act:1
「」は話しているところ
『』は特別な言葉
《》は頭の中で鳴り響いた言葉
【】は四角い枠(画面)に現れた言葉
「…………、ここはどこだ?」
*****
俺は加賀美 槐 。黒髪黒眼の純日本人で身長は173cmで、年は18。極普通な高校生♂だ。顔は上の下(妹云はく「兄の顔秀美なり」)らしい。
そんな俺はいつものように学校に行こうとして家のドアを開けた。が、いつも見る筈の家の庭が視界に入らずにグラウンドが目に入ってきた。
…………はっ?これは夢の中なのだろうか?などと少し考え、家の中に戻ろうと思い、振り返って見るとそこもグラウンドだった。
これは夢の中だと割り切ることにした。グラウンドの外に出て散策しようとして、グラウンドを囲んでいる柵を越えようとするが何か硬い壁でもあるかのように阻まれて先に進入することができなかった。
なにもすることがなくなった俺はグラウンドの隅に植えてある木々の影で休むことにした。そこで少しウトウトし始めると、急に肩をゆすられて起こされた。
人が気持ち良く寝ているのを急に起こすような馬鹿の顔を見ようとして目を開けて前を見ると、目の前にいたのは俺の親友の木下 楽だった。
一応説明しとくと、木下 楽は身長182cmの細マッチョ、イケメンの、ラノベのテンプレである主人公の友達そのままである。楽も俺と同じ黒髮黒眼の純日本人であり、同じ高校の生徒でもある。
「やっほ~、槐、おはよ~!」
「ん?なんで楽がこんなところにいるんだ?というか人が気持ち良く寝ているのを見て起こすなんて楽は馬鹿か?」
「あはは~、ごめんごめん。誰か知り合いがいないか探してて、ちょうど槐を見つけたもんでさ~。だって駅の改札口を通ったら、このグラウンドに何時の間にか居るんだよ?駅の改札口のところで誰かに眠らされてここまで連れてこられたのかな~?なんて思ったけどグラウンドの外に出られないしさ~。なんにもすることがなくなったから、槐と話でもしようかな~と思って槐を起こしたわけ~。」
「ふーん。楽も気付かないうちにここにいたのか……俺も家から出ようとして、ドアを開けたら何時の間にかここにいたんだ。一体ここはどこだ?何故グラウンドの外へ出られない?」
「夢にしては出来過ぎだと思うよ~。だって僕らの会話が普通に成立してるし、お互いの言っていることをしっかり理解できるから夢じゃないと思うよ~………たぶん。というか二人同時に全く同じ夢を見てるとかでなんらかの影響で夢が繋がったとかはありえないよね~?」
「んな、非科学的なことはないだろ。というか今、改めてグラウンド見てみたけど、なんか人がたくさんいないか?俺がここに来た時は俺以外誰1人いなかったっていうのに……これは何かのドッキリか?だとしてもこんな大掛かりことするか普通?うーん……」
「槐~、トリップしないで~!」
「大丈夫だ。というか、こんなことを話してる間にさらに人数が増えてるきがするんだが?」
「えっ!本当に!?」
「まぁいいや、取り敢えず俺達以外の知り合いがいないか探しに行こう。」
俺達は木のあるグラウンドの隅から人が集まっている方へ向かった。
「他に誰がいるのかな~?」
「会うまでの楽しみにしとけよ。ここで適当に言って本当にいたら、会った時の意外性がなくなって、面白くなくなっちまう。」
そう言ってる間に約数百人の集団のもとへ着き、知り合いを探していると、
何か白い物体が空から落ちてきた。
地上まであと10mというところで、いきなり白い物体が大きくなりそして弾けた。
弾けたと思っていた白いものは羽であり、白い羽に包まれていた人が天使のように舞い降りて来た。その人は小学校低学年ぐらいの女の子だった。
彼女にみんなが奇妙なもの見るような視線を向けると、
