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第三話:密室殺人の発生
十五分後。 澄江が戻らないことを不審に思った館の使用人が、書斎の扉を叩いた。 返事はない。 鍵は内側からかかっていた。
館主の許可を得て、扉を破ると―― 澄江は、机に突っ伏したまま息絶えていた。 手には、破られた原稿と“白面”を模した仮面。 窓は閉ざされ、侵入の形跡はない。
藤村が椿子に耳打ちする。
「椿子様。原稿の一部が失われています。 そして、仮面の裏に“語るな”と書かれていました。」
椿子は、澄江の死が“語られぬ記憶”に関わるものであると直感する。 そして、密室の中に残された“沈黙の痕跡”を読み解くため、再び語る者として歩み始める。
「語ることで、誰かが壊れる。 語らなければ、誰かが消える。 その選択を、澄江さんは私に託したのかもしれない。」




