重力の使い方
「でさぁ、その店員がカードの残高を見てなんかすげぇ驚いてたんだ」
「ちなみに、お前の持ってるカードって何色なんだ?」
「ん?真っ黒。ただの真っ黒なプレートみたいな奴」
「な!?……そりゃ驚くな、普通」
今は教室内の、朝のHR前。
そして今話しているのは、前の席のルーク。 内容な聞いての通り、昨日の日常品の買出しの事だ。 にしてもルークまで何をそんなに驚いてるんだ? そんなにすごいのか?あのカード。
「それ、絶対になくすなよ? もし誰かに拾われでもしたらここらいったいの店が無くなる……」
ちょ!?どんだけ危険なんですか、俺の持ってるカードは! 店がなくなるってあれか、潰れるって事か? それとももっとやばい事なのか!?
あのカードにはどれだけの大金が…… ジュルリ。 おっと、ついよだれが。
バァン!! ルークと普通に会話をしていると、いきなり教室のドアが思い切り開かれた。 にしてもそんなに勢いよく開けるとドアはずれるぞ。
「この3組、Fチームの一人。ソラって奴は誰!!」
「おい、あれってリナ・レインじゃないのか?」
「う、うん。3組になにか用かしら?」
「ソラに用があるらしいな」
リナの出現に、クラスがザワザワとどよめく。 俺もその一人だ。
それにしてもなんだ、人探しか。 妙に苛立ってますな。そんなに怖い顔してるとクラスの皆がビクッ、てなってるじゃないですか。綺麗な顔が台無しですよ?
「おい、ソラ。お呼びだぞ」
「ほぇ?誰がお呼びなんだ?」
ん~、サイか、シイナか? それともクラスリーダーこと、委員長さんかな?
「貴方がソラね!!」
「ん?」
俺がルークから視線を外し、真横に着ていたその高い声の主に顔を向ける。 そこには、さっきまで凄まじい怒りの表情をして入ってきた女の子が、なにか驚いたように瞬きをを凄い速さでパチクリさせていた。
あれ?でも、この子どっかで見覚えがあるな。誰だったかな~。
「あ、貴方。階段で……」
「えーと。階段? あ!!思い出した!!」
そうだよ。この子が階段から落ちて、そのまま俺も巻き添えになった時の子だよ!!
ん?にしてもこの子は俺に何の用だ?
「リナ、ソラの事知ってるの?」
騒がしかったのか、シイナとレナ、サイが寄ってきた。 他のクラスメイトも皆こちらに注目している。
ちょっと恥ずかしいな。
「え、ええ。ちょっとね。 でもあの時はいい人だって思ってたけど、私の勘違いだったようね」
「ちょっと待ってリナ!!ソラは――」
シイナが何か言おうとしたが、リナと呼ばれた金髪の美少女はシイナの両手を握り告白でもしそうな勢いで顔を近づける。
百合なのか?百合なのか?
「大丈夫よシイナ。昨日貴方が相談してくれた事、感謝してるわ。 この男が私の妹に手を出して、そのせいでレナは色々と嫌な思いをしてたのよね。うんうん、分かってるわ。私がこの男をこらしめてやるから!!」
なんだこれ……
どういう展開ですか。今の状況が分かる方がいたら俺と代わってくれませんか?
