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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【異世界転生】した反魂(はんごん)術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!?

【異世界転生】した反魂(はんごん)術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!? ― 舎利の聖女 ―

作者: 葛城遊歩

 【異世界転生】した反魂はんごん術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!? ― 美少女の遺骨を探して東奔西走 ― 『https://ncode.syosetu.com/n5489ez/』の続編ですが、本編だけでも問題なくお読み頂けます。


 今話ではえっちな叙述も若干でてきますが、R15の範囲内と考えております。

 また話の展開上、グロい叙述も若干ありますが、苦手な方はご注意下さい。


 俺の名前はサイキョウだ。親父の名前はハンスと言い、お袋の名前はマリアと言う。ついでに言うと兄貴の名前はヨハンと言い、妹の名前はハンナと言った。


 つまり、俺の名前だけが浮いていたのだ。


 名付けたのは親父であり、生まれたばかりの俺をみて『サイキョウ』というヘンテコな名前を(ひらめ)いて命名したのだという。


 幼い頃は、このヘンテコな名前のせいで兄妹や近所の子供たちに(いじ)められた。


 ところが俺が15歳の『成人の儀』を明日に控えた逢魔(おうま)が時に、家路を急いで足早に街道を駆けていると、背後から暴走してきた荷馬車に()かれて生死の境を彷徨(さまよ)った。


 その時、俺は前世の記憶に目覚めたのだ。


 前世の俺は、此処(ここ)ではない世界で『西喬(さいきょう)』という名の修行僧だった。


 俺のお師匠様は、西行(さいぎょう)法師様と呼ばれる徳の高い高僧であり、歌人としても名を馳せた歌仙のひとりだった。


 俺の名前は、お師匠様から『西』の一文字を頂いて名付けられたものだったのだ。


 そんな高潔なお師匠様だが、何故(なぜ)か身の回りのお世話をする美人の女性が付き従っていたのだ。


 彼女の名前は(しずく)さんと言い、(つや)やかな黒髪に ― キリリ ― とした目元が涼やかな美女だった。


 しかもおっぱいが大きく、俺の理性を惑乱する肉感的な身体をしていた。


 普段は清楚な着物に隠されていた豊満な肉体だが、湯あみの際に薄衣(うすぎぬ)湯着(ゆぎ)一枚で背中を流してくれたのだ。


西喬(さいきょう)様。今日もお勤め、ご苦労様でした。湯加減は如何(いかが)ですか?」


(しずく)さん、丁度よい湯加減ですよ」


「そう、それは良かったです。お疲れを癒すために、お背中を流させて頂きますね」


 何時(いつ)もの流れで(しずく)さんが湯殿に入ってきた。


 湯煙が邪魔をするものの、(しずく)さんが着ている湯着は、身体の線が写る煽情的なものであった。


 着物では胸元が締め付けられているが、湯着の薄衣(うすぎぬ)にはおっぱいの形が明瞭に写ってしまっている。


 俺は当然のことながら童貞であるが、年頃の正常な男子でもあった。


 緊張しながら全裸で椅子に座り、(あか)(こす)ってお湯で体を流してもらうのだが、お師匠様から課される修行とは異なる忍耐力が必要だった。


 しかも湯気により(しずく)さんの着ている湯着が濡れそぼっていくし、時には柔らかな膨らみが背中を撫でた。


 極楽浄土を思わせる夢心地であったが、お師匠様と(しずく)さんは一度も肉体関係にはなかったのだという。


 どうして(しずく)さんのような美女が、お師匠様と一緒に居たのか?


