけでもないのだけど……。
そこでわたしは陸上を始めたきっかけがあったことを思い出した。
ただただ走るだけというのは辛いことだ。
それでも走り始めた理由は、それが自分との戦いだからだ。
そこでは“玉環”という名前に意味はない。
自分の限界がどこまでなのか、それを見極めるために、わたしはやったこともない陸上を始めたのだ。
どうしてそんな大事なことを忘れていたんだろう。
だけど、大切なことはそのことを思い出せたことだ。
そして今、わたしはまだ限界にまで到達していない。
だったら、その日まで走り続けたい。
「――ということだけど」
いつの間にか、黒永さんの説明は終わっていたらしい。
わたしは彼女にお礼を言うと、テーブルから離れ友達が座るテーブルに戻った。
「結衣、どうしたのよ?」
「今わたしが悩んでいることについて、黒永さんに相談しただけ」
だけど、もう大丈夫。
陸上を始めたときの気持ちがあれば、きっと夏を迎える頃には……。
だから、それまでは走るだけだ。
先輩のために、そして限界を見極めるために。
また明日からの部活、頑張ろう。
終