なんで俺がこの人の妹に手をださなきゃならんのだ。 俺生まれて一度も女に手をだした事なんてないんですが。ていうか女の子の友達すら居なかったぞ!あ、小学校の時は何人か居たな。
やば、なんか泣けてきた。
「リナ、それどういう事! 私ソラ君になにもされてないよ!」
「レナ……あんた。分かったわ、この男に脅迫されてるのね!どれだけ私の妹を!!!」
ギロ! 睨まれた。怖いですって、まじで。
それより、この人の頭の中はどうなっているのか一度見てみたいもんだな。
キーンコーンカーンコーン
そして、なんとも言えないタイミングでチャイムが鳴った。 謎の美少女は散々訳の分からない事をいいたおした後に、「次の休み時間覚えてないさい!」とだけ言ってスタスタと教室を出て行ってしまった。
なんと言うか、通り雨のようにどしゃ降りになったと思えばすぐにどこかに言ってしまう。俺はかなりビショビショに濡れましたがね……。
散々無茶苦茶言われて、俺殆ど喋ってないぞ。ルークやサイにしては一言もだ。 なんだったんだいったい。
今日も午前中はすべてクラスマッチに備えての事故練習。てな別けで、『次の休み時間覚えてなさい!』と言われたが、すいませ~ん。その約束?無理ですね、はい。
しかし違うのは、岩山ではないと言う事。
ちなみに俺達は今ものすんごい広さの練習場とか言う場所のきている。 どのくらい広いって?それは東京ドーム2個分ぐらいかな?しかも天井がオープンするんだぜ?どうだ、凄いだろ!! しかもこれが他にもまだこの学院内にあるのだからすげぇよ。何度だって言ってやる『すげぇよ!!』
「おい、ソラ。リナになんかしたのか?」
「リナ?あー、さっきの。別になにかした覚えはないんだがな、妹に手をだしたとこ言ってたな」
「お前レナに手だしたのか!?」
「レナ?……嘘!?もしかしてさっきのレナの姉!?」
「ああ」
確かに言われてみれば、めっちゃ似てたな。今頃気づくとは、俺もまだまだだな。なにがまだまだかは、わかんないけど。
でも、それならなおさら意味が分からない。レナに手だしたのか?俺。 いやいや、そんな別けないじゃないか。そもそもそんな度胸はないし。
「ん~。レナには何もしてないとは思うんだが」
「そうなのか?ならなにかの勘違いか」
「でも何で、俺が疑われたんだ?」
「俺が分かる別けないじゃないか」
それもそうか。まぁ何かの誤解なら別に気にしなくていいかな。
そこに、後の3人がようやく場所別けから帰ってきた。
「今回は、Bチームと合同で練習する事になった。で、場所はあっちのCルーム」
練習場は、最初はなんにもないだだっ広い所だったが、今はなにやらあちこちに壁で区切られた九つのルームに別けられている。
なんでも、この練習所はプログラムされた設定のなかから状況に応じて、立体映像を映し出すとかなんとか。
それに実態があるように、なにかしらの魔法を皆に使うらしい。 ほんと、なんでもありの世界です。
「よー、ソラ。あのリナ・レインに喧嘩売られたんだって?」
「そうそう、なんでもレナに手だしたらしいな」
Bチームの男子、名前忘れちゃった。まぁ男子AとBがニヤニヤしながらさっきの事を見てたのか、その話題で俺をからかってる。
そんな男子AとBに、レナが真っ赤な顔でプンプンと怒りながら割って入ってきた。 なにをそんなに怒ってるんだ?
「ソラ君は私にはなにもしてません!!だからリナの勘違いです!!」
「そ、そうなのか?なーんだつまんねぇ。もう付き合ってんのかと思ったぜ」
「つ、つつつ付き合ってなんかいません!!」
まぁ、そうなんだけどさ。流石に今のは効いたな……なんか、こう胸をえぐられる感じ?
あれだけ思いっきり大声で叫ばなくても。
やっぱり、昨日の喫茶店での様子からして、俺を軽蔑でもしてんのかな?まぁ慣れてるから別にいいんだけどね、でもやっぱりこの先やっぱり気まずいな。
「まぁまぁ、落ち着けよレナ」
「サイの言うとおり、そんなに大声で叫ばなくても。他の皆にも聞こえてるわよ?」
はっ! と、その事に気がついて恥ずかしくなったのか、「うゥ~」と言って縮こまるレナ。まぁ皆にクスクス笑われたらそうなるわな。 実際話しのもとである俺も恥ずかしいし。
「ソラもリナには私からちゃんと誤解だって話しておくから」
「ああ、なんかよく分かんないけどお願い」
「うん。 もともと私のせいだし」
「ん?なんか言ったか?」
「え、いや別に……」
後の方が聞こえなかったんだが、本人が言ってるんだから気にしないでいいか。 にしても妹思いのいい姉がいたものだ。リナさんだっけ?ちょっと暴走ぎみですが。
「よし、んじゃぁまずはソラ君の実力も見たいからね。ソラ君VSケイルで簡単な魔法バトルをやってみて?あ、判定機能はお互いONにしておいてね」
あ、そう言えばケイルって名前だったっけ?あの男子Aは。
にしてもいきなり俺がやるんですか、別にいいけどまだ魔法に慣れてないんだよな俺。
とかいいつつも、TWの判定機能をONに設定する。
やり方は昨日サイが教えてくれてたから覚えてた。
「よーしソラ!!本気で行くぞ!!」
あれ?Bチームのチームリーダ、名前まだ聞いてなかった。まぁその人が軽くって言ってなかったか? 俺本気だされでもしたら一瞬でゴミになっちゃいますよ!あれか?俺がSランク魔法をインストールしてる=めちゃ強い。とか思ってるんですか!男子A…じゃなくてケイルさん。
「お、お手柔らかに」
「なにがお手柔らかにだ!!本気だって言ってんだろ!!」
いやね、実際にアニメや魔法とかだと物凄いかっこいいんだよ?魔法って。ほら、なんかロリロリな少女が『え~い☆☆☆』とか言って、使ってますけど実際はめちゃ怖いんですよ。
だって普通、火の玉に襲われるとか、めちゃでかい剣でやられるとかほんと怖いんですよ!
