勢いと本気の狭間で-早乙女玲奈
―テンションの裏にある本音
日曜日の朝。
待ち合わせ場所に現れた早乙女玲奈は、いつも以上に明るく、テンション高めだった。
「おっはよー! 蓮くん、早起きえらいじゃん!」
「お前もな」
「当然でしょ? 今日って――デート、だし!」
いつもよりギャルっぽい口調が妙に板についていたが、蓮は気づいていた。
それは本当の玲奈ではなく、“ちょっとだけ頑張ってる”玲奈だった。
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ふたりが向かったのは、郊外にある小さな遊園地。
観覧車やレトロなアトラクションが並び、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。
「うわっ、観覧車ある! テンション上がるー!」
「好きなのか?」
「うん、超好き! ……って言っとかないと、緊張で死にそうだから!」
笑いながら、でも少しだけ早足になる玲奈の背中が、なんだか頼りなく見えた。
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ジェットコースターで叫び、
射的で負けて悔しがり、
屋台のポテトを分け合って。
一つひとつのイベントに全力で盛り上がる彼女は、
傍目にはいつも通り――いや、いつも以上に明るく見えた。
けれど、観覧車に乗り込んだあと。
てっぺんが近づく頃には、少しずつそのテンションが静かに落ち着いていった。
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「……ねえ、蓮くん」
「ん?」
「今日、めっちゃテンション高かったでしょ?」
「うん。ちょっとびっくりした」
「……あれね、全部、緊張のせい」
玲奈はふっと笑った。
今までの笑い声とは違う、ほんの少し苦笑まじりの微笑みだった。
「ずっと迷ってたんだけど、やっぱちゃんと伝えるって決めたから。……だから、言うね」
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「私、蓮くんのことが好き」
声は大きくなかったけれど、
今までのどんなセリフよりも、まっすぐだった。
「冗談じゃないよ。本気。……こういうときこそ、ちゃんと伝えたくて」
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観覧車を降りる頃には、夕焼けが園内を包んでいた。
出口に向かう途中。
玲奈は、歩く足をふと止める。
「……今日の私、うるさすぎたかもって反省してる」
「でもね、あれでもすっごい頑張ってた」
「だから、次は――もうちょっと自然体で会いにいく。……いい?」
「もちろん」
蓮の返事を聞いて、玲奈は少し目を細めた。
「……じゃあ次は、“いつもの私”で好きって言うから」
軽く手を振って歩き出すその背中には、
今日いちばん自然な笑みが浮かんでいた。
当初玲奈は総合コースの設定でしたが、いつの間にか進学コースに混じっていました…。
元より進学コースという設定にして一部の話を修正しました。
大変失礼いたしました。




