第17話 オアシスを造りましたわ
日が上ってきたので、砂の山の小陰で休憩をすることになった。
カタリナは、たくましくまだ歌っていた。
「カタリナ、いい加減にしないと。喉を痛めるわよ」
レジ-ナが心配して言っても、カタリナは首をふるばかりでやめる気配はいっこうにない。
とうとう、クレッグとレジ-ナは、疲れていたので、自分達の休憩を最優先にして休むことにした。
砂を少し掘って、身体をそれぞれ横にした。
クレッグが目を覚ますと、とんでもないことが目の前で起こっていた。
先ず、あんなに沢山あった砂が何処かに吹き飛ばされていた。
それどころか、緑の生い茂る雑草が生い茂っていた。
何処からともなく、鳥が飛んできてフンをすると、そこから見る見るうちに木が生い茂り、南国のフルーツの実がなったのである。
木の成長も、緑の増え方も肉眼で分かるほどの速さだ。
レジーナも、顔に朝露がかかって目が覚めた。
「あれ? 砂漠にいたはず……?」
見れば、カタリナが鳥を相手に嬉しそうにまだ歌っているではないか。
「大姫……」
「クレッグ、これは、カタリナの魔法の力なの?」
「そうとしか思えないです! 危険です!! 直ぐにちい姫を隠さなければ!!」
「クレッグ?」
クレッグは、急に青くなってカタリナに歌うのを禁じた。
「何故ですの? 歌っても良いと言ったのはクレッグですわ!」
「それよりこの状態を見るんだ!! ここは、俺たちの休憩した砂漠か?」
「木を生やしても良いと言ったのはクレッグですわ」
「《《オアシス》》を造れとは言ってない!! 砂漠に急にオアシスが出来たとなったら、周りのオアシスだって黙っていないだろう。神殿だって乗り出してくるだろうし。そうなった時にオアシス間で、奪い合いになるのはちい姫の力だ!!」
カタリナには、自分が歌って、砂漠にオアシスが造ってしまったことの意味に気が付いていなかった。
今は、力がしている各オアシスだが、水に飢えているのは常のことだ。そこに、オアシスを造るだけの大地の魔法使いが現れたとなれば、自分たちの領地拡大のためにもカタリナの力は、狙われるだろう。
クレッグは、これを危惧しているのだ。
オアシスを馬で引いて、一周してきたレジーナが戻って来た。
「小振りだけど、水源も安定しているし、土も肥えてるわ。私たちが隠れて住むには良いところよ」
「大姫!! そのことよりもちい姫を急ぎ隠さねば!!」
「大丈夫よ、水があれば帰せるわ。あなたも、ここまで私たちの駆け落ちに付き合ったのよ? 満足でしょ?」
クレッグの心配をレジーナは、微笑んで片目を閉じて黙らせて、カタリナに言った。
「あたくしも、ここにいてはいけませんか?」
「クレッグが言ってるでしょう? あなたがいると、私たちまで危険になるのよ」
そういうとレジーナは、カタリナを伴って新しいオアシスの奥にある泉に向かって歩き始めた。
「お姉様……このオアシスには結界を張っておきます。招かれた者しか来れないように」
「あら、ありがとう。助かるわ。ついでに、お兄様とも話をしたわ。お兄様も、もうあなたの力にはお手上げのようだから、相応のところへ送るわね?」
カタリナは首を傾げる。思い当たるところが無かったのだ。
やがて、レジーナは泉で水の路を魔法で開き、水面が魔法陣のように波紋を描いている中へカタリナに飛び込むよう言った。
「元気でね」
「お姉様~~!!」




