魔法バトル
(キーンコーンカーンコーン)
休み時間が終わり、サイ達はそれぞれ席に戻っていく。
そして、教室に入って来たのは、レナとは違う種類の薄めの金髪を肩まで伸ばして、深い翠の瞳に、すらっと背筋を伸ばしているので、元々高い身長がさらに少し高く見える美人だ。
俺はすぐに誰なのか分かった。
この1年3組の副担任である『レイニー・クライン』
この学院は、魔法知識と魔法アイテム、そして魔法技術と、担任、副担任で分けられているらしい(さっきルークに聞いた)。キールは魔法知識と魔法アイテムが担当で、レイランは魔法技術担当。あ、レイランと言うのは彼女の愛称で、もうレイニーというよりレイランの方が名前になっている感じだ。ちなみに生徒だけではなく、教員方もレイランと呼ばれているらしい。俺もこの呼び方をしてもいいのだろうか?もう呼んじゃってるけど。
話に戻るが、レイランが入って来たという事は1時間目は魔法技術となるわけだ。
レイランとは職員室で少し話しをしていて、その時の印象はアキナと似ていて、先生と言うより友達みたいな感じだった。
一瞬レイランと目が合い、ヒョィっと少し頭を下げる。レイランは少し微笑んで、授業を始めた。
「4日後のクラスマッチに向けて、今日も昨日と同じように各自の得意魔法の自己練習をします。今日は1組と2組が練習場を使っているので、3組は岩山で練習します」
そう言って、レイランが教室のドアとは逆の隅っこの方に立つ。すると皆が席から立ち上がり、レイランの周りに集まっていく。
勿論ソラは意味がわからなく、ただ皆と同じくレイランの近くに寄っていく。
「なぁリリ、皆なんで先生に集まっていくのか分かるか?」
「ん?岩山に移動するんだよ?」
リリの言う移動とは、岩山など遠くで授業したりする時は教員しか使えない、移動魔法で集団移動するらしい。
俺も、何回か体験している、(シュン)と音を立てながら一瞬で決められた場所から場所に移動する奴の事だ。
レイランは皆が集まったか確かめるように教室を見回した。
「よし、それじゃ行くよ」
その言葉とともに3組の全員が(シュン)と一斉に教室から消える。
(シュン)
俺は気がつくと、そこはさっきまでいた広い教室ではなくソラが昨日一人で練習してた岩山に着ていた。
昨日、作ったや地面の凹みがあるから間違いない。
それにしても、あのワープ魔法は便利だな。
辺りを見回していると、「それじゃぁ各チームごとに分かれて、練習してね」と3組全員に聞える大きな声で言う。そして、皆4~5人づつ分かれていく。
俺もサイ達を追いかけようとしたら、レイランに呼び止められた。 いったいなんだろう?
「ソラ君、チームなんだけどね」
「あ、俺もうチームに入れてもらってるんですよ……」
「あら、そうなの」
レイランは服の裾からシュッとTWを取り出し、モニターをピッピッピといじりだす。聞くと、俺が入ったチームを調べている。
「サイ君がリーダーのFチームね」
各クラスのチームの数は決められていて、A~Hまでの8チームまで。その中で、1チーム、3人~5人までチームを作るようになっている。チーム数は8チームまでという事は別に7チームでもいい。
あ、これもルークに聞きました。
「はい、では俺もサイ達の所で練習をしてきますね」
さて、サイたちはあっちのほうに行ったよな。たぶん…。
Fチームに追いついた頃にはもう、それぞれ連携やら練習していた。
仕方なかったんだ!!リリに聞きながらようやくきたんだから。
自分が来た事に気づいた4人は近寄ってきて、最初の一言目に「「「「遅い」」」」と少し怒られる。
そんなわけで、レイランに呼び止められたと説明をする。
本当はそれだけじゃないんだけどね。
「まぁ、いいや。それより、クラスマッチでの役割を決めようぜ」
サイの言った役割とは、クラスマッチでの各自の動きについてらしい。よく分からなかった為、TWでルール確認をする。
クラスマッチ
生徒が魔法に対する興味などを上げるには、互いを競いあいなどをする事で生徒は格段にいいと言う事がきっかけで、始まったのがクラスマッチだ。
クラスマッチは各学年ごとに3ヶ月に一回行うスポーツみたいな感じの魔法成績に関わるイベントだ。