 長年の疑問は、俺が修行の旅に出る際、餞別(せんべつ)として伝授された〈反魂術〉とともに明かされた経緯(いきさつ)により氷解した。


 何と(しずく)さんは、〈反魂術〉で蘇った存在だったのだ。


 俺は、お師匠様から〈反魂術〉とともに蘇った者に対する接し方などを教えてもらった。


 〈反魂術〉で蘇生したばかりの者は肉体の滋養が欠乏しており、無意識に他人や動物の血を(すす)り、臓物を喰らいたくなる衝動に襲われるのだという。


 同時に性的欲求も高まるというが、目的は相手の生命力をあそこから搾り取るためであるのだとか。


 男が強引に性行為を為した場合、仮初(かりそめ)の命を繋ぐ〈反魂術〉が(ほど)けて風解してしまうが、積極的に滋養を搾り取る行為は問題ないらしい……。


 そんな化け物然とした行動は、仮初(かりそめ)の命である蘇生後の一千日の間だけであるという。


 そのような状態に堕ちた時は、犬歯が伸びて瞳が(くれない)色に染まり、伝説の悪鬼羅刹(あっきらせつ)の如き兇状(きょうじょう)になるのだとか。


 その一千日を無事に過ごした蘇生者だけが、真の意味で蘇りの恩恵に(あずか)れる。


 (しずく)さんとの一千日は、千日回峰行の如くお師匠様は淡々と(こな)したらしい。


 元々、お師匠様が〈反魂術〉を行使したのは、人恋しさから話し相手が欲しかったからだという。


 そんなお師匠様に御仏(みほとけ)は、(しずく)さんという美女を(つか)わせたというのだろうか?


 (ひるがえ)って、【異世界転生】を果たし、一般市民のサイキョウとして育った俺が行使した〈反魂術〉では色物の蘇生者にしか出会っていない。


 俺も(しずく)さんのように素晴らしい女性(にょしょう)と巡り会いたいのだ。




 実家を逐電(ちくでん)し、冒険者となった俺は〈反魂術〉に使用する砒霜(ひそう)の原材料の採集と(はかな)くこの世を去った美少女たちの噂話を集めていった。


 その中で、俺好みの美少女の噂を耳にした。


 (くだん)の美少女の名は、『ロゼリア・シベール・サイモンテ』という。


 ロゼリアは、()のサイモンテ王国の第三王女として、この世に生を()けたと言い伝えられている。


 美貌で知られた母親の血を色濃く受け継ぎ、輝くような(かんばせ)に加えて聖なる『治癒魔法』に目覚めたことから、『聖女』としてアーカンス聖教団に迎え入れられた。


 アーカンス聖教団の聖女として将来を嘱望(しょくぼう)されていたロゼリアであったが、ある年に猛威を振るった疫病を祓うため、(にえ)としての神託を()けたのであった。


 聖女ロゼリアの最期は伝説となって語り継がれ、彼女の生前の姿を写した細密画(ミニアチュール)が教会の祭壇の傍に飾られ、今でも信仰の対象として崇められていた。


 聖女ロゼリアが神の御許(みもと)に旅立ったのは成人前の14歳の時であり、その(うるわ)しさと高潔さは(たと)えるものがないと謳われたという。


 一説によると、天上に(いま)します神が(いと)しさの余りに手折(たお)ったのではないか? との風説が流れた程であったともいう。


 俺も実際に細密画(ミニアチュール)に写された聖女ロゼリアの花が(ほころ)びかけたかのように可憐な正統派美少女の立ち姿と対面した時、呆然(ぼうぜん)としたものだった。


 豊かな金の髪に透明な青空の瞳。染み一つなく透き通るように清純な肌の色。伸びやかな肢体に(くび)れた腰と大きく膨らんだ胸という(まご)うことなき美少女だった。


 勿論(もちろん)細密画(ミニアチュール)といっても被写体を美化している可能性もあるが、生前に描かれたものであり、彼女の容姿を正確に写しているという伝承はある程度信じても良いだろう。