横に急に現れたリザードマンみたいな奴×2を控えさせ、彼女は俺たち全員に聞こえるような声でこう言った。
「ドッキリ大成功~!(でっででーん!)」
みんなが、なんだドッキリだったのかとホっとしていると、
「もちろん嘘よ!まぁ、お巫山戯もここまでにして、こんにちわ、皆さん。ここは第156選抜会場で、私はここの選抜担当者のノアよ。よろしくね!それでは選抜を始めるので皆さん同士で闘いあってね♡」
「「「…………はっ!?」」」
彼女は困惑する俺達を見て、
「あー、だるいから時間かけないでとっととやっちゃってね~!」
その時、側に控えていたリザードマンが彼女に耳打ちした。
「なになに…………1対1の形式で闘わせるですってー!面倒くさ……じゃなくて大変じゃない!しかも、簡単な説明しといてね☆とか……は~~~」
逆側のリザードマンがさらに彼女に耳打ちする。
「えっ!だけど、ここで選抜した者達を自分の配下にしていいの~!?けど、最高でも半分にしろか……まぁいいわ、これで私もランクアップできるかもしれないしね♪」
そうしてノアはいきなり態度を変化させ説明を始めた。
「それでは説明をします。まず貴方達、地球人は地球の神々に見捨てられ、この世界『ノスタルジック・ワールド』(以降N・W)に引き取られました。しかしこの世界で貴方達全地球人100億人を受け入れてしまうと貴方達の住んでいた地球同様にこの星が壊れてしまうので間引こうという結果になりました。この世界や仕組みについては試合の後で配布する手帳に書かれていますので、後ほどそれを見てください。それでは各々を選抜会場に転移させようと思いますが、試合に素手では辛いと思うので、私が貴方達の使う武器を用意します。転移する前に自分の使う得物を想像してください。想像したものを各自の試合会場で受け取れるようにしますのでお願いします。ただし、近代兵器、レーザーや銃などは除かせていただきます。なお選べる得物は1つです。ただ弓矢やボウガンなどは矢1本では戦えませんので、『弓もしくはボウガン』と『矢筒』と『矢×10』を用意します。ナイフなどの小さい武器も同じように10本渡されます。試合形式はHPの削りあいで、先に相手のHPゲージを0にしたら勝ちです。相手のHPゲージは相手をしっかりと視認できる場合のみ見ることができます。それでは10分後に転移させますが、何か質問があるのなら私にお願いします。尚こちらに刃向かうつもりならば死ぬつもりでお願いします。以上で説明は終わりです。質問がある人はこちらに来てください。」
「……、ちょっと待て。これは夢の中じゃないのか?楽、つねってみてくれ。」
「じゃあ、遠慮なく~。えいっ!」
「痛っ!……まさか、本当に現実なのか……?もしそうなら、情報があまりにも足りない、足りなさすぎる!楽、急いで彼女に質問に行くぞ!!」
「そんなに慌ててどうしたの~、って槐、襟掴まないで~」
はやく彼女に話を聞きに行こうとし、楽を引っ張りながら彼女のもとまで近づくと、
「ふざけんな!冗談じゃねえぞ、俺を地球に返しやがれ!」
いかにも外国のマフィアみたいな人が流暢な日本語を話しながら彼女に掴みかかった。次の瞬間、
キンッ!
その男はリザードマンの片割れに一刀両断され、男はHPゲージが急速に減っていき、0になった。同時にその男の身体は鏡が割れるように粉々になり、破片が光と化しその男は文字通り消失した。その後何やら白い光球が一つ浮かび、それをリザードマンが取り踵を返してもとの位置に戻って行った。
「だから、言ったでしょう。刃向かうなら死ぬつもりで来なさいと……あ、質問がある人は構わないから遠慮しないで聞きに来てね~!」
そんな光景を見て愕然とする人が続出し続けるなか、俺達二人は彼女のもとへ進み質問した。
