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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゆりちゃんについて知っているいくつかのこと

作者: 神崎 漓莉

こんばんは、神崎です♪

今回、所属しているサークルの企画で、ひとりの女の子についてのお話を書きました!


よかったら、読んでみてください

 クラスにいる山瀬(やませ) ゆりちゃんは、とても可愛い。


 これは同性のわたしから見ても間違いないくらいで、新学期の初日に初めて見たとき、「こんな可愛い子が実際にいたんだ」と思ってしまったくらいだ。とにかく、一挙手一投足ぜんぶが可愛い。笑う声も可愛い。ちょっと釣り気味の目も可愛いし、意外と毒舌なところも可愛い。


 ゆりちゃんは、頭がいい。

 授業で当たった問題は全部しっかり答えているし、音読のときも、教科書を読む声から頭のよさが滲み出ているみたい。もちろん、勉強とかだけじゃなくて、人付き合いとかでもその頭のよさは出ていて、言葉のタイミングとかもすごい。わたしもああいう風になれたらいいのにな。


 ゆりちゃんは、時々イライラしてる。

 笑ってても、普通にしてても、給食を食べてても、音楽でピアノ伴奏してても、なんだかイライラしてるときがある。図工とかで何かを作るときにはそれがハッキリ出ていて、イライラしてるときに作るものは全部、ちょっと怖い。たぶん、いろんなことがあるんだよね、わたしもたまにイライラが止まらないときがあるもん。


 ゆりちゃんは、たまに泣き虫になる。

 人に見せて味方してもらう為に泣くんじゃなくて、本当に、隠れて泣いている。男子から気持ち悪いこと言われたり、女子からひどいこと言われたり、あと大切なものを隠されたりしたあと、旧校舎の階段まで行ってよく泣いている。つらそう、なんとかしてあげたいな。


 ゆりちゃんは、あまり家に帰らない。

 帰るのはいつも、他の家族がみんな揃ってから。お父さんが帰る前に家にいるのは嫌みたい。どうしてなのかはわからないけれど、たぶん、早めに帰ると何か嫌なことが待っているのかも知れない。こんな可愛い子に、どうして嫌な思いなんてさせられるんだろう? わたしにはわからない。


 ゆりちゃんは、甘えん坊だ。

 放課後、わたしが帰るときまで待っている姿をよく見かけて、だからわたしも急いで支度を終わらせる。すぐには一緒に帰れないのがわたしもつらいけど、一緒に帰っているとき、わたしの家に上がったとき、ゆりちゃんはとても甘えん坊になる。


「それじゃ、ばいばい。また明日ね」


 ゆりちゃんは、きっと知らない。

 毎晩家まで送り届けたあとに手を振るわたしの胸の中なんて、たぶん見えていない。頭はいいけれど、まだゆりちゃんの世界はとても小さいから。だから、そんなに無垢な顔で振り返れるんだ。


「ばいばい、先生」


 ゆりちゃんは、きっと知らない。

 わたしは先生なんて呼んでもらっていい人じゃないのに。


「先生、大好きって言ってくれるの、好きだよ」


 ゆりちゃんは、まだ知らない。

 お家まで送ろうとするまでわたしがしていたことは、ゆりちゃんの無垢な信頼を裏切って傷付けているようなことだったなんて、まだ知らない。知らなくていい、ただそのままで、ずっと汚ならしい「大好き」を受け入れてくれる無垢なゆりちゃんのままで。


 ゆりちゃんは、きっと明日もわたしのところに来る。

 わたしの「大好き」に、その無垢な瞳で答えてくれる。

「また明日ね、ゆりちゃん」

 その小さな背中に囁くわたしは、つい微笑んでいた。

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