 ()うして俺は、聖女ロゼリア・シベール・サイモンテを〈反魂術〉で蘇らせることに決めたのであった。




 疫病を祓うための(にえ)として、短い生涯を閉じた聖女ロゼリアの聖遺骸は、舎利壺に納めて尖塔(ストゥーパ)の最上階に位置する一室に安置されているという。


 聖女ロゼリアは、高座から(あまね)く人々の安寧(あんねい)を見守っていると言い伝えられていた。


 (くだん)尖塔(ストゥーパ)は、教会の敷地内に建設されており、敷地内には人集(ひとだか)りが絶えず、聖戦士たちが巡回をしているという厳重なものであった。


 しかしながら、教会では信徒や一般民衆に解放されており、出入りは基本的に自由である。


 勿論(もちろん)、聖域は立ち入り禁止であったが……。


 俺は建物の周囲に植えられた観葉樹の木陰でやり過ごして、深夜になってから尖塔(ストゥーパ)へと近付いた。


 予想通り、尖塔(ストゥーパ)の周囲は閑散(かんさん)としている。


 その上、扉の施錠も簡単なものであったから、冒険者である俺に取っては侵入することなど容易であった。


 尖塔(ストゥーパ)も信仰の対象であるが、聖女ロゼリアの聖遺骸が納められている以外に金目のものがなかったから、警備体制はこんなものだったのだろう。


 扉を閉めると持って来たカンテラに火を灯して、勾配がきつく狭い螺旋(らせん)階段を登っていく。


 尖塔(ストゥーパ)の内部には、カンテラの明かりにより作られた俺の影だけが踊っていた。


「ロゼリア、待っていろよ。俺が蘇らせてやるから……」


 俺は、今回の〈反魂術〉が失敗すれば、これでお仕舞いにする気だった。


 〈反魂術〉は死者の安らかな眠りを叩き起こす行為なので、これ以上の行使は俺の精神が病んでしまうかもしれない。


 長い、長い螺旋階段を登り切ると、最上階に扉が現れた。


 この扉の先に、聖女ロゼリアの聖遺骸が納められているはずだ。


 当然のことながら、この扉も施錠されていたが、把手(とって)には(ほこり)が積もり、長期間、誰も立ち入っていないことが(うかが)われた。


 この扉の鍵も冒険者の鍵開け技能(スキル)の前には無力であり、簡単に開錠することができた。


 がちゃ、ギィイィイィィ


「お、女の子の部屋だな」


 室内をカンテラの明かりで照らすと、可愛らしい女性向けの家具やら日用雑貨やらが整然と置かれていた。


 これらの物品は高価なもので、元大国の姫君だった聖女ロゼリアにはお似合いだった。


 これらは聖女ロゼリアが、生前に使用していたものなのだろう。


 そして室内の真ん中に祭壇が(もう)けられ、豪奢なテーブル掛けの上に舎利壷が安置されている。


 舎利壷の大きさは、甕棺(かめかん)でもあるので一抱えもあるほどに大きなものであった。


 底部は(かなえ)のように三本の脚で支え、側面には天界でひと時の休息を取る聖女ロゼリアの姿が描かれていた。


 聖女ロゼリアは有翼の天界人に(かしず)かれて、王女然とした威厳がある。


 ただ、蓋には封印のための呪符が貼られていたが、長年の経年劣化のためか剥がれ掛けていた。


 この呪符をみると、聖女ロゼリアが復活することを恐れている者がいたようだ。


 何やら陰謀の匂いがするが、()えて無視をする。


 俺は慎重に舎利壷を床に下ろすと、破らないように呪符を剥がしてから蓋を開けた。


 すると聖女ロゼリアの髑髏(されこうべ)(うつろ)ろな眼窩(がんか)が迎えてくれた。


 聖女ロゼリアは泣いているのではないか? という幻視に、一瞬囚われる。


 14歳という幼さで、神に(ささ)げられた聖女ロゼリアが哀れだった。


 真っ白で軽い髑髏(されこうべ)を持ち上げると、続く頚骨(けいこつ)の端部が鋭利な刃物で両断された跡が見受けられた。


 恐らく、末期(まつご)の苦しみから解放するために介錯(かいしゃく)したのだろう。


 それにしても酷いことだ。


 俺は舎利壺から(うやうや)しい手つきで取り出した髑髏(されこうべ)を祭壇の上座側に置く。


 続けて肩甲骨や上腕骨、そして背骨に華奢な肋骨(ろっこつ)などを並べてゆく。


 細い肋骨の上には、どんなおっぱいが乗っていたのだろうか?