「結局対戦形式は1対1で、相手を選択可能なのか?それと選抜会場はどんな場所なんだ?最後に今の男は死んだのか?」
「質問ありがと。対戦形式は1対1で相手の選択は可能よ。対戦したい相手を選んで『ターゲット』と呟けば、それで終わり。『ターゲット』された相手は拒否できないし、『ターゲット』した人も他の人からターゲットされることはなくなるわ。『ターゲット』しなかったりされなかった人はランダムで対戦相手が決まるわ。で、会場はランダムで選ばれるけど、火山とか水中とか人間が長時間生きられないところは選ばれないから安心してね。最後のは、あなたの言うとおり彼は死んだわ。ちなみにこの試合の敗者は全員死ぬことになるのよ。他に何か質問はある?」
「「ない。(で~す。)」」
「了解。あと7分ぐらいで時間よ。」
その後、彼女は俺達に近付き、耳元で、
「質問しに来た貴方達にアドバイスだけど、比較的弱そうな相手を選び、武器は扱える自信があるものを選びなさい。情報が大事だと理解している、貴方達は私の優秀な部下になるから死なせたくないの。生きたいなら私の指示に従いなさい。じゃあ、頑張ってね~!」
そう言って離れた。その後に少数ではあるが次々と質問に行く者が増えた。
そして、俺達はお互いの武器に話し合い、俺は弓矢、楽は剣にした。理由は簡単で、その部活に入って現在も活動しているからだ。
俺達はお互いに自分のターゲット相手にふさわしい、なるべく弱そうで倒しやすそうな奴を探すために別れた。
「槐、絶対に生き残ろうな!」
「当たり前だ、こんな不思議なところで納得もできず死ねるか。」
別れた俺は関取みたいな奴に『ターゲット』した。その直後、
【『ターゲット』成功。相手は「鬼塚 十四郎」。】
と目の前に現れた画面に書かれていた。
しばらく相手を観察していると、
遂に、
《転移開始》
という言葉が頭の中で鳴り響いた。
*****
《転移終了》
先程の画面が再び出て、ルール説明について書いてあった。
【1時間以内に勝負が決着しない場合両者とも敗者とします。勝負の決着は相手のHPゲージを0にすることで決まります。開始までに武器の装備をしてもらうので、5分時間を取ります。それでは指示通りに動いてください。開始。】
そして書かれていた文を読み終えるともとの文が消え、指示が出される。
【武器を出すために、『武器ボックス』と呟いてください。すると、貴方の目の前に四角い画面『武器ボックス』が表示されます。各々が転移される前に選んだ武器がその中に収納されいますので、それに触れてください。触れると、装備するかどうかの確認がされますので『はい』に触れてください。そしてその一秒後に選択した武器が装備されます。武器の装備は基本この通りですので、覚えて置いてください。これで、武器装備の説明を終わります。残り時間2分ですのでその間に装備してください。最後にこの画面の消し方は右手を軽く払う感じでこれに触れることによって消えます。】
それを読み終わり、
そして指示通りに『武器ボックス』と呟き、ボックスの中の得物を見てみると『木の弓』と『簡素な矢筒』と『木の矢×10』があった。それらに触れて、装備を整え、相手を探し始めた。
ちなみに俺が転移された場所はジャングルみたいな場所で、俺みたいに遠距離攻撃をする奴にとって隠れる場所が多いのでかなり有利だ。相手を探すついでに、牽制に使えそうな石ころなどを拾っておき、戦いに備える。
そして、
《戦闘開始》
闘いの火蓋が切られた。
木々に隠れ相手を探しているとすぐに相手を見つけた。相手は関取みたいだから、パワー系の武器を選ぶだろうと予測し彼を『ターゲット』したが、その予想は当たっていたみたいだ。彼は棍棒を持っている。
引き分けでは俺もノア達に殺されてしまう故になんとしてでも相手を屠る!
