第四話:沈黙の証言者たち
白鷺館の朗読会に集まった招待客たちは、澄江の死後、口を閉ざしていた。 椿子は、藤村と共に一人ひとりの証言を丁寧に聞き取っていく。
● 鷺沼家旧使用人・村瀬
「澄江様は、侯爵家の“記憶室”に触れてしまったのです。 あの部屋には、語ってはならない記録が眠っていました。 そして、かつてその記録を整理した女性がいました。 朝霧……朝霧澄乃という方です。」
椿子は、母の名を聞いた瞬間、息を呑んだ。 澄乃――椿子の亡き母。 彼女は、かつて鷺沼家に仕えていたことを椿子に語ったことはなかった。
● 澄江の弟・綿貫誠一
「姉は、朝霧澄乃さんの残した手紙を読んでいました。 そこには、“語られなかった記憶を守るために沈黙を選ぶ”と書かれていた。 姉は、その沈黙を破ろうとしていたのです。」
椿子は、母が“語らないこと”を選んだ理由を知ろうとする。 そして、澄江がその沈黙を“語ることで赦す”ために朗読会を開いたことに気づく。
● 帝都大学関係者・佐伯
「朝霧澄乃さんは、大学でも一度だけ“白鷺館事件”について語ろうとしたことがある。 だが、彼女は語ることをやめた。 それは、誰かを守るためだったのかもしれません。」
椿子は、母が語らなかった記憶の中に、澄江の死の理由があると確信する。 そして、白鷺館の“記憶室”――密室の書斎に再び足を踏み入れる。