 (しずく)さんのおっぱいは大きくて立派だったが、湯着越しにしか見たことはなかった。


 聖女ロゼリアに関しても細密画(ミニアチュール)による情報であり、彼女は聖女らしい清楚な服を(まと)っており、確かなことは分からなかった。


 物思いに(ふけ)りながら、舎利壺から骨盤を取り出した。


 以前に男の娘を誤って蘇らせかけたことがあった。


 あの時は、股間に見慣れた逸物(おちんちん)が形成されかけて驚いたものだ。


 聖女ロゼリアの骨盤は、恥骨の形態から間違いなく女性のものだった。


 美少女の局部を想像してみたが、まじまじと見たことがないのでよく分からない。


 (うつ)ろな空間に指先を突っ込み、(ちつ)や子宮を想像しようとするが、イメージが湧かない。


 最後に大腿骨などを置いて、祭壇の上には聖女ロゼリアの全身骨格が並んだ。


 聖女ロゼリアの身長は、俺の肩くらいと小柄であるようだ。


 (もっと)も、(ささ)げられたのが二次性徴途上の14歳だったので、妥当なものなのだろう。


 俺は(かばん)から砒霜(ひそう)が入っている薬瓶と筆を取り出すと、聖女ロゼリアの聖遺骸に丁寧に塗っていった。


 一筆、一筆に想いを乗せて、聖女ロゼリアの復活を望む。


 俺の強い想いも術の行使への助けとなるのだ。


「冥府に下りし()の者の魂魄(こんぱく)と肉体を(ことわり)に背いて戻し(たま)え。偉大なる冥界神よ、大いなる御力(みちから)により……――」


 そして〈反魂(はんごん)術〉の呪文を(おごそ)かに唱えてゆく。


「今度こそ、俺好みの美少女でありますように」


 呪文を唱えだすと、カンテラの明かりが明滅して世の(ことわり)が反転する。


 聖女ロゼリアの聖遺骸に塗った砒霜(ひそう)から白い(もや)のようなものが湧き立ち、生前の肉体をゆっくりと復元してゆく。


 醜悪(グロテスク)な内臓組織や筋肉組織に血管網などが復元されたかと思われると、瑞々(みずみず)しい素肌に覆われてゆく様は圧巻だ。


 女の子特有の(まろ)やかな曲線がとても美しい。


 折れそうな程に細い首や腰の(くび)れ、それから豊かに膨れた双丘が形造られてゆく。


 伸びやかな両腕と両脚が一糸(まと)わず(あら)わとなり、両脚の付け根は表現することは難しいが、俺の胸の鼓動が速まり股間が大変なことになっていた。


 何という魅力的な裸体なのだ。


 二次性徴途上の少女と美女が渾然(こんぜん)一体となっている様は、刹那(せつな)の美しさがある。


 聖女ロゼリアの裸体は、陶器人形(ビスクドール)のように透明感があって美しい。


 裸体に魅入っていると、唐突に ― どくん ― と心臓が鼓動をひとつ打ち、続けて自立呼吸に伴って胸が上下しだした。


 そして白磁のようだった素肌がほんのりと赤く色づいて、聖女ロゼリアが蘇ったという(あかし)を見せ付ける。


 考えてみると、この段階まで見届けたのは初めてだ。


 此処(ここ)で肝心な顔を見忘れていたことに気付いた。


 それに先立ち、視線を裸体の横に置いた白木の(くい)に向ける。


 聖女ロゼリアが気に入らなければ完全に蘇生が完了する前に、心臓へと白木の杭を突き刺して処分する心算(つもり)だった。


 他にもいろいろな道具が並べてあり、適宜(てきぎ)使用する予定だ。


 先ほどまでは(うつ)ろな眼窩(がんか)を向けているだけだった髑髏(されこうべ)だが、光を編み込んだかの如く輝く金髪が伸び、精緻(せいち)な造作の顔が復元されていた。


