高等部1年3組男子寮
喫茶店を出て、ソラは今学院の山の方にきていた。
「敷地内に山とか、森とかあるんだもんな、やっぱこの学院てすげぇよ」
山といっても木はなく、周りはすべて岩場だ。
なぜソラはこんな所にきているのかと言うと、レナが魔法の練習をしていたのを思い出し、ソラも練習しようと思ったのだが、チャイムが鳴り授業の邪魔にならないように山にきた。と言う事。
「よし、重力」
ソラが言う、神の力。 重力系に属する重力操作。
ソラは簡単なことでそのSランク魔法をインストールしたが、重力を操るとは本当に神の力のような物。
本来Sランク魔法は、そのような神の力と言ってもいいという程の能力ばかりだ。
勿論普通のAランク魔法やBランク魔法。魔法そのもの自体が、ソラから見ればすべて神の力と言っても大げさじゃではない。
その、神の力。もとい重力操作をつかい、目の前の人の頭程の石を対象に重力を軽くしてみる。
石は地球から重力がなくなり、無重力状態になった石は、と宙をさ迷うようにしてフワフワと浮いている。
「おお~できた、できた」
魔法を使うのはやはり楽しい。
ソラの興味は今、すべて魔法に向いている。 そうなれば色々試したくなるものだ。
今度は浮いている石の重力を、重くしてみる。
(ズシン)
地球の重力だけでも石はものすごい勢いで落ちてるのだが、それにソラが重力を加えるのだからとんでもなく危険だ。
そして、その落ちた石のおかげで地面の岩場は少し窪んでいる……
「あんなの頭にでも直撃したら…」
そう思えば、血の気がサーっとひいていき顔は青ざめる。
下手すれば、人の命など簡単に奪う事が出来てしまう代物。 魔法とはそういった物で、昔も今も戦争やらそういった人の命を奪う事の為にも使われている。
そのような事がないように、 子供のうちから魔法の使い方を学ばせるのがここアテナ学院。
「キール先生は上手く使えば色々とできるって言ってたな。そうだ!俺を対象に重力を変えてみよっと」
自分を対象に少しだけ重力を軽くしてみる。
となれば、当然先ほどの石のように無重力でないぶん浮きはしないが、少し地面を蹴れば軽く3~5mは跳べるだろう。
「おお!!なんか、体が軽くなったような気分だな」
ソラはゆっくりしゃがみ、軽くジャンプする。
軽くジャンプしただけなのに2m程跳びゆっくりと着地する。
「これは楽しいな」
そのまま近くの岩場をピョ~ンと飛び回るソラ。
「次はと、逆に重くしてみるか」
自分を対象に重力を重くする。そるとソラは膝をつき顔からは一気に汗が出て必死に持ちこたえている。
ソラの体重が、50㌔代だとすると変えたGにもよるが今は2倍になり100㌔近くになっている。
そんな自分の体重をいきなり支えるなんて事はソラには出来るわけもなく、それでも膝をついて必死に耐えてみる。
「やばい…重たい、体が動かない……」
10秒程耐えてからもう無理と思い、重力を普通に戻す。「プハー」とその場にあお向けになり空を見る。
額から汗がダラダラ、と流れているのからして、たった10秒でも相当きつかたのだろう。
だが、不思議と楽しかった。そんな気持ちがソラにはあった。
「魔法か。確かに、母さんなら元世界の事なんてどうでもいいように思うだろうな」
アキナの事を思いだしながら呟く。アキナは陽気な人で、母親というより友達みたいな感じの人で、父親の『○○○』が、ソラが3歳の時に亡くなってから女一人で育ててくれた。
アキナの仕事は給料は良く、生活は普通の家庭より少しいいぐらいだった。
そして、ソラの父親の『○○○』の事はまたいずれ……。
「母さん……う…うぅぅぅ」
声を殺して制服の袖で目を隠すようにして泣く。目からは溢れる涙はなかなか止まらない、。 いくらでも次々と出てくる。
何故突然と泣き出したのかは簡単だ。
何も知らない世界にたった一人できて、不安で、怖くて、自分の名前も分からなく、周りの人は優しくしてくれるが、やはりまだ16歳の少年だ。
