第5話 『侮辱』
主人公がクラスメートを呼ぶときにちゃん付けをするのを呼び捨てに修正しました。
放課後、咲から許可も貰えてリナに学校案内する事になった。
ちなみに、咲は放課後に用事があるので先に帰って貰っている。
「学校案内デート楽しみです」
アリナ、改めリナはウキウキした感じで俺の左隣を歩いてる。
「あの……私もいるんだけど」
俺の右隣から声を出したのは涼子だった。
涼子は俺とリナを二人きりにすると心配らしく、ついてくると言ってくれた。
「リョーコは帰ってもいいのですよ?」
「ううん、暇だから付き合うよ。エヴァノフさんと和希くんだけだと心配だからね」
俺の両隣にいる二人は笑顔なのにすごく怖いです。
ふと、窓の外を見ると高級車がちょうど校門のあたりに停車しているのを見つけた。
俺はそれを見て思わず足を止めてしまう。
「あれは……」
「和希どうしました?」
「和希くん?」
車からちょうどおりてきたのは先日のオーディション番組のスポンサーである東間財閥の御曹司、東間聡くんだった。
「あれって東間の車だね。しかも、男の子が降りてくるなんて珍しい」
涼子が俺の視線に気づいて外の車について教えてくれた。
「和希の知り合いですか?」
「あぁ、この前オーディションに出る機会をくれた人なんだけど……」
この学校に直接くるなんて誰かに用事でもあるのだろうか?
聡くんのおつきの人が校門の守衛所で手続きを終えて、聡くんと一緒に校舎のあるこちらへ歩いてくるのが見えた。
「へぇ、そうなのですか……」
「もしかして、和希くんに用事かな? 知り合いなん――きゃっ!!」
突然、話していた涼子がよろめいて俺のほうへと倒れ掛かってきた。
俺は涼子を咄嗟に受け止める事に成功した、けど、一体どうしたんだ?
「おい、こんな所でとまってるんじゃねーよ! 邪魔だ!!」
俺たちにそう言ってきたのは俺と同じ制服を着た男子生徒で、どうやら涼子を突き飛ばした犯人らしい。
「涼子、大丈夫っ?」
「リョーコ、平気ですか?!」
俺とリナは同時に涼子ちゃんに声をかけた。
「う、うん、少しびっくりしたけど和希君が受け止めてくれたから……」
よかった、どうやら怪我はないようだ。
それにしても、突然涼子を突き飛ばすなんて酷い事をする。
「人を行き成り突き飛ばすなんて何考えてるんだ?!」
「はぁ? しらねーよ、こんな廊下で立ち止まって邪魔だからだろ」
「確かに廊下で立ち止まっていたのは悪かったかもしれない。でも、一声かければ済む話だろ」
「うるせーよ、そんなこと知るか。……あれ? よく見たらお前、オーディション番組で媚売って落ちてた奴じゃねーか」
確かに俺は歌のオーディション番組には落ちたけど媚を売った覚えはない。
「媚?」
「そうだろ? 女どもに笑顔振りまいて、媚びてるじゃねーか。その挙句にオーディションにも不合格になって情けないやつだって思ってたんだよ」
「和希くんは情けなくなんてない!」
「そうです!」
涼子とリナが俺の前に立ち、怒ってくれた。
「ほら、女どもに庇われてよかったな。こびこび野郎」
「オーディションでは不正があったって報道を知らないの? 和希くんは本当なら合格してたかもしれないんだよ」
涼子が男の言葉に我慢できずに反論する。
「本当に不正があったらな。モデルのヨシオも災難だよな、こんな女に媚を売ってるような奴のせいで人生狂わされて。だいたい、お前はコネでオーディションに出たんだろ? 本当はテレビ局とかその辺の関係者の連中に圧力かけて不正があった事にしたんじゃねーの?」
俺は確かに、コネでオーディションに番組にでた。
でも、関係者に圧力なんてかけていない。
「俺はそんな事してない」
「ふーん、まぁお前はそうかもしれないけど、西宮はどうかなー? お前の事お気に入りみたいだし、それに北条と東間の推薦があったんだろ? そうすると、やっぱり圧力はあったんじゃねーのか? どうなんだよ、おい」
「それは……っ」
咲は確かに俺の事を気にかけてくれている。でも、不正をおこなってまで俺の力になってくれるような女の子じゃない。
なんだか、咲の事を侮辱された気がしてひどく腹が立って気が動転してしまう。
「ほら、言葉に詰まったな? もう認めたようなもんじゃねーか。お前の周りの連中が圧力をかけて不正をしましたってな」
「違う! 咲はそんな事をしない」
「別に西宮とはいってねーよ。北条か東間って可能性もあるって話で――」
「それは東間に対する侮辱として受け取っていいのかな?」
突然、俺の背後から男性の声がした。
振り返るとそこには数人の黒服の護衛を連れた一人の青年が立っていた。