 この上もなく柔らかそうで肉感的な唇は、俺を誘うかのように薄く開かれ、可愛らしい鼻と意志の強そうなちょっと太い眉毛に ― ぷにぷに ― とした(ほお)はとても柔らかそうだ。


 何と言うか、俺の理想を具現化したかの如き美少女だった。


 その時、長い睫毛(まつげ)(かす)かに動き、目蓋の隙間から(くれない)色をした瞳が(のぞ)いていることに気付いた。


 蘇った聖女ロゼリアは滋養の欠乏を解消するために、俺を(えさ)として認識しているようだ。


 改めて可愛い口元を見遣ると、何時(いつ)の間にか伸びた犬歯が(のぞ)いている。


 彼女のことは諦めて、白木の杭で滅ぼしてしまうべきか?


 それでは、今までの苦労が水泡に帰してしまう。


 俺は白木の杭の横に置いていたハリセンを握り締めた。


 次の瞬間、祭壇の上から跳ね起きた聖女ロゼリアは、牙を剥き出して俺に襲い掛かってきた。


「【食欲】、【性欲】、退散! (カツ)!!」


 パコォオォォン


「いぎゃあぁあぁぁ……。い、痛いの! わた、わたくしを聖女ロゼリア・シベール・サイモンテと知っての狼藉は(ゆる)しませんよ」


 聖女ロゼリアが跳び掛かってきた瞬間、ハリセンが彼女の頭部を痛打したのだ。


 そして室内に軽快な打撃音が鳴り響いた。


 聖女ロゼリアは両手で頭部を押さえつつ、涙目になりながらも聖女としての威厳のある態度で文句をいう。


「お前……現状認識ができているか? すっぽんぽんだぞ!!」


「は、裸!? きゃあぁ……うぐぐっ」


 聖女ロゼリアは、俺の指摘により全裸で在ることを認識すると、絹を裂くような悲鳴を上げ始めたので、咄嗟(とっさ)羽交(はが)い絞めにして慌てて口を塞いだ。


 それから気付いたのだが、(くれない)色をしていた瞳は明るい空色へと変わり、伸びていた犬歯も縮んだようだ。


 実は、ハリセンには前世のお師匠様である西行法師様から教えられた調伏(ちょうぷく)の経文が書かれており、蘇生した者の食欲やら性欲やらを押さえる効果があったのだ。


 抱き締めた聖女ロゼリアの身体は温かくて柔らかく、頭髪からは乙女の(かぐわ)しい匂いもしていて ― くらくら ― する。


 考えてみると、女の子を抱き締めるというのは初めての経験だった。


「俺の名前はサイキョウという。俺はお前の敵ではない。暴れないというのなら解放してあげよう。了解したのなら首を縦に振れ」


 聖女ロゼリアは驚きつつも首を縦に振ってくれたので解放し、〈反魂術〉で蘇らせたことや、現在の状態を説明してあげた。


「わたくしは……、邪法で蘇ったのですね……。貴方(あなた)様がご主人様とは……」


 聖女ロゼリアは、悲痛な瞳を向けてくる。


「何なら白木の杭で心臓を突き刺して、冥府に戻してやろうか?」


「わたくし……あんなに寂しくて(くら)いところは嫌! サイキョウ様、わたくしを蘇らせて下さってありがとうございます」


「ところで全裸でいられると、俺の方も恥ずかしいのだが……」


「きゃ!? こ、これは失礼いたしましたわ」


 聖女ロゼリアは衣装箪笥(たんす)抽斗(ひきだし)を開けると、聖女らしい純白の下着を身に着け、そして旅の修道女の衣装を着た。


 それから長い金髪を()って頭に巻いていく。


 最後に頭頂からヴェールを被った。


 美少女としての美貌は損なわれていないが、一見すると旅の修道女に身を(やつ)していた。


「わたくし……、前世(・・)では殺されるまで鳥籠(とりかご)から出ることが叶いませんでした。サイキョウ様、どうかわたくしをお連れ下さい。そして仮初(かりそめ)の一千日を無事に過ごせるように守って欲しいのです。併せて、今世(・・)のわたくしに恋心というものを教えて下さい」