別の国に一人おいて行かれてもまだ帰ることは可能だ。
だが、ここは異世界。 帰るにしてもどうすればいいのか何も分からない。 戻れない。
20分ほど泣き、ようやく涙が止まる。 目の周りは真っ赤になり、制服の袖は塗れている。ソラは泣いている中でこれからこの世界で生きていく事を決意した。勿論元の世界に帰る手がかりを探すのは変わらない。
「まずはこの世界の事を深く知る必要がある。主に魔法の事を」
それから2時間も魔法の練習をした。楽しくて仕方がなかったのだ、泣いた事でかなりスッキリしたのかもしれない。
そんな時、TWが「ピピピ」と鳴る。キールからのメールだ。
「えと、ここをこうして「ッピピ」お、見れた見れた」
まだ扱い慣れないTW。 文字が読めないのもあって、キールからある程度の事は教わっていた。
そして、キールからのメールの内容は、5時に寮に着て下さいと言うメッセージ。それと5時になるまで着てはならないとの事だ。
「なんだ?まぁいいか」
5時までに、と言うのが少し気になるがあまり気にしない事にするソラ。
TWで今の時間を確認する、今は4時26分だ。
丁度夕焼けの茜色に染まった空、学院の校舎。 元の世界となんら変らない。
「今から帰れば丁度いいかな?」
TWを内ポケットにいれて、岩山を後にした。
「到着と、今は4時56分か」
寮の扉の上にある時計を見て時間を確認する。 まだ少し5時までに時間があったため、適当に玄関の前で待つことにした。
そして、5時になり寮の扉を開ける。 そこには、15~16人程の制服を着た男子生徒とキールが居た。
それにしても、皆が皆それぞれに特徴はあるがそこそこかっこいい顔立ちをしている。 体格もしっかりしている奴や、少し背の低い女顔の奴。 髪がサイドでピキンと立っている不思議な者までいる。
この世界にはこんな奴ばかりがいるのか。と、思うぐらいのどこかのアイドルグループ並に皆がかっこよかった。 何度もいうようだが、とにかく顔立ちはいい連中。
そんな彼らに出迎えられて、戸惑うソラ。
「これは……」
ソラが聞こうとすると皆に「高等部1年3組男子寮にようこそ」と、笑顔で言われて歓迎される。 そのまま皆に無理矢理連れて行かれるソラ。
何も抵抗もできずに連れてこられた場所は、キールの部屋。
部屋は朝見た時と違い、色々と飾りが飾ってあり机や椅子も奥の方に寄せられていて、広くなっている。
そして、皆がそれぞれカーペットが敷かれている所に皆座る。
ソラも「ほらほら座った座った」と、実に楽しそうな表情の彼らに座らされる。
「えーと、今日からここにいるソラ君は、この寮で皆と一緒に1年間生活します。仲良くしてください、それでは、今からソラ君歓迎会をします」
皆の前に立ち、そう言うと、「イエーィ」と皆でソラに向かって、何か小さな花火のようにパンパンと魔法を使う。
1年3組の男子+担任からのソラの編入祝い。 もとい歓迎会。
5時まできてはいけなかったのは、飾りつけやら料理の準備などに手間取っていたらしい。
そして、自己紹介タイム。
「ソラ!俺はサイ!サイ・ウィルソン。サイって呼んでくれ! 部屋は15号室でお前の隣だな」
最初に自己紹介してきたのはサイ・ウィルソン。 茶髪を少しツンと立たせた髪形に、黄色の瞳。無駄に元気のいい奴。 クラスに一人はいるムードメイカー的な感じの普通にかっこいい顔立ち。
「同じく15号室のルーク・テリアルだ、ルークと呼んでくれ」
次に、ルーク・テリアル。
銀髪にリリと同じ紅い瞳。 身長はソラと同じ位のクールな好青年。 女子にモテモテ間違いなし!!と言った、このクラスで一番のイケメン。
そして、クールな性格に合っている銀髪は、質がよさそうでツヤツヤとしている。
その後も次々と自己紹介を終わらせて、皆床に置いてある豪華な食事にかぶりついていく。 皆そこそこかっこいいのに、その食欲と豪快な食べっぷりは流石、成長盛りの高校男児と言うべきだろうか?
