第13話 レジーナの力
サントスの宿を拠点にして、クレッグたちは西域の情勢を探った。
その間、カタリナはレジーナと共に宿に留まった。
初めのうちは、ヴィスティンでの恐怖で、大人しくしていたカタリナだが、日にちが経ってくると、だんだん元のカタリナに戻って行き、サントスの街へ繰り出していくようになったのである。
「もぉ~!! いい加減にしなさい!!カタリナ」
「何を怒ってますの? お姉様」
「大人しく宿にいなさい。カタリナが何かやらかしそうで、冷や冷やしてるのよ」
カタリナは屈託なく笑う。
「考え過ぎですわ。お姉様。あたくし、何もしてませんわ」
「ええ……今のところね……」
レジーナは嫌な予感がしていた。
(きっと、何かが起こるだろう……。外に出しては駄目だ)
(気休めだけど、目晦ましの術でもかけておこうかしら。カタリナの魔力は半端が無いから。今でもヴィスティンの魔法使いが捜していたら面倒だし……)
レジーナは、自分のレイピアを抜いて、剣先に宿らせた水の精霊に命じた。
『オンディーヌ、カタリナの気配をあなたの力で小さくして頂だい』
<大姫、ちい姫の魔力は強い……。きっと誰より……。私に出来るのはほんの些細な事です。ちい姫は、早くビルラードに帰るか、このサントスに残すことをお勧めします>
レジーナは、レイピアの剣先をジッと見つめてしまった。
カタリナと違って、魔法が得意ではないレジーナにも加護精霊がいた。
男勝りに剣が欲しいとねだって、父から送られたレイピアに水の精霊のオンディーヌがいたのである。
それ以来、レジーナは、水の魔法が徐々に使えるようになった。
が、オンディーヌの方から、話しかけてきたのは初めてである。
『でも、お願いよ』
<承知しました>
レイピアから、一滴の水がしたたり落ちて、寝ているカタリナの全身を包んだ。
レジーナもクレッグと共に行動がしたかった。
でも、そうすれば間違えなくカタリナもついて来るだろう……
レジーナたちの行き場所は決まっていた。
でもカタリナは、何処までついて来る気なのだろうか?
そんな事を考えていたら、カタリナが目を覚まして傍らに立っていた。
「お姉様? 眠れないのですか?」
「ちょっと疲れてるだけよ。あなたのお守りばかりでね」
「まぁ、ひどいですわ!!」
カタリナは、風船のように顔を膨らませた。
宿屋の居間に降りて、二人でお茶を飲むことにした。
お茶は、レジーナが茶器に入れてカタリナが時刻を見計らって注いだ。
そこに、夜のサントスの街の様子を探っていたフリードが帰って来た。
「ここは、ディナーレよりも北だから、冷えますね~」
「ご苦労様。フリード、香草茶だけど飲む?ぐっすり眠れてよ」
レジーナにと思ってよそったお茶を渡されてしまったので、カタリナは
怒れてしまった。彼のカップを取り上げ、代わりに少し濃いお茶の入ったカップを「フリードにはこちらのお茶をどうぞ」と言って渡したのである。
翌日フリードは、夜になっても目覚めなかった。