各クラスの決められた、クラスリーダー一人を倒せば勝ちになる。倒すと言っても、多少のねんざや打撲などの怪我はいいが、骨折などの大怪我など負わせてはいけない。
さらに、倒し方にも、ただ気絶などさせるのではなく、TWにある機能の一つ、『判定機能』により、勝敗が決まる。
『判定機能』はクラスマッチでは自動的に作動して、TWの持ち主が負けと判断したら半径2メートル以内の魔法は発動を無効にされ、(ピーピーピー)と高い音がなる。
負けた者は強制的にクラスマッチからリタイアする。
ちなみに判定機能の無効は魔法の一種で、学院長がクラスマッチの時のみM値の殆どを使い、インストールして、発動させている。Sランク魔法の上の+Sランク魔法だ、+Sランク魔法は無効のみしかない。
各自、行動は自由だが、自分の入っているチームのリーダが倒されれば、自分は負けていなくてもチーム全体の負けとなり、チームリタイアとなる。
ふむ、ふむ。主なルールはこれぐらいだが、実際に行うと、配置やチームの動きなど戦略がものを言うな。
「まずは3組のクラスリーダーとなる、Aチームリーダー『フルウィン・ノーズ』はAチームとCチームで守る。後はすべて的のクラスリーダーをやりにいく」
ああ、あのハンサムな彼ね。
ちなみに、クラスリーダーは委員長の役割もしているので知っていた。
サイの言った、作戦はクラス全体で決めた事らしく。3組はこっちのクラスリーダーがやられる前に、的のクラスリーダーを倒す、攻撃的なやり方だ。
「俺たち、Fチームは別のチームとは協力はせず、とにかく出会ったチームとやりあう!!」
サイが拳を握り締めて熱く宣言する。
しかしそれでは戦略もなにもなく、ただ敵陣に突っ込んでいきボロボロにされるだけだ。俺はサイの作戦?に異議をとなえようとした瞬間に、サイの隣にいたシイナが指を弾きながら「電撃」と魔法発動の合言葉を言う。シイナの弾いた指から、蒼い電撃が(バチッ)と弾けるようにして、サイに命中する。
てか、怖!!指弾いたら電撃って冗談抜きでマジで怖いよ。
「ぎゃあああ!!」
サイの全身に電撃が流れ、周りから見たらそうでもないが、本人の叫びからして相当しびれて痛いらしい。
ご愁傷様?
「何しやがんだ!」
「役割も何もないじゃないか!!お前はやっぱり馬鹿か!!」
「な!!俺が馬鹿だと!!んな事ねぇよ!なぁルーク!!」
ルークの方を見ながら言う。しかし今回はさすがにシイナの方をいう事があっている。
「馬鹿だ…」
「お前もかよ!!」
そんな中、レナがちょこんと、俺の隣に来て話しかけてきた。
2人は、まだギャーギャー騒いでいるが無視だ。
「ソラ君はどんな魔法使うの?」
「俺は重力系の重力操作」
「重力操作?」
レナの反応はサイやルーク…3組の男子達と、反応は同じだ。当たり前といっちゃ当たり前だ。前にキール先生が言ってた事をそのままレナに話す。
「なんだかよくわかんないけど、すごいんだね」
はいすごいです!!なんたって神の力(勝手に言ってるだけ)ですから!!でも、そう簡単に使えるものじゃないんだよな。
でもそんな笑顔で褒められたら…。
俺はレナから顔を逸らして、サイとシイナの口喧嘩を見る。
本当はレナの無邪気な笑顔に一瞬だがドキッとしてしまって恥ずかしくなってしまったから、顔を逸らしたかっただけだ。
女子とはあんまり話をした事ないし、それにレナは美人だから余計にあれだ……。
ちなみにあれとは、あれだ……。
そんな俺を見て、レナは顔を除きこんでくる。
「ソラ君?」
「フフフ…ソラは照れてるのよ」
俺の頭の上で寝転がって膝をつき、おもしろそうに微笑みながらリリが言うと、レナはなぜか顔をボンッ!と赤くして、除きこんで来た顔を引っ込めて、縮こまる。
余計に恥ずかしくなってくるじゃないか。
「なにいってんだよリリ、別に俺は照れてるわけじゃ」
「そうかな~」
「そうだよ!!」
「ウフフフ」
この、リリの「すべて分かってるよ~」的な笑いは、他人に対してならそうでもないが、自分に対しては苦手だ…。
ソラとレナがそんな事をしていると、あっちの2人は何故か2人して、少し離れてにらみ合っている。
どうしてのかと思い、ルークに聞いてみると