そんな事を思いながら、ソラも少しづつ食べる。 そこにルークが隣に座り、話し掛けてきた。
「ソラはM値はどのくらいなんだ? ちなみに俺はM値1700だ」
手にもっている紙コップに入った、ジュースを飲み聞いてくる。
M値1700。 1年生にしたら高い方だ。
「俺? 俺はえと、2500…いや、2600だったと思う」
「な!!!そんなにあんのかよ!!お前何者!」
少し忘れかけていたが、残り400と言う事と重力操作のMを思い出して答えるソラ。
そこに、ルークとソラの間を割ってサイが入ってくる。 ソラは飲んでいたジュースを吹きそうになるが、ゴクンとの呑んでからむせる。
「ッゴホ!!ッゴホ!!」
「サイ、少し落ち着け」
「お、おう。 でもM値が2600だぜ?教師クラスのM値じゃねぇか!」
「確かに。それは俺も驚いた、ソラはどこから着たんだ?」
M値は生まれた土地や、元々M値が高い家系などで変ってきたりする。 だがそれは、あくまでの話。 やはり人それぞれにM値は才能のような物。
ルークの質問にソラは「ギクッ」となり、キールの方を向く。 キールは会話を聞いていたのか首を小さく横に振っていた。
「えーと…」
何にを言って誤魔化そうか迷っていると、キールからの助け舟がきた。
「彼は、学院長の故郷でもあるレイブンの街から着たんだよ、あそこの人はM値が高い人が多いからね、ソラ君はそのなかでも飛びぬけてM値が高かったから、学院長がこの学院に編入させたんだよ」
覚えておこうと頭の中に必死に記憶するソラ。
「へ~そうなんだ。そんなにM値が高いんなら結構な魔法を使うんだろ?」
「俺は主に重力系の重力操作ってのを使うんだ」
皆聞いた事がないのか、不思議そうな表情で近くの人同士話し合う。
「お前重力系って知ってるか?」「いんや?重力系なんて、聞いた事は無いな」
普通は強化系や移動系、操作系や召喚系などまだ他にもあるが、そのような物が一般的。
重力系のような、Sランク魔法はあまり知られていない。
そもそもSランク魔法をインストールしても、その力を上手く使いこなせる者はそうは居ない。 だからインストールする人は少なく、その存在はあまり知られていないと言う事だ。
しかし、軽々と重力操作を使っているソラは、この世界の人から見ればかなり凄い子供。
「ソラ君の重力系の魔法は一種類しかなくてね、Sランク魔法の一つでその名の通り重力を変える事ができるんだ」
キールの説明の後に皆がソラに向かって獣の用に群がってくる。
「おい!ソラ、お前Sランク魔法なんてずるいじゃねぇか」「他にはないのか?」「Sランク魔法ってすげぇ難しいんだろ?」「また今度見せてくれよ」
流石に、15~16人もの男子に詰め寄られては暑苦しいにも程がある。 それが例えイケメンのクラスメイトだとしても…
困り果てたソラの、そんな光景を見たキールは予想していたのかソラに「耳を防いでてね」と耳打ちして、魔法を発動させる。
「轟音爆発」
ボオオオオオン!!!
凄まじい爆音が部屋に響き、ソラに群がっていた連中は皆その場にうずくまり叫んでいる。
「うわああああ」「ギャアアアア!!」「耳が、耳がーー!」「先生!!こんな狭い部屋で使うなよ!!」
キールの使った魔法、轟音爆発はすごい音の爆発音が発生して、普通の人はその場にうずくまり少しの間動けなくなる程。 鼓膜などは破れはしないが、すごい音だ。しかし使用者と元から耳を塞いでいる人にはなんの効果も無い。 キールは騒がしかったり、生徒が暴れだした時の為にこの魔法をインストールしている。
ちなみに轟音爆発は音系に入る、M2000のSランク魔法。 音系はその音を聞いた人に安らぎや人の心に影響したりする魔法もある。勿論、轟音爆発のようななんらかのダメージを与える魔法もある、それが音系の魔法。
ちなみに、他の教員方も各自Sランク魔法をインストールしていて、完璧に使いこなしている。 でなけえば教員免許は取れない。
「うわ!?すごい魔法だな。 あれ?ルークも耳塞いでたんだ」
横にいるルークを見ると自分と同じように耳を塞いでおり、ゆっくりと手を耳から離す。
「ああ、先生の声聞こえてたからな。にしてもこいつらは…いいざまだな」
微かに「フッ」と短く笑う。それを見たソラは「あ、ははは」と顔を少しひき吊らせて笑う。
以外に心の中は黒いルーク。 冷静かつ、クールな性格と言ったソラのルークに対する印象が少し崩れかけた。
