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赤色の悪役令嬢に転生しました その後  作者: りな


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16/21

バルドとの交渉

 牢屋から少し離れた、

石造りの小さな部屋に入れられた。灯りは一つだけ。影が、壁に大きく揺れる。

 バルド・グレインは、私の喉元にナイフを突きつけたまま、低く言った。

「……何を、どこまで知っている」

 私は、わざと視線を逸らし、静かに返す。

「それより――私が、誰だとわかったのかしら?」

 刃が、僅かに揺れた。

「元・王子婚約者だろ」

 吐き捨てるように、バルドは言う。

「焼死したはずじゃなかったのか?」

 ……なるほど。

(私と、カイルは“焼死扱い”なのね)

 それは、とても良い情報だった。

「表向きは、ね」

 私は、平静な声で答えた。

「でも――クーデターでは、助けられないわよ」

「……何を言っている?」

 眉をひそめるバルド。――隠している。

 必死に。

(でも、知ってるのよ)

 私は、一歩だけ踏み出した。

「あなたがクーデターを起こした時には――

 もう、あなたのお姉さんは死んでいる」

「……何、だと」

 その声は、はっきりと震えた。刃先が、私から逸れる。

(やっぱり)

 私は、確信した。彼がここまで堕ちた理由。奴隷商に手を染めた理由。

 すべては――最愛の姉のため。

「この国の城の奥深くで、密かに囲われていた女性」    

私は、にやりと笑う。

「――あなたのお姉さん、でしょう?」

 金属音が、床に響いた。

 バルドの手から、ナイフが落ちたのだ。

「……どうして、それを……」

 声は、もはや掠れていた。

「国王の歪んだ寵愛。側室たちの妬み。“保護”という名の、監禁」

 淡々と、告げる。

「……もう、調べているはずよ」

 バルドは、何も言わなかった。肯定だった。

「視察中に見初められて、拉致。檻の中で、存在を隠される」

 私は、最後の一撃を落とす。

「――彼女はね。クーデターの前に、毒殺されるの」

「嘘だ……!」

 バルドは叫んだ。でも、否定には、力がなかった。

「信じなくてもいいわ」

 私は、ひどく、ゆっくりと言った。

「でも――。私は、彼女を助ける方法を知っている」

 沈黙。灯りが、ぱちりと揺れた。

 私は、微笑む。

(さあ。興味、あるでしょう?)


「……何が、目的だ」

 バルド・グレインは、低く問いかけた。

 私は肩をすくめて、軽く答える。

「私の自由と――お金、かしら?」

 半分は本当。半分は、嘘。

「情報源は?」

 探るような視線。私は、くすりと笑った。

「知らないの?記憶を失った“赤い令嬢”はね、時間の断片が見えるようになったのよ」

 からかうように言うと、バルドの眉がぴくりと動いた。

「――二日後」

 私は、声を落とす。

「この土地は、大きく揺れるわ」

 静寂。

「建物は倒壊し、人々は逃げ惑う。……多くの人が、死ぬ」

 バルドは、信じられないという顔で、私を見た。

「あなたがすることは、簡単よ」

 私は指を一本、立てる。

「建物が倒れないよう、補強する。商品棚が崩れないよう、固定する。商品が――落ちないように、ね」

 ――未来が、重なる。

(そう。あなたは、この地震で。財を、ほとんど失う)

 そのせいで、 クーデターは遅れ、 すべての歯車が狂う。

「揺れの後は、混乱が起きるわ」

 私は、淡々と続けた。

「内偵は、その混乱に乗じて。彼女を、連れ出すのよ」

 視線を、まっすぐ向ける。

「チャンスは、この時しか無い」

 バルドは、呆然としたままだった。

「……それと」

 私は、念押しする。

「火事が起きる可能性もあるわ。備えが、必要よ」

 ――建物崩壊。――各地での火災。

 この国は、確かに揺らぐ。

「……信じられない」

 掠れた声で、バルドは言った。

「信じなくても、いいわ」

 私は、静かに言い切る。

「あるのは――結果だけだから」

 沈黙。

(どうする?動かなければ、終わりよ)

 やがて。

「……おまえの場所を、移す」

 バルドは、そう言った。

「地が揺れるなら、牢屋は危ないだろう」

 ――来た。

(あ。信じた)

 私は、心の中で拳を握る。

(やった。交渉、成立)

 こうして私は、 “奴隷”から―― 未来を売る女になった。

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