俺結構がんばってる方だと思う。 いくら神の力(勝手に言ってるだけ)を使えるからって、そんな簡単に慣れないよ。
「それじゃぁ始め!!」
俺と、ケイル以外は皆隅っこの方で観戦している。 あ、今レナと目合ったのになんか背けられた。やっぱ嫌われてるのか。 昨日はそうでもなかったんだけどなぁ。
とか考えてるうちに、ケイルはなんかもの凄くでかい黒くカラーリングされた銃を膝を地面につけ構えてている。更にスコープから俺を狙ってるんですけど!……どこからそんなの出したんだよおい!てかそれは流石に怪我じゃすまないだろ。
ほら、やっぱり魔法って怖いでしょ? 銃突きつけられるとかどこの映画だよ。
そして、そのサングラスはなに? いや、まぁめっちゃ似合ってるけどね。
ケイルの魔法は、召喚系の狙撃銃。召喚系には、2種類ある。一つはケイルのように剣やら銃。杖と言った物の召喚。
そしてもう一つは、力を持った獣の召喚。
ケイルが使用している合言葉はスナイプ。M1800のAランク魔法
名の通り、狙撃銃。自分の魔力を元に、弾丸を撃ち出す。
俺が目が飛び出てるのではないかと言うぐらいに、驚いているなかケイルは無言で ガシャン!!と、手前のレバーを引いて弾を装填する。
ドォン!!
凄まじい衝撃音とともに、実弾ではない魔力の塊が俺に向かって飛んでくる。
「うお!」
あまりに突然だったため、その場から一歩も動かなかった。いや、動けなかった。
だが今は動かなくて正解だった。
ギリギリ顔の横を物凄い風をきる音をたて、通りすぎたのだ。
「ちっ、狙いがそれたか。まぁ今のでだいたいの誤差は分かった。次は外さねぇ」
ガシャン!!
ってちょっと待てぃ!ケイルさん、あんたキャラ変ってますよ。 あの、車のハンドルとか握るとキャラが変わるあれとかですか?
なんだよその、狙った獲物は逃がさねぇ的な鋭い眼は。 まじで怖いは!!あんたはどこかの殺し屋かなにかなのかよ。まぁ殺し屋にしては、髪の色が真っ赤ってのはいいのか悪いのか……
と、散々心の中ではつっこんでいるが俺は冷や汗ダラダラで今にも逃げ出したい気分だ。
そしてそんな俺の事情はお構いなしと言うように、ケイルは2発目を撃ってくる。
「重力!!!」
俺に向かって飛んでくる直系5cmといった所の、物凄いでかさの魔力弾が俺の額目掛けて飛んでくるが、それを凄い大声で重力を発生させて、地に落とす。
僅か残り1m手前に、重力の重みで地面に落ちた魔力弾は バァン!! ともの凄い音ともに、消えた。
てか、まじでやばかった。あんなの当たったら洒落になんねぇよ。
「やるなソラ。だが次はどうだ?」
テンションが上がってきたケイルは、レバーを3回もガシャン、ガシャン、ガシャンと引いて行く。 サングラスで表情は分かりづらいが口の動きで、物凄く楽しいです!と語ている。
「ちょっ、まっ――」
ドォン!!
俺の言葉は銃声によってかき消されて、彼には届いていなかった。
そして、飛んでくる弾丸を先程と同じように重力で地面に叩きつける。
「まだだぜ?」
「なっ!?反則だろ!」
なんと、ケイルは連続で2発、3発目と撃ってきやがった。
流石に二つ同時には重力では落とせない。 逃げるように、横に走りだしてなんとか避ける。
「ピュ~♪ ますますお前を仕留めたくなってきたぜ」
仕留める!?
あいつ今仕留めるとか言ったぞ。おい、ルーク、サイ。皆も聞いただろ? あいつなんかやばいって。
皆に視線向けるが、一斉に視線を外された。 ルークなんてめぇ瞑っちゃってるよ。 冗談じゃねぇ。あんなのくらってたまるかよ!
(ガシャン×5)
再度レバーを引くケイル。
どうにかしないと俺の命がやばい。
「これならどうだ?」
ドバァン!!
