Episode003 神のイタズラ?
あなたは運命を信じますか?
僕は信じます。だけど、これはあんまりでした。
これはごく最近の話になります。
「今からリーダー会を始めるからみんなを集めてきてくれないかい?」
「え?マジっすか?今から龍聖と遊びに行こうと想ってたのに」
「今度は龍聖か。みんなと仲がいいんだな」
僕には仲の良い友達がいましたが、いつもその友達とつるんでいるわけではありません。バスケ部に入部している僕は部活が終わるといつも夜の七時ほどまで遊びに行きます。それも毎日違う人と。そういう性格のおかげか、中学生になってから友達がすごく多くなりました。
そんな僕の性格を知っている担任の先生は僕を呼び止めてリーダー会を開くといいました。
リーダー会とは、学級委員長と副委員長が集まって開く会議です。僕は一組の委員長であり、その会議でも委員長を務める、いわば学年のトップなわけです。
メンバー全員を集めて、一つの教室でリーダー会を始める僕たち。
でもその時、僕にはリーダー会のことなんて全く考えていませんでした。
すぐ隣に、一組の副委員長であらせられる水口が座っていたからです。
告白をした相手、された相手。そしてふられてしまうと、その後会話などがしづらくなる人が多いと想います。
僕はふってもふられても気軽に話しかけられるのですが、水口は違ったようです。彼女は何だかそわそわしています。
「これでリーダー会を終わります」
委員長、副委員長が教室を出て行く中、二組の委員長、副委員長が話しかけてきました。
「はまちゃんってさぁ、今日の放課後、暇?夕飯食べに行こうよ!」
はまちゃんとは僕のニックネームです。そして誘ってきたのは、たっくんというとても背の低い男子生徒。まるで子供のようで、身長の高い僕と並ぶと親子みたいです。
「おう、食べに行くか!」
「うん、ここのメンバーで行こうよ!」
「え?」
水口が声を挙げた。それも当然。ここのメンバーということは、たっくんと僕と水口、そして二組の副委員長である奥田の4人。
水口には拒否感があったんじゃないかと想います。
「行こうよ!はまちゃんいっつも他の人と遊びに行っちゃうから中々行けないんだよね。だから良い機会じゃん!」
奥田の発言に僕は少し違和感を感じていました。
彼女は、水口の告白を知る数少ない一人でした。水口を気遣うのならそんなことは言わないはず。
「……あ、そうだね。行こう水口!」
僕には奥田の真意が分かりました。
僕と水口は夕食を食べに行くことで、元の関係に戻そうと奥田は考えていたのです。これにはちょっとびっくりしたというか……気遣ってくれたのが嬉しかったです。
「う、うん、そうだね」
水口も賛成、これで今日の夕飯は友達と食べに行くことになりました。僕たちが住む地域からレストランや電化店が並ぶ地域までは徒歩で30分ほどかかる距離でした。完全下校時刻は五時三十分。今から丁度一時間後。
「じゃあ、俺部活行くわ。じゃあ、また後でな」
「うん、じゃあ」
僕は教室を出て体育館に向かいました。
3人も次々と教室を出て最後に水口が教室の鍵を閉める。
「あ、俺が鍵持ってくから」
「うん、ありがとう」
水口から鍵を受け取って僕は再度体育館に向かう。
小さな優しさ、僕の好きなところと言ってくれた水口。
なんだか複雑な気分です。水口が僕のことを好きと言ってくれた。
だけど、この学年には、僕のことを好きと言ってくれた女の子が水口の他に3人いました。
そして、他県にガールフレンドが一人います。
そしてもう一人……大切な女の子が一人、タイにいます。
そんな彼女は、来週日本に帰ってくる。
その事実をその時の僕は知りませんでした。だから、この日の夕食を知った好意を寄せてくれる女の子が悪い方向に誤解してしまうなんて……全く想ってませんでした。