影の話(1)
「ごめんね。急に捕まえたりして。多少手荒でも、こうしなきゃいけなかったんだよ。」
そう言ってその者は喋り出した。
「君の名はレインで合ってるよね。」
さっきの感じた恐怖はなんだったのだろうか。みるみるうちに緊張と湧き出るような恐怖が解けた。私はその者に向かってこくっと頷くと、話が続いた。
「私はこの世界を守るために、王から雇われたものなんだ。サイム連合のニューワールド政策を阻止しなければならなくてね。ちょうど16歳になったということで、ここへ呼ばせてもらった。」そう言うと、振り返って他の者をこっちへ呼ぶ動作をした。
この人何言ってんの、、、?
その時の私にはそれが全く理解出来なかった。
なんで歳知ってるの、、、
サイム連合ってなに?ニューワールド政策って?
王って存在するの?どこの国の話だよ。
ってかそれが、私となんの関係があるんだよ。
この出来事が起こってから疑問ばかりだ。そろそろ私にもわかるように説明してほしい。
「あのー。ちょっとあなたの言っていることがよくわからないんですが、、、」
私がそう言うのと同時に、さっき呼ばれていた者たち2人が私の前まで来て、何かの模様を私に見せた。
、、、?!
これは、、、私の、、、
私が口を開く前にその者たちが話し出した。
「これはレイン家の家紋だ。見覚えがあるだろう。君はその一族であることはもちろん知っているだろうが、、、
今こうして、レイン家の末裔をここに呼び、家紋を見せ確認した理由は、他でもないニューワールド政策の阻止のためなんだ。
君の腕の裾を捲ってくれるかね。」
いまだに何を言っているのかわからないが、確かにこの紋様は私の手首にある。生まれつきあざとして体に染み付いている。昔母親にこれは何かと尋ねると、それは特別なものだからその時になるまでは簡単に見せてはならないと言われていたのだ。でもなぜか、今が「その時」だと思った。体がスッと動いた。裾をまくり、その者に見せた。
その者は私の手首に描いてある紋様をじっくりと見ると、頷いて少し微笑んだ。
「そうだ。それだよ。君はこれでレイン家の末裔だということが確定した。確定できるまで少々手荒になってしまったが、許してくれ。それよりも早く本題に進もう。これから話す内容を聞いてくれるかね。」
「はい。」
言われるがままに返事をした。
これから何が始まろうとしているのか。少し気になってきたが、同時に不安が私の上にずっしりとのしかかってくるように感じた。
その時の私には、この先何が起きるのかなんて見当もつかなかった。