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7 族滅

 結論から言うと、候爵の首はあっさりと狩れた。


 どういう訳か(・・・・・・)彼は、私の事を娘だと思っていたらしい。私が手土産を持ってきたと言うと、ウキウキしながら私を自分の屋敷へと迎え入れた。


「おお! 我が娘よ! よくぞ帰ってきた。ロクに手紙に返事もよこさずに。まあ良い、手土産とはなんだ? 娘の正式なレオニード殿下への嫁入りの話か? それとも、お前が子を授かったか?」


「いえ、今回はその様な話ではありません」


 欲望に塗れた顔をしている候爵に、私は近づく。そして、おもむろにナイフを取り出すと、それを、彼の心臓に突き立てた。


「が……!? ぐぁ! な、なにをする?! アマーリエ……!」


「……? 私はセーラですわ。あなたの娘ではありません。候爵様は少しボケておられる様で」


 私はにっこり笑う。痛みでうずくまった所を、護衛として共についてきてくれていたハティさんが一撃で首を落とした。数多くの政敵を葬ってきた候爵はあっさりと、死んだ。


「候爵は、隣国と組んで、反乱を起こそうとした謀反人である! よって、天誅を下した!」


 私は、落ちた首を前にして、そう叫んだ。無論、そんな事実は無いが、証拠は殿下が作って(・・・)下さっている。


「……スペア殿。いえ、セーラ様。よろしかったのですか?」


「私は殿下のお役に立ちたい。その為なら、いくらでも手を汚しましょう」


「……そうお思いなら、結構です」


 その後、私達の指示を受け、待機していたこの国の汚れ仕事担当。ナイトホーク家の皆さんが屋敷に突入し、屋敷の者達をことごとく、撫で斬りにした。


 その凄惨さは筆舌に尽くしがたいもので、斬られた一門や、使用人達の血で屋敷は庭まで真っ赤に染まった。


 抹殺対象だった候爵の子達は、特に入念に殺されていた。親を殺された子供なんて、将来復讐にくるに決まっている。流石、その道のプロ。2時間もせずに、候爵家の血族は、族滅された。


 何故か(・・・)私には、彼女達の隠れそうな場所が分かったので、効率よく、これらの首を狩る事が出来た。


 彼女達が住んでいたボロの離れは、何となく見ているだけで嫌な心地になったので、ナイトホーク家の人に頼んで火を点けてもらった。そしたら、すっきりとしつつも、何故か涙も溢れてきた。この感情がどこから湧き出てくるのか、私には分からなかった。


 隠れていて、最後に見つかった正室の娘は、引きずり出され、首をはねられる直前に私の事を見ると、激しく罵声を浴びせてきた。


「あなた! よくもお父様を! ゴミみたいな姉妹のくせに……絶対に許さない! 絶対に許さないわ!」


「……??? あら、私は貴女の姉妹ではありませんわ。私、セーラと申しますもの」


 まだ彼女は何か言いたげだったが、その前に、ハティさんの刃が振り下ろされた。皮肉にも、親子ともども同じ相手に斬り殺された。


 こうして、候爵の粛清は終わった。皆殺しにした候爵家の面々の首級が入った首桶の山をレオニード殿下に差し出すと、彼は一瞬、嫌そうな顔をしたが、すぐにいつもの冷静な顔に戻った。


「ありがとう……アマ……セーラ」


「いえ……」


「この前は、妙な事を言った。お前はセーラだったな……私がぶっ壊して、そう1から作り直したのだ。……アマーリエ・シュヴァルツなる女は、この世に存在しない。幸い、それを知るシュヴァルツ家の面々も族誅された。アマーリエという名は、私の記憶から完全に消滅させる事としよう」


「はい」


 良く分からなかったけど、素直な返事をした私に、殿下は複雑な表情をしつつも、微笑んでくれた。殿下は本当に凛々しいなぁ。


「……私が皇帝になる前に、この国の膿を出し切る。面倒事はさっさと片付けるに限る。……私の手はますます汚れるだろうなぁ」


 レオニード殿下は遠い目をしてそう言った。どうやらこの国に住む、問題ある人物は全て粛清するつもりらしい。ここまで来ると鬼としか思えない。でも私はそんな鬼を愛しているのだ。もうどうしようも無い。私も今更止まれない。


「その為には、信頼出来るパートナーがいる。セーラ。引き続き、この鬼についてきてくれるか?」


「はい! お任せ下さいませ!」


 そう言って、私は笑う。レオニード殿下も笑った。その笑顔は、狂気を含みつつも、とても素敵だった。


「私はセーラ。レオニード殿下の最愛の婚約者ですもの」



読了お疲れさまでした! 本作はこれで完結です。


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