表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】白面に微笑む令嬢探偵 ~椿子の記憶録と沈黙の三事件~第三話『白鷺館事件』  作者: ましろゆきな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

第五話:記憶室の手紙と原稿

 白鷺館・西棟の書斎――“記憶室”。 かつて鷺沼侯爵が“語られぬ記録”を保管していたこの密室は、今や澄江の死の現場となっていた。


 椿子は、澄江が最後に残した痕跡を探すため、書斎の奥へと足を踏み入れる。 棚の裏に隠されていた小箱を見つけた。 その中には、二通の封筒が収められていた。


 ● 一通目:朝霧澄乃の手紙

「私は、語ることを選ばなかった。 あの夜、鷺沼家の記録室で見たものは、誰かの罪ではなく、誰かの沈黙だった。 それを語れば、誰かが壊れる。 だから私は、沈黙を守ることにした。 でも、椿子。 あなたが“語る者”になったなら、 その沈黙を、赦しに変えてください。」


 椿子は、母が語らなかった理由を初めて知る。 それは、誰かを守るための沈黙だった。 そして今、その沈黙は椿子に託されていた。


 ● 二通目:綿貫澄江の原稿(未発表評論)

「沈黙は、語られなかった罪を覆う布ではない。 沈黙は、語られることを待ち続ける記憶の器である。 私は、朝霧澄乃の沈黙を赦したい。 それは、語ることで壊すのではなく、 語ることで理解するために。」


 原稿の最後には、澄江の署名とともに、こう記されていた。


「この記録を朗読することで、私は沈黙を赦す。 それが、私の“語る者”としての選択です。」


 椿子は、母と澄江がそれぞれの沈黙を守り、そして語ろうとしたことを理解する。 澄江の死は、語ることによって沈黙を赦そうとした者が、最後まで“語る覚悟”を貫いた結果だった。


「澄江さんは、語ることで沈黙を壊したのではない。 沈黙に寄り添い、赦すために語ったのだ。」


 椿子は、二人の沈黙を受け継ぎ、 事件の真相を語る者として、最後の講義へと向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