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赤色の悪役令嬢に転生しました その後  作者: りな


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21/21

家を手に入れました

 翌日。カイルと私は、譲り受けた土地と建物を見に行った。町から、少し離れた場所。人の往来も少なく、賑わいから、すっと距離を置いたような静かな場所だった。

「……意外と、良い所だね」

 丁寧に整えられた家と、手入れされた庭を眺めながら、私は言った。

「どうして、こんなのを所持してたのかなぁ」

 そう言いながら、一緒に渡された鍵で、家の扉を開ける。きい、と静かな音。中は、きちんと整えられていた。家具も最低限揃っていて、すぐにでも、人が暮らせそうな状態だ。

「……住めるね、ここ」

 ふと、テーブルの上に紙が置かれているのに気づいた。

「何か、あるよ?」

「……手紙、みたいだな」

 カイルが、それを手に取る。

 ……物凄く、達筆。私には、正直、ほとんど読めない。それより――カイルの表情が、少しだけ硬いのが気になった。

「あのね」

 私は、おずおずと言った。

「読めないから……読んでくれる?」

「……姉のために、用意していた家らしい」

 カイルは、淡々と続ける。

「姉は、もっと安全な場所にいる。だから、この家は……自由に使ってほしい、と」

「そうなんだ」

 私は、ほっと息をついて、笑った。

「良かったね」

「……ああ」

 カイルも、ほんの少しだけ、笑った。

 私は、知らない。その手紙の続きを。

『いつでも、俺の所に来ていい。俺の――天使へ』

 そう、書かれていたことを。

 部屋の中を、楽しそうに見て回る私を、

 カイルが――どこか眩しそうに、見つめていたことも。



 そうして――隣国での、カイルとの生活が始まった。穏やかで。静かで。少し、不器用で。

 けれど私は、知っている。

 ――ゲームの世界では。バルドは、クーデターを起こす。そして、成功する。最愛の姉が、すでに亡くなっていたと知り、自暴自棄になり、暴走する。

 その混乱を恐れた私の元いた国は、飛び火を防ぐために――カイルを、バルドを殺すために派遣する。

 やがて。偶然にもバルドとカイルは、互いの不遇を知り。カイルは、決断する。バルドと共に、元いた国へ刃を向けることを。

 そして、とある出来事で――カイルは、聖女と出会う。そこから始まる、迷い。

 聖女に尽くすか。

 バルドを選ぶか。

 それとも――自らが、消えるか。

(……そんな未来。来ない)

 私は、歪めた。確かに、歪めた。

 けれど――それは、いつか。

 “補正”されるのだろうか?

 私は、隣に座るカイルを見た。机の上で、真剣な顔で権利書を確認している。

 金色の瞳。真っ直ぐで、強くて――

 少し、不器用な光。

 引き込まれそうになる。

「……どうした?」

 ふいに、カイルが顔を上げた。

 私は、微笑んで言った。

「カイルって、カッコいいよね」

 少しだけ、本当に、少しだけ。カイルの耳が、赤くなる。

 彼は何も言わず、視線を逸らして、また書類に戻った。

 私は、口元を緩めたまま。何も言わず。

 ただ、ずっと――カイルを見ていた。

 この時間が。

 この未来が。

 続けばいいと、心から、願いながら。

ここで、区切りとします。新章は未定です。(まだ何も考えておりません)

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