 ()うして俺は、【ハーレム】要員の一人目となる聖女ロゼリアを得たのであった。


「ああ、俺がお前を守ってやる。真の意味で蘇生できたなら愛し合おうな」


「とても嬉しいですわ、サイキョウ様! ところで女の子はわたくしだけをみて下さいましね。他の女の子に(うつつ)を抜かせては駄目ですよ」


 にっこりと微笑む聖女ロゼリアであったが、瞳は笑っておらず真剣そのものだった。


 聖女ロゼリアは潔癖症なうえに、嫉妬(しっと)深いという難儀な性格のようだ。


 俺としては聖女ロゼリアが安定すれば、次なる美少女を〈反魂術〉で蘇らせる気、満々だったのだが……。


 この世界において【ハーレム】とは、男の甲斐性であり、成功の(あかし)だったのだ。


 聖女ロゼリアは類稀(たぐいまれ)なる美少女であるが、彼女ひとりでは【ハーレム】とは呼べない。


 何とか彼女を説得して【ハーレム】を構築するのだと、決意も(あら)たにする。


 その後、室内の状態をできる限り元に戻し、空になった舎利壺の蓋をすると呪符を貼り直してから祭壇の上に安置し直した。


 一方、聖女ロゼリアは葛籠(つづら)の中を(あさ)り、一本の(いわ)くありげな杖を取り出すと、俺の後に続いて部屋を出た。


「その杖は何だ?」


「これは、わたくしの魔法の先生から免許皆伝祝いに頂いた長杖(ちょうじょう)ですわ。わたくしの『治癒魔法』や『攻撃魔法』を補助してくれるのですわ」


 何と聖女ロゼリアは、伝えられていた『治癒魔法』以外にも『攻撃魔法』の遣い手でもあったらしい。


 ただ、仮初(かりそめ)の命を得ただけの現在の状況では、魔法の行使に身体が耐えられるとは思えない。


 でもこの長杖からは、様々な人々の想いが伝わってくる。


 きっと聖女ロゼリアを助けてくけることだろう。


 俺は扉を再び施錠すると、把手(とって)(ほこり)を散らせて偽装工作を行った。


 滅多なことでは、この部屋が(あらた)められることはないと思われるが、転ばぬ先の杖であった。


「それでは聖女ロゼリア……否、ロゼリア、俺と一緒に冒険の旅にでよう」


「はい、サイキョウ様。ロゼリアはとても ― わくわく ― しております。どうか大切にして下さいましね」


 そして俺とロゼリアは、夜陰(やいん)に乗じて教会の敷地を出ると、当てもない旅に飛び出した。


 お読み下さり、ありがとうございます。


 前話では三題の内、【異世界転生】と【チート】に関しては達成していましたが、【ハーレム】に関しては変化球でした。

そこでハーレム要員の第一号となる聖女ロゼリア・シベール・サイモンテの蘇りから一緒に冒険の緒に就く場面までを書き下ろしました。


 さて、サイキョウはロゼリアの尻に敷かれるのか、それともロゼリアを説得してハーレム要員第二号を蘇らせることができたのか……。


 なお、この物語の発想は、西行法師様が旅の無聊を慰めるために人造人間を反魂術で造ったという伝説に基づいております。


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[一言] ハーレムは女性を記号化しがちと聞きますが、ひとりひとりにバックボーンをしっかり設けて愛情を注いでいるように感じております。 ハーレムものを読んで「うむむ……」と感じる自分が、それでも葛城ハー…
[良い点] 14歳で見目麗しい……先の長さがもどかしいようで楽しみでもあります!うん、育てなきゃ(笑) [気になる点] ん?うちの娘と同い年なんだよね……いや、ホント。 [一言] 毎度お馴染みの稲村で…
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