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第6話 腹いせに歌いますわ!!

 フリードの持って来てくれた服は、簡単に着れる膝丈迄のワンピースだった。それから彼は、カタリナの後ろに回り、身につけていた装飾品をすべて取り外してマジックボックスの中に押し込んだ。


「こんな豪華なものを身に着けておられたら、追剥か、強盗にあいますよ」


「この髪も目立ちますね。編み込んでしまいましょう」


 男ながら、器用にカタリナの金髪の髪を複雑に編み込んで、終いには後ろで三つ編みを作ってリボンで飾ってくれた。


「どうです? ちい姫」


 マジックボックスから手鏡を出して、カタリナに見せてくれた。

 カタリナは驚きだ。

 ソフィーよりも上手である。

 それを告げると、彼には姉が三人妹が一人の五人兄弟らしい。

 城に出仕するまで、姉たちの下僕だったそうだ。


 そんな事を話していたら、お腹が「グ~!!」となり、夜の食事の時間が近付いていることを知った。

 そして、その時になって初めてカタリナは、レジーナとクレッグの二人がいないことに気付くのである。


「フリード!! お姉様と黒騎士がいませんわ!!」


「ちい姫!! 夜のお散歩でしょう……。直に帰って来られます。さぁ、夕餉を食べてお待ちしましょう」


 カタリナの前に、豆のスープと白パンが運ばれてきた。


「さぁ、ちい姫。お食べください」


 お腹の空いていたカタリナは、何の抵抗もなくスープを飲んだ。


<おい!! カタリナ!! スープに眠り薬が入ってるぞ!!>


 ポポロンが、一口目に忠告してきた……。それでも食事をやめないカタリナ。


「毒の浄化はあなたの仕事ですわ。ポポロン。あたくしは、お腹が空いていますもの。あ~ お腹いっぱい!!」


<仕方ないなぁ~~>


 ポポロンは、そういうとカタリナの身体が急に銀色に光った。濁った小さな茶色の光が銀色の光から弾き飛ばされた。


 目撃した四人の騎士は、目が飛び出すほど驚いた。


「お姉様と黒騎士はどこ!?」


 カタリナは、四人の騎士に激しく詰め寄った。


「え~~と~」


 フリードも歯切れが悪い。


「言いなさい!! ですわ!! 言わないと……」


「言わないと……?」


 四人の騎士は、ゴクリと唾を飲み込みながら言った。


「歌いますわよ」


 カタリナは、思い切りの笑顔である。

 騎士たちは顎が外れそうになった。

 王宮に伝わるちい姫の歌にまつわる数々の珍事


 たった今、カタリナの魔法の片鱗を目の前にしたばっかりである。


「あたくしに、眠り薬を仕込んでまでお姉様は黒騎士とどこに行ったのです?」


 一番年下の騎士が口を開いた。


「し……神殿です……婚姻の誓いをしに……」


「まあ!! 駄目ですわ!! あたくし、黒騎士のことを認めていませんもの!!」


 カタリナは、街の方を向いて歌い出した。

 讃美歌17番『春雷』をである。

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