近接戦に持ち込まれたら、あれで一撃で潰される。幸いこちらは弓矢なので、遠距離から攻撃できることのみが利点だ。その代わり相手を一発で仕留めないといけない。
相手がこちらに気付く前に眉間に狙いを定め、息を潜め矢を射った。放たれた矢は真っ直ぐ飛 び……………
相手の耳を掠めた。そのことによって相手のゲージは10分の1ほど減った。だが、相手は怒り狂いこちらに全力で駆けてくる。
「いってぇ!このガキ、ブッ殺してやる!」
ヤバイ!殺される!と思い、
その場から、緊急離脱しようとするが、相手が俺に殺意を向ける。本気の殺意を向けられたことなんて一般人はあるはずがない。殺意を向けられ俺は脚が震えてしまった。
「動け、動けよ、俺の脚!クソ、なんでぶるっちまってんだ!速く逃げないと!」
距離は30m近く離れているが、相手は体型の割には素速く、俺は脚が震えながらも逃げるが追いつかれ、重い一撃をくらい吹っ飛ばされた。自分のHPゲージは残り二割を切った。そこを追撃しようと相手が攻めてくるが、闘う前にあらかじめ拾って置いた石を思い出し、ポケットから取り出して全力で投擲する。しかし投げても全然当たらず、3発目でようやく当たった。
「ぐぁっっっ!!!!!」
うめき声をあげて相手が片目を抑えて追いかけるのを中断する。相手のHPが八割を切る。
俺はその僅かな機会を見逃さず、
弓に矢をつがえ再び相手の眉間に狙いを絞る。
「これで終わりだ!!」
無防備の彼の眉間に向けて矢を放った。矢は眉間に吸い込まれて行き貫通した。
彼が矢をうけて倒れるとHPゲージが0に近づいて行き遂に0になり、身体がバラバラに割れ光のエフェクトとともに消えてなくなった。
するとポロロ~ンという音と同時に、
【『加賀美 槐』は決闘に勝利した&『加賀美 槐』はlev.2に上がった】と現れた。
先程と同じように右手を軽く振ると画面は消えた。
そして相手の身体があった場所に光の玉が生じた。リザードマンのようにそれを取ろうとして近づき、触れると同時に身体に吸い込まれて消える。
《『Large Seed』を手に入れた》
と頭の中に浮かんだ。
同時に今、初めて人を殺したことを思い出し俺は気持ち悪くなり気絶した。
*****
しばらくして目を覚まし起き上がると、先程のグラウンドに戻っていた。周りを見渡すと、最初にいた数百人から大きく減り百人程度になっていた。
俺は楽が生きているかどうか気になったから、楽を必至で探す。すると思いのほかすぐに見つかった。そして楽に話を聞くと、
「あ~、槐、やっと起きたんだ。大丈夫~?槐が寝ている間にノアから手帳を渡されたから、槐も受け取って来なよ~」
俺は楽が教えてくれたことを感謝し、
「にしても楽が生きてて良かった。ありがとう。俺は大丈夫だ。じゃあ、聞きに行ってくるな。」
「行ってら~」
彼女の前まで行き、手帳のことを聞くと、
「あ~、そっか、君は伸びてたんだっけね~。じゃあはい、これ。これは『叡智の書』って言ってね、あなたの疑問を解決するのに多いに役立ってくれるわ。だからと言って、全ての疑問に答えてくれるわけではないから注意してね。これの使い方は、これを開いて調べたいものを思い浮かべるだけよ。そうすることであなたが欲しい情報をほとんど得ることができるわ。これでこの手帳の使用法の説明は終わり。他に何かある?」
「取り敢えずこれを見てそれでもわからないのがあったら、また聞きにくる。」
俺はその場を後にして『叡智の書』を使い始めた。
まず始めにこの『N・W』について調べた。
『N・W』:地球にあったVRMMOに似た世界。時代でいうなら、ヨーロッパの中世時代。ゲーム内の様にレベルが設定されている。表面積は地球の約2・5倍の広さ。戦闘においては通常攻撃の他に『魔法』『技能』『技術』などがある。魔物や聖獣などもいる。
「ん、また訳のわからない単語が出てきたな。楽が調べてるかもしれないから聞いてみるか。」
楽のもとへ近づくと寝息が聞こえてきた。優しい俺はこいつのデコにデコピンをくらわして起こす。デコピンで起こしたのは、別に木陰で休んでた時に起こされた腹いせとかでは絶対にない。
「いった~い!…………あっ、槐おはよ~」
「楽聞きたいことがあるんだけど、『スキル』や『アーツ』の違いってなんだ?」
