家を手に入れました
翌日。カイルと私は、譲り受けた土地と建物を見に行った。町から、少し離れた場所。人の往来も少なく、賑わいから、すっと距離を置いたような静かな場所だった。
「……意外と、良い所だね」
丁寧に整えられた家と、手入れされた庭を眺めながら、私は言った。
「どうして、こんなのを所持してたのかなぁ」
そう言いながら、一緒に渡された鍵で、家の扉を開ける。きい、と静かな音。中は、きちんと整えられていた。家具も最低限揃っていて、すぐにでも、人が暮らせそうな状態だ。
「……住めるね、ここ」
ふと、テーブルの上に紙が置かれているのに気づいた。
「何か、あるよ?」
「……手紙、みたいだな」
カイルが、それを手に取る。
……物凄く、達筆。私には、正直、ほとんど読めない。それより――カイルの表情が、少しだけ硬いのが気になった。
「あのね」
私は、おずおずと言った。
「読めないから……読んでくれる?」
「……姉のために、用意していた家らしい」
カイルは、淡々と続ける。
「姉は、もっと安全な場所にいる。だから、この家は……自由に使ってほしい、と」
「そうなんだ」
私は、ほっと息をついて、笑った。
「良かったね」
「……ああ」
カイルも、ほんの少しだけ、笑った。
私は、知らない。その手紙の続きを。
『いつでも、俺の所に来ていい。俺の――天使へ』
そう、書かれていたことを。
部屋の中を、楽しそうに見て回る私を、
カイルが――どこか眩しそうに、見つめていたことも。
そうして――隣国での、カイルとの生活が始まった。穏やかで。静かで。少し、不器用で。
けれど私は、知っている。
――ゲームの世界では。バルドは、クーデターを起こす。そして、成功する。最愛の姉が、すでに亡くなっていたと知り、自暴自棄になり、暴走する。
その混乱を恐れた私の元いた国は、飛び火を防ぐために――カイルを、バルドを殺すために派遣する。
やがて。偶然にもバルドとカイルは、互いの不遇を知り。カイルは、決断する。バルドと共に、元いた国へ刃を向けることを。
そして、とある出来事で――カイルは、聖女と出会う。そこから始まる、迷い。
聖女に尽くすか。
バルドを選ぶか。
それとも――自らが、消えるか。
(……そんな未来。来ない)
私は、歪めた。確かに、歪めた。
けれど――それは、いつか。
“補正”されるのだろうか?
私は、隣に座るカイルを見た。机の上で、真剣な顔で権利書を確認している。
金色の瞳。真っ直ぐで、強くて――
少し、不器用な光。
引き込まれそうになる。
「……どうした?」
ふいに、カイルが顔を上げた。
私は、微笑んで言った。
「カイルって、カッコいいよね」
少しだけ、本当に、少しだけ。カイルの耳が、赤くなる。
彼は何も言わず、視線を逸らして、また書類に戻った。
私は、口元を緩めたまま。何も言わず。
ただ、ずっと――カイルを見ていた。
この時間が。
この未来が。
続けばいいと、心から、願いながら。
ここで、区切りとします。新章は未定です。(まだ何も考えておりません)




