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3/3

03.解釈違い

 ◇


「……って感じだな、俺の方は」


 いい加減話を進めたかった俺はキョースケのボケをそこそこに交わし自らの身の上をやや一方的に語りかける事にした。


 名がアッシュである事。冒険者業を初めて20年の老いぼれにして万年Dランクの凡人である事。好きな酒と煙草の銘柄、好きな女のタイプ、後は適当な失敗談をひとつまみ。


 中身があるようで無いなんも言えない内容だが、野郎同士の仲を取り持つには上々な内容だな。


『じゃ、名前はこれからアーシェだな!』


「まず話と話に連続性を持たせることを覚えようか?」


 誰が、俺の今後の名前の話を始めた?


 そう頭を抱える俺を他所にキョースケは楽しげに自らの論を展開していく。コイツの心臓には毛でもみっちり生えてやがるのか?(蛆虫もどきに心臓があるかは知らないが)


『いやいや、重要だろ?その身なりで今まで通りの名前は浮くし、元の名前を元に女の子っぽい名前を名乗るのは最早セオリーだ。外せない。それにお前は消えた冒険者と入れ違いに同姓同名の幼女が現れて何も怪しまれないと思うのか?』


「ぬぐ……」


 Dランク如きの冒険者が消えたところで何の問題も無いっちゃないが……まかりまちがってキョースケの存在が万が一にでも周囲に知られる事になれば事だ。



 錬金術師どもにとってキョースケの存在にどれ程の価値があるのか俺に推し量るのは難しいが、少なくとも最上級の霊薬程度以上に価値がある事は想像にかたくない。


 そんな奴らに狙われれば、キョースケとの契約にも支障が出ることは言うまでないだろう。


 すくなくとも、相応の力を身につけられるまでは俺と元の俺、アーシェとアッシュの関係は隠しておくのが安牌だ。


 微妙に見当違いでもないのが腹立たしい。


「とにかく……!俺の方はこんな感じだな。一言で言うなら、うだつのあがらない只のオッサン冒険者っつう訳だ」


 キョースケをこの世界に送り込んだ神とやらの目的である【世界の調律】ってのが何を指すのかは知らないが、随分となあ役者不足な男だよ。


 情けねえ事に。


『大丈夫だ!ちょっと前のトレンドにはなるが、そう言う奴だったり平凡な奴がが実はすげーってのは定番の流れだぞ!』


「それ大多数の人間にあてはまるよな???」


 世の中の9割が凡人だし、オッサン9割もうだつが上がってない。そんな奴が実は凄かったってのは大衆受けする定番ジャンルだ。こっちの世界の過去にも現代にもその手の話は普通にある。


 と言うか、フォローになってるようで全然フォローになってないフォローはやめろ。


『それに、それを言うなら俺なんか元ニートだからな!!』


「1ミリも解んねぇが、それ、誇れるこっちゃないだろ???」


『まあ、ニートって要するに無職だしな。よーするに、あんたの方が100倍ましって事!とはいえ、異世界転生ものの主人公の経歴としちゃブラック会社の勤務の社員、いじめられて自殺した奴に並ぶとも劣らない由緒正しき職業だからね!』


「出した3つのうち2つが職じゃねえんだが?!」


 なんなら、そのブラック会社勤務ってのも職のジャンルに当てはまるか謎だ。


 て言うか、なんで身の上話をするだけでこうも疲れるんだ。


「……とにかく、話を戻すぞ。お互いの事も何となく解ったことだし、とりあえず今後の方針を決めておこう。俺は何をすればいい?」


 世界の調律とか漠然と言われても、何から始めりゃ良いか検討もつかねえってのが本音だ。


『とりあえずは普通に冒険者やるのがセオリーだな。何をするにしても自力をあげないと意味が無い。俺の力をつかってその身体を成長させるのが第一目標だ……あ!!』


「ど、どうした?」


『成長させるってのはステータスの事だからな!?年齢的な意味じゃないぞ!?成長する幼女とか解釈違いだから!!その身体の年齢は幼女で固定だからな?!』


「どう生きれば子供が成長するのが解釈違いになれるんだよ!?!?」


 良いからいい加減話進めろや?!

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