「キリがないから、勝負したらどうだ?って言ったんだよ。今は授業中だし、クラスマッチに向けての練習だから、魔法バトルしても怒られないからな」
学院では、無意味な魔法バトルは禁止されていて、もししている所を教員に見つかったら、ポイントを減らされ、さらに生徒指導室に連行され、なが~い説教をされるらしい。
しかし、魔法バトルか…クラスマッチでは同じような事をするんだから、見といて損はないな。ただの喧嘩だけど……。
「俺が勝負を判断する。いいな?では始め」
ルークが言った瞬間に、シイナの「電撃!!」と言って、サイに蒼い電撃が(バリバリ)と音を立て、不規則な動きをしながら向かっていく。
てか、あんなの喰らったら死ぬんじゃ…。
サイは横にステップして、ヒョイっと電撃避け、「にっ」と挑発するようににやける。
それが頭にきたのか、もう一度電撃を放つシイナ。
しかし今度の電撃はプラズマ。球体になり、サイに向かっていく。
サイはこの攻撃を知っているのか、さっきのヒョイっと避けるのではなく、横に走り出す。 すると、シイナは自分の手を動かして、プラズマを動かす。
シイナのインストールしている魔法…電撃は、M1500の操作系の魔法。ちなみにシイナのM値は1600。電撃を自分の好きなように操る事ができる。しかし、炎や水などとかと違い、形を作るのは難しく、シイナはどちらかと言うと、電撃の性質みたいなものをいじって、使っている。
「ここまで、操作できるようになってんのかよ!」
「私はあんたと違って、“馬鹿”じゃないからね」
「な!!もうカチンときたね、カチンと!!火の玉!!」
サイは追いかけてくるプラズマを自分の火の玉をぶつけ、爆発させる。
プラズマも火の玉も互いに消え、「互いに睨みあう」
「今度は俺からだ!!火の玉!!」
サイの掛け声と共に再び火の玉が出現する。火の玉がだんだんと鳥の形になり、すごい速さでシイナに向かっていく。
シイナは慌てる事なく、ギリギリまでサイの操作してる炎の鳥をひきつけてから、横にステップして避ける。すると、炎の鳥はシイナの後ろにあった、大きな岩に当たり、(ボウッ)と音をたて消滅する。
「2人ともさすがにお互いの魔法は知り尽くしてるな…」
「このままじゃ、授業を終わっちゃうんじゃないか?」
「大丈夫、たぶん次で終わると思うぞ?」
ルークは次で終わると言った。しかし、俺が見る限りじゃどっちも結構上手く魔法使いこなしているように見え、次で終わる用には見えない。
そんな事を思っていると、サイが再び火の玉を出す。しかし今度は一つではなく、5つも出している。
「こんだけありゃ、避けられねぇだろ。行け!!」
サイの掛け声と共に、5つの火の玉が一気にシイナに向かって飛んでいく。さっきの炎の鳥ほどの速度はないが、操作しながら向かってくる5つの火の玉は避けるのは難しい。
対するシイナを見ると、何か電撃がシイナの手の平に圧縮されていくのが分かる。(バチバチ)と音を立て、サイに向けて電撃を放つ。火の玉はもうシイナの目の前まできている。しかし、シイナの放った電撃は最初の電撃より、数倍は早い速度でサイに向かっていく。
そして…。
ドオオン!
あ、死んだ…。
2人同時に、お互いの魔法を直撃して、砂煙が巻き起こる。
「2人とも大丈夫かな?」
俺の制服の袖の端を握って、2人が大丈夫か、心配そうにしているレナ。
そりゃそうだろ。あんなの殺し合いじゃないか。
そんな中、砂煙が風で流され、2人の姿が見えた。
2人共ちょこちょこ擦り傷やらがあるが、その場に座りこんでいるだけで、二ヤッと笑っていた。
あれって、なんか死なない程度に加減されてるのかな?非殺傷設定とかあるのかな? それにしても、喧嘩ばかりしてはいるが、2人ともやっぱり兄妹なんだな…。
そんな事を、俺は2人を見て思ったりしたのは内心だけにおいておこう。
そこで、ルークの判断で、勝負は引き分けとなった。
「これが、魔法バトルか…すごいな」
小さく呟く。その声はリリにしか聞えないぐらい、小さな声で呟いた。
いかがでしたか?魔法バトルは。
上手く表現できればもっと分かりやすいのですが、なかなか難しくて…。
クラスマッチの詳しい説明はちょこちょこします。
では次回……サブタイトル決めてないや。