さっきと少し発射音が変っている気がするな。それに少しだが遅くなってる。
これならちょっと横に避けるだけで十分だろ。 が、やはりただ遅いと言う訳ではなかった。
「え!!?曲がった!!」
そう。弾丸は途中でありえない事に、その角度を変えたのだ。 だが、それは俺の避けた右側にではなく左側に曲がった。
曲がったといっても、少し射角が左側に角度を変えただけなのだが、それでも途中で魔力弾の軌道を変えられては避けるのが更にきびしくなる。
「逆だったか。まぁいい。さぁ次はどっちに避ける?」
(あーもう!!)
なんでこんなスリリングを体験しなくちゃ行けないんだよ。
ルークとサイとやった時は楽しかったけど、これは無理。 ケイルの持ってるあのリアルすぎる、てか本物の銃で狙われれば誰だって怖いよ。
そして弾の射角を変えた次は俺の心臓部分になにか赤いレーザーみたいのが、ケイルの銃から狙われてるんだけども、これってまさかとは思うんですけど……
「さっきまではある程度で狙って撃ったが、次からは確実に……」
そこで黙り込むな。
どうする、本気でやばいよあれ。
俺の使える魔法は重力を好きなように変えたりできる事。 そう、この重力ってのがいまいち理解できてないんだ。 今までは重くしたり、軽くしたりばっかりだが、他にも何か出来るはずだ。元々重力なんて、科学ではもっと奥が深い物なんだ。だからそれを操れる俺にはまだ可能性は十分にある。 なんたって神の力(勝手に言ってるだけ)なんだから。
この事を1.8秒で考える。そして辿りついた答えは……
「次いくぜぇ!!」
ドバァン!!
俺に向かってくる魔力弾は、俺の1m手前でいきなり消滅した。
「なっ!?何をした」
スコープから目を外し、その両の目を大きく開いて俺を見る。 その表情はまるで、初めてなにかを見た時のまだ幼い赤ん坊がする表情のそれだ。
そして、何故俺に当たる前に魔力弾が消滅したのかと聞かれれば、そんな事は簡単だ。
「俺自身を地球と考えた」
「は?」
まぁ、普通そうなるよな。 だってただの電波だもんこれじゃぁ。そんなケイルに、俺の考えた答えを説明する。
「まぁ、なんだ。重力ってそもそも地球にある力だろ?だからそれを操れる俺自身は、地球」
実際は本当の事なのかは分からない。まぁそりゃそうか。普通の高校生が重力の複雑な万有引力やら、遠心力なんてものの天文学的な事が分かる訳がない。
「えーと、つまりなんかこう、重力って言うのかな?まぁそんなんで弾いた。そしたらなんか消えた」
「なんだよそれ。色んな意味で反則じゃないか!!」
あんたに言われたくないわ。 そんな危なっかしいもんをバンバン撃ちやがって。 反則と言われようが、実際になんか俺に対する斥力だっけか? 地球の重力で引力を働かせてるんなら、斥力ももしかしたらできるかな?って思い、魔力弾を弾くイメージをしたら消滅したんだから仕方ないじゃないか。
よく分かんないけどとにかく出来たの!!
「弾くのは分かった。だがどうして消滅したんだ?」
「分からん。あれじゃない?なんか俺の力が強すぎたとか……」
「ふざけるな!それじゃぁ俺に勝ち目なんてねぇじゃねぇか!」
おいおい、簡単に言ってくれますね。これ使うのって結構な賭けなんだぞ。
もし俺が上手く魔法使えなかったら、お前のその凶悪な銃で殺られんだぞ。まぁもうなんとなくコツは掴んだけどけどね。一回使えばなんとなくではあるが、分かるんだよなぁ。
やべ、魔法楽しい。
その後は何度ライフルで撃っても俺に勝てないと判断したのか、TWの判定機能が勝敗を認める前にケイルが降参した。 にしても、もしかして重力を自在に操るのって実は俺が思ってた以上にすごいんじゃ……
でも勝ち目がない!!とか言ってたわりに、ケイルも意外に粘ってたな。でも流石に魔法の相性が悪かったからな。
そして、ケイルの降参と同時に、なんともこれまたタイミング良く一時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。 ほんと、狙ってんじゃないのか?と思うぐらいにタイミング良すぎだった。
ども。
重力については作者の勝手な妄想です。
それっぽい事言ってますが、基礎理論やらなんやらとか言われても、なんのこっちゃですので深く追求しないでください。
誤字脱字がありましたら気軽に教えてください。
では次回をお楽しみに♪