第2話 望まぬ結婚
前日__
「「お兄様!! 私が結婚ですって!? しかも相手は、あのロイル家の子息~~!!」」
「どこがあのなのかは知らぬが、わたしとしてもお前には近くにいて欲しいと思っている」
「ロイル家と言えば、神の直系だか威張り腐ってる連中ですね? 顔がちょっと良いだけじゃないですか。それから、魔法が使えるからって、良い気にならないでもらいたいです。私は、自分よりも弱い者のところになど嫁ぎません」
レジーナは、颯爽とレイピアを抜いた。
「これでも弓でもです」
ラルフォンは、「はぁ~」と大きな溜息をつく。
聖地、銀の森に隣接しているこの国は、歴史は浅いが歴代の王が皆、政に長けていたため民には慕われていた。
東方の街道の終点地として栄えたのだった。
特に、父のゼフラードは、身目麗しく不思議な力を持っていた。
何年たっても老いることもなく、若々しかったことから神の再来ではないかという噂もあったほどだ。
決して、魔法の力をを使うことなく政治を行い、人々を導いてきた。
まだまだ執政を取ってくれると安心してたが、五年前、急遽ラルフォンに王位を譲ったのである。さっさと郊外に隠居してしまった。
気がついて見ると、ラルフォンは30歳に手が届きそうであり、二人の妹は23歳に13歳だった。
そして、ラルフォンの結婚話が持ち上がった。
リーフス王国の姫で年は21歳!! レジーナよりも年下だったのだ。
それから、ラルフォンの結婚話はいったん、白紙に戻し、レジーナの輿入れ先を探すことを先にした。
今までレジーナに、見合い話が無かったかといえば嘘になる。
金髪とコバルトブルーの瞳で、父譲りの端正な顔立ちは、見合い用の肖像画がプレミア付きで何処かの王国が引き取ったという話だ。
婚礼の使者も、周りの国から十代の頃から来ていた。
難癖をつけ、婚礼の使者に勝負を挑み、バッサバッサとなぎ倒して、この年になるまで許婚の一人も出来なかったのは、自分にも責任があると思うラルフォンである。
レジーナもカタリナも可愛くて仕方がないのだ。
男勝りな、レジーナも、おしゃまなカタリナも。
「とにかく、見合いは明日だ。シグリット夫人に支度を頼んであるから明日に備えなさい」
「お兄様!! 嫌です!! お断りになって下さい!!」
「駄目だ!! この縁談には、神殿も一枚絡んでいる。わたしだけではどうにもならんよ」
ラルフォンは、レジーナの逃げ道を先に塞いでおいた。
神殿と聞いて、レジーナは歯ぎしりをした。
相手は、いわゆる神の使いなのだ。下手なことは出来ない。
そこにものすごい爆発音が轟いた。
ラルフォンと、レジーナが中庭をテラスから見ると、花壇に大きな穴ができていた。
「「カタリナ!! お前か!!」」
ドレスを泥だらけにした、金髪巻き毛の女の子がラルフォンの視界の向こうにいた。