「ん~、簡単にいうと『スキル』は才能みたいなもので、『アーツ』は技みたいなものかな~。才能はもともと持ってるかどうかによるけど、技なら鍛えればどんどん練度が上がって行く、そんな感じかな~。」
「じゃあ『魔法』『スキル』『アーツ』の取得方法は?」
「『スキル』はさっきの戦闘で手に入れた『Seed』を使うと覚えられるみたいよ~。『魔法』は『スキル』の中に含まれているみたい~。『アーツ』は自分が使用している系統の武器をずーっと使い込んだり、コツを掴んだりすると覚えられるみたいよ~。」
「ふーん。そうか、なるほど。じゃあ『Seed』について教えてくれ。」
「書いてあったことが多すぎて、説明するのがだるいよ~、だから自分で読んで~」
「面倒くさいな、まぁ自分で調べてみるわ。」
『叡智の書』を開いて調べてみた。
『Seed』:基本5種類と特別な1種類がある。使用すると新しい『スキル』の入手又は持っている『スキル』の強化が可能。基本は『Minimum』『Small』『Normal』『Large』『Maximum』、特別なものは『Extra』のみである。『Minimum』は1個『Small』は2個『Normal』は3個『Large』は4個『Maximum』は5個、『スキル』の入手又は強化が可能。『Extra』は基本のものから得ることができないレアなスキルを入手可能。ただしそれで入手した『スキル』は強化不可能。どういうものが出るかはランダム。基本の『Seed』で入手するスキルは各自の武器や戦い方などから総合的に決定される。自分の意志での決定は不可能。『Seed』は入手が困難である。魔獣を100匹倒して出れば運がよい。レア度が高ければ高い程入手が困難になる。逆に自分の運が高ければ高い程、『Seed』を手に入れる確率も上がる。
補足情報:『魔法』を使うにはスキルで魔法系統のものを覚えている必要がある。
地球人は死んだ時絶対に『Middle Seed』以上をドロップする。
ふーんと思いながら補足情報の上の部分まで読み、読むことをいったんやめ、楽に尋ねる。
「ところで楽はスキルを既に手に入れたのか?」
「いや、まだだよ~。槐が来てから一緒にやろうと思ってたからね~。今からやる~?」
「ああ、やるか。……って、アイテムの出し方知らないし。楽、どうせ調べてあるだろ?教えてくれ。」
「武器出した時みたいな感じで『アイテムボックス』って言えば出せるみたいよ~。」
「「じゃあ、『アイテムボックス』」」
先程の『武器ボックス』のような画面に類似した画面が出てきた。
そのなかから『Large Seed』に触れて使用すると、
【『加賀美 槐』はスキル『弓・攻撃力上昇Ⅰ』『矢の作成Ⅰ』『魔法基礎』『隠密Ⅰ』を得た】
とでた。お互いの画面を見せ合うと、楽のスキルは1つだけだった。その名は『幸運』
「楽、お前もしかしてレアの『Extra』を手に入れたのか!?」
「実はそうなんだよね~」
「お前の運の良さを忘れてたよ……」
楽はいつも運がいい。何か欲しいものがあると何故か人からもらえたり、自分で手に入れたりしてしまう。
そうやって、お互いのスキルを確認すると、楽のスキルがかなり有用であることが明らかになった。
『叡智の書』抜粋
『幸運』:自分と、自分と同じパーティーメンバーの運を上昇させる効果をもつ。運の上昇(少)
俺達は生き残る確率があがったことを喜んだ。
そうやって楽と話していると、ノアが突然、
「みんな~、自己紹介するから集合~!」
「まずは、私ね。私は末端の神のノア、『セライル』で信仰されている神よ。私が上位の神になれるよう他国の侵略に協力してね。大きく貢献した者にはそれなりの対価を約束するわ。それと最後にこの『N・W』では末端の神々が自身の力を強めるために他国を侵略しようとする筈よ。だけどこの一ヶ月間は準備期間として他国に侵略できないように最上位の神様がしたから、その間に国内のギルドに入ってダンジョンを探検して力をつけてね。あと私は普段は世界に降臨できないから、指示は画面で出すわ。以上よ。」
「じゃぁ、次は僕g……」
「拙者はゼーレ・イェーガー、種族は竜人でござる。拙者は国よりノア様の護衛を仰せつかっておる。あと竜人は蜥蜴人の進化した者と考えてくだされ。以上。」
