聖女たちの思い
【姫川 咲の心情】
教室の窓際。春の風に揺れるカーテンの隙間から、咲は何とはなしに空を見上げていた。
(……私、さっき志賀さんに、ちょっときつく接しちゃったかも)
図書室での一瞬の会話。あのとき、自分が彼女に向けた視線や口調が思い返される。
(ああもう、私ってば……大人気ない)
心の奥がもやっとして、少しだけ自己嫌悪。
でも――
(……それでも、譲れない)
胸に手を当てて、そっと目を閉じる。
(あの子が先輩で、中学からの知り合いでも。……私には、今がある)
咲はゆっくりと深呼吸した。
(朝霧くんと、ここで過ごしてきた時間に、嘘はないから)
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【黒瀬 結愛の心情】
図書委員の活動を終えて、教室へ戻る途中の廊下。
(……志賀さん、いい子だった)
蔵書整理の合間に少しだけ話した、好きな作家のこと。物静かで、でも話してみると芯があって、言葉の選び方も丁寧で――
(正直、ちょっと好感、持っちゃったかも)
でも、それでも。
(だからこそ、負けない)
黒瀬は、静かに視線を前へ向けた。
(私だって、“ありがとう”を言いたかった人に、ちゃんと届いたから)
彼女の目には、確かな意志が宿っていた。
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【早乙女 玲奈の心情】
下校の帰り道。スニーカーで舗道を蹴るように歩きながら、玲奈は何度も同じ言葉を頭の中で繰り返していた。
(なんか、増えてない? 朝霧くんのことを“気になる子”)
でも――
(ちょっと……面白くなってきた)
誰かが狙ってる、って思うと、逆に燃えてくる。
恋のライバルが増えて、混戦模様になるなんて――
(ラブコメじゃん!)
思わず口元がほころぶ。
(でも、負けたくないし……私も、頑張る)
制服のポケットに手を入れて、小さく拳を握る。
(絶対に、“好き”を諦めない)
その歩みは、どこか軽やかだった。