「はいはい皆さん転がってないで、そろそろ片付けますよ!!」
手を叩きながら言うキール。それに轟音爆発を食らった生徒達は次々と叫ぶ。
「先生がやっておいて何を言うんですか!!」「そうだよ!こんな時に使いやがって!!」「鬼!!悪魔!!」
そう言いながらも2分程すると皆起き上がり、片づけを始める。
ソラも片付けを手伝い、終わるとキールが、
「浴場には1、2、4、8号室の人が先に入ってくださいね、その後に9、10、11、15、16号室の人入ってください」
途中に抜けている部屋は、何でかと聞くと、空いてる部屋はイベントとかで使うらしい。
イベントと言う言葉に少し疑問に思ったが、そこはスルーするソラ。
「俺達は後のほうだな。部屋戻ろうぜ、ルーク」
ドアを開けて出て行くサイとルークに続いて後の人達もキールの部屋を出て行き、ソラもそれに続いて部屋を出た。
部屋に戻ってきたソラは、靴を脱ぎそのままベットに倒れこむ。
「フー疲れた。でも以外に楽しい奴ばかりだったな」
そんな事を思いながら天井を見てボーっとしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
(コンコン)
「ソラーー入っていいか?」
ノックの主はサイ。とりあえずベットから降りて、ドアの鍵を開ける。
「どうしたんだ?サイ、とルークも」
「いや、サイが暇だからソラの所に行こうって事になってな。迷惑だったか?」
「俺も暇だったから、迷惑より大歓迎だよ」
「そうか」
2人を部屋に入れて、この学院の事や二人の故郷なんかの話をしているとサイが
「なぁ、ソラのなんだっけ?まぁいいや。Sランク魔法見せてくれよ」
もう一つのベットで寝転がっていた体を起こして言う。
「ん?別にいいけど……重力」
目の前にあった空の紙コップを対象に発動して、潰して見せた。
「これがソラの魔法か。重力を変えて紙コップを潰したのか」
「うお!すげ、でもなんか地味だな」
「アハハハ。まだ上手くは、使えないんだ、ところで、2人の魔法は何?」
「俺は主に、M1500の、強化系の魔法で、体積変化の魔法をインストールしている。この剣のアクセサリーを・・体積変化」
ルークの持ってた剣のアクセサリーが大きくなり、ルークの身長と変わらないくらいの大剣になった。ルークの使う強化系は体積変化のほかに、物ではなく直接人の身体能力を強化したり、すごく柔らかい物をダイヤモンド並に固くしたりとそんな感じの魔法が多い。
「おお~~!!すげぇ…剣以外も変えれるのか?」
「物によるな・・うまく使えば、物ならなんでも変化させる事が出来るんじゃないか?あまりそういう事はしないからな。ちなみに、体積変化と、こんな感じに、反対の合言葉で小さくできる」
大剣が元の大きさのアクセサリーに戻り、ルークはポケットに入れる。そんなルークを見て、まるで張り合うようにサイも自分の魔法を見せてくる。
「俺のはすごいぜ!操作系魔法なんだけどよ、火を操る魔法なんだぜ?火の玉」
サイの手のひらに火の玉がボッと出てきて、空中を飛び回る。
「火の玉か…お化け屋敷とかに使えるな」
「俺のM値は1600でこの火を操る魔法はルークのと同じM1500なんだ。火の玉だけじゃないぜ?火を大きくしたり火を使って、アートだってできるんだぜ?」
そう言うとサイは手を右左上下に動かす。
すると、火の玉が小さな鳥の形になり部屋をまるで、意思のある本物の鳥の用に操る。そしてサイの手に触れた瞬間に消えた。
操作系の魔法は、サイの火の玉のようにただの火の玉を自在に操る事ができる。勿論火だけではなく、水や物を操作でき、人だって上級の操作魔法を使えば扱えてしまう。
「上手く使えたら、大きなドラゴンとかの形にして操ったら、かっこいいだろうな」
「ドラゴンか、それはいいな。よし!いつかでけぇ火のドラゴンを操ってやるぜ」
鼻の下をこすりながら笑う。そこにノックの音がする、キールが「浴場が空いたからどうぞ」と言ってドアを開ける。
そして、ソラ達は靴を履き部屋を出て、浴場へと行く……。
読んでいただきありがとうございます
以外に魔法を考えるのって難しいんですよね、でも結構アイデアは紙に書いてあるんです、後は誰がどの魔法を使うか・・・
後誤字脱字が目立つかもしれません。
感想、アドバイスお待ちしております♪