奇妙な現象?
英助が学校下校のときに聞いたものとはーーー
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英助はまたもや今学校で叱られている。
それも当然か。
2時間もの間、出席できなかったのだ。
それも2学期が差し迫っているばかりなのだから、残りはあと1限のみ。
残りの1限は少しお遅ればせながら、何とか出席になれたのは英助にとって幸運なのだろう。
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帰る準備をしている栄助の後ろから、そっと誰かが歩み寄る。
そっと忍び寄る影。
その瞬間!
「っぐわ」
と、栄助は力ない言葉とともに肘がくの字になる。
「…ったく、また遅刻かよ英助」
後ろから青年と同じ服を着た短髪の青年がにやにやしながら、英助の肩に肘を置き体重をかける。
「そういうお前も相変わらずだな。ひざかっくんとか、小学生かよ」
と、英助は呆れた顔をしながら、ひざを真っ直ぐにする。
「まぁ、そう言うなよ。今日いつものメンバーでいつもの場所な!な!」
と、周りから見れば、短髪の青年がすまなそうに頼んでるかのように見える。
しかし、中学高校と一緒の英助からには、ウインクしてにやけた青年が少し甲垂れるようにしているのがわかる。
つまりは、半ば強制で、また、頼まれているのだ。
心のなかで、深いため息をつく英助。
まぁ、5年目の付き合いだ。
不器用な英助は、人懐っこい人気者には勝てず、仕方なしに首に腕を回され学校を後にする。
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今4人の男子高校生たちがだらけながら話題に花を咲かしながら、電車を待っている。
一人の男子高校生を除いて。
昨夜眠れなかったのが、今に眠気がピークに達している英助。
大きなあくびをしながら、一人ケータイをいじっている。
栄助は隣が五月蝿いなぁと内心思うが、いつもはそんな事はない。
眠気のせいで今回はイライラしているのだ。
少し涙目になりながらケータイをボーといじっていると
「…気を付けて」
何故か心地よい不思議な雰囲気の声色の言葉が聞こえ振り返る栄助。
しかし、4人のいつものメンバーとサラリーマンが一人。
隣の乗り場にはお婆ちゃんが。
まさか、隣のお婆ちゃんがそんな心地よい言葉を発する事もないだろう。
サラリーマンなど論外だ。
眠気で眠りに一瞬ついたのか?
と、目を擦る英助。
電車が前に来ていつものゲームセンターへ行く。
それ以来何か聞こえることもなく、気にはならなくなってゲームに熱中した英助。
当然のごとく、他のメンバーはより盛り上がっていた。
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いつものゲームセンターの楽しみも束の間、暗がりになり5人は解散することになった。
英助は自転車通学だが、自転車に鍵もかけたことだし電車で帰ることにした栄助。
明日は日曜日。
帰りは興奮しながら、英助は帰っていった。
ガチャ
「…よいしょっと、ただいまー」
と、かったるそうに鞄をドスッと音をたてるように落とすように置き、片手で靴箱を持ちもう片方で靴を散らばすように家に入る。
なんだ帰ってるのか
と、男性の靴を見て思う。
別に決して疚しい事はない。
少し歩き、取手を握りながらドアを開ける。
「何だよ親父、出張から帰ってきたのかよ。なら、早く教えてくれよな」
と言いながらリビングに入る。
台所にくっつけるようにある小さな机に4つの椅子。
そこから少し離れて、3人が座れるソファーに低いガラスの机が一つ。
その目の前にはテレビ台とテレビが置いてある。
野球が好きな父親はテレビで野球観戦していた。
母親は気分がよく、鼻歌を歌いながらご馳走を作っていた。
「やぁ、3日ぶりだね、英助」
穏やかで冷静な父親だ。
ほんわかな男性である。
何故自分はこちらに似なかったのだろう
と、たまに思う英助。
顔立ちも性格も母親の方に似ている。
全てではないが。
冷静な所は、恐らく父親似だと思い込もうとしている栄助。