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赤色の悪役令嬢に転生しました その後  作者: りな


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20/21

言い訳は、難しい

「あの、それは……ですね」

 私は、必死に口を開いた。

「大地が、揺れるかもしれない事を……伝えただけ、です」  

棒読みだった。

(……ゲームの世界で、そういうイベントがあった、なんて。言えるわけがない。だから、多分、とか。曖昧な言い方も、できない)

「ミアが」  

耳元で、低い声が落ちてくる。

「どうして、そんな事を知ってるのかな?」

(きゃー。近い。近すぎます。ゾワゾワするし、その声、腰にきます)

「……別荘の本に」  

私は、苦し紛れに言った。

「そんな事が、書いてあったような……?」

(……苦しい。苦しすぎる言い訳だわ。どう考えても。無理が、ある)

「……それだけ?」

 カイルの声が、静かに問いかける。

「それだけ、です」  

私は、即答した。

「……“自分を曝した”っていうのは?」

(まだ、続くのですか!?)

「……知識を、曝したのです」  

私は、ほとんど死にかけながら言った。

 ……本当です。 本当に、それだけです。

「……あいつは」  

少し間を置いて、カイルが言った。

「ミアに、何もしてないの?」

「指一本」  

私は、きっぱり答えた。

「触ってません」

「……本当に?」

 念を押すような声。

「本当です……」

 私は、もう、 涙声になっていた。

「……良かった」

 その一言と同時に、 背後から、ぎゅっと。

 カイルの腕が、 私を抱き締める。

 ふう、と。 はっきりとした―― 安堵の、ため息が、 首元に落ちた。

(……ひゃー。お願いです。首に、顔を埋めないでー!!!)

 心臓が、 壊れそうなほど、 うるさく鳴っていた。


 それから、私は――カイルに、色々と聞かれた。

 殴られたこと。牢屋に入れられたこと。手錠をかけられ、ナイフを突き付けられたこと。ひとつ、ひとつ。私が話すたびに、背後の空気が、少しずつ冷えていく。

「……殺すか」

 ぼそりと、確かに、そう聞こえた気がした。

(……聞こえなかったことに、しよう。うん。平和が一番)

「……カイルは、どうだったの?」

 私は、話題を変えるように聞いた。

「普通だ」

 一言だった。

(……しまった)

 あの場に、カイルがいたということは。動いていない、はずがない。殺しが、生業だった人だ。“普通”の基準が、違う。

(……でも)

 私は、ゆっくり息を吸って。

「……とても、助かった」

 ぽすん、と。カイルの胸に、倒れた。

「ありがとう」

 しばらく、沈黙。カイルは、何も言わなかった。

 その沈黙が、重くて、深くて、でも――拒絶ではないことは、わかった。

「……聞かない、のか?」

 少しだけ、戸惑ったような声。

「言いたくなったら、で、いいよ」

 私は、カイルを見ようとしなかった。

 今は――この、静かな時間を。

 無事に戻ってきた、この場所を。

 大切にしたかった。

「本当に、嬉しかった」

 それだけは、ちゃんと、伝えたかった。

 今。この瞬間。私は――とても、良い。

 そう、思えていたから。


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