「じゃあ、ぼk………」
「吾輩はメッサー・ガーベルである。ゼーレと同じ竜人であり、ノア様の護衛である。以上。」
「本当にそろそろ自己紹介させてくださ~い!」
「じゃあ、ほら、君、さっさと紹介しなさい。自分の名前と使用武器とどんなスキルがあるかだけでいいわよ。」
だが、俺はそこに割り込み自己紹介を強引にする。
「じゃあ、1番、加賀美 槐だ。武器は弓矢で、『弓・攻撃力上昇Ⅰ』『弓矢の作成Ⅰ』『魔法基礎』『魔法付加Ⅰ』を修得してる。これからよろしく。」
よろしくな~とかそういう歓迎の声が聞こえてくる。ホッとして座り、隣りに座る楽を見ると頬をふくらめていた。それもリスの様に。
「(すまんすまん。最初にレアスキル持ちを紹介しない方がいいと思ったんだよ。)」
「(んー、わかった。)」
どうやら楽を鎮められたようだ。
「ところで何故外人が俺の言葉理解してるんだ?まさか全員日本語を習得してるのか!?」
「んな訳あるか~!私の魔法よ!ま・ほ・う!神なら誰でも使える初歩の魔法『共通言語化』よ!そんなことはどうでもいいから、気を取り直して次の人いってみよ~!」
こうして、自己紹介が進み最後に楽の出番が回って来た。
「皆さん、こんにちは。木下 楽です。武器は日本刀で、スキルは『幸運』のみです。どうぞよろしくお願いします。」
「「「おぉー!『Extra』多っ!」」」
全員の紹介の結果、『Extra』もちは五人で、それぞれのスキル名は『破壊の牙』『完全治癒』『絶対防御』『古代魔法』『幸運』だった。
「じゃあ、チームを作るから四人一組になってね~。ただし、『Extra』もちは固まらないように~!」
俺はもちろん楽と組み、あと2人を探していると丁度2人組の女の子のパーティを見つけた。
彼女達は接近戦担当の子と治療師の子のパーティみたいで彼女達を勧誘してみるとあっさりと了解してくれた。たぶん、うしろのアホ顔の楽のおかげだろうな。接近戦担当の子は約160cmで、顔は凛々しく体形はスラッとしている。金髪碧眼でハーフっぽい。治療師の子は約155cmで可愛い感じでお子様体形。こちらは銀髪蒼眼で同じくハーフっぽい。
こうして簡単にパーティを作った俺達はもう一度自己紹介を始めた。
「俺は加賀美 槐だ。適当に槐とでも読んでくれ。武器は弓矢で、スキルは『弓・攻撃力上昇Ⅰ』『弓矢の作成Ⅰ』『魔法基礎』『魔法付加Ⅰ』を修得してる。これからよろしく。」
「こんにちは~、木下 楽で~す。楽って呼んでね~。武器は日本刀で、スキルは『幸運』だけで~す。どうぞよろしくお願いしま~す。」
「私はエミリィ・ウッド・凛桜です。凛桜とお呼びください。武器は大剣で、スキルは『大剣・攻撃力上昇Ⅰ』『大剣ガードⅠ』『腕力上昇Ⅰ』『体力上昇Ⅰ』『魔法基礎』です。これからよろしくお願いします。」
「わ、私はルイス・ライト・紅葉です。も、紅葉って呼んでください!武器は仗です。スキルは『未熟な癒し手』『魔法基礎』『守備力上昇Ⅰ』『旋律上昇Ⅰ』です。お、お願いしましゅ。い、いふぁ~い、かんじゃふぁ。」
俺達三人の心が初めて一つになった。なにこの生き物可愛い!と。
そして俺達は特にすることもなくなったのでノアのもとへ報告しに行った。自己紹介まで済ましたことを言うと、
「貴方達は早いわね!よし、行動が早い貴方達にプレゼントよ。」
そう言って彼女は俺達に『Normal Seed』を渡した。そして俺達はスキルの数が少ない楽に渡すことにした。
そして楽は新たに『太刀・攻撃力上昇Ⅰ』『腕力上昇Ⅰ』『旋律上昇Ⅰ』を手に入れた。
チーム決めが終わるとノアが、俺達を自分の国『セライル』に転移させるということを話した。
転移させるのは丁度1時間後らしい。そしてバーティーメンバー達と1時間くらい馬鹿らしいことを話し合って、仲を深めた。その話の内容はまた別の機会に……
準備が整い俺達は一斉に『セライル』に転移させられた。
スキル説明
『魔法基礎』:5大元素(火・水・風・土・雷)の初級魔法の~ボールが使えるようになる。
(例)ファイヤーボール
*****
8/8に修正しました。最初とかなり設定がかわってしまっているので、読んでくださった皆さんは二度手間になりますが、改稿をしっかり見ていただければな~と思っています。
本当にすいませんm(_ _)m