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≪人間の使う魔法は神に、エルフの使う魔法は精霊に力を借りる。だが借りてきた力は単なる力であり、その後の詠唱で影響を変化させる事が可能だ。だが神の力は攻撃用途に使えばより少なく短い詠唱で完成するし、精霊の力なら補助用途であれば短くなる。また、長い呪文詠唱をすれば精霊魔法であっても、神魔法と同程度の威力は発揮できる≫


 神さんと精霊さん、同程度の腕のプログラマーが二人いるとして、同じ仕様書を渡せば同じ結果のプログラムを作ってくれる。

 でも神さんと精霊さんは得意なものが違うので、完成させる時間は違ってくる。

 神さんは攻撃系が得意なので、攻撃用の仕様書なら短時間だけど補助用の仕様書だと時間がかかる、精霊さんはその逆って感じかな。

 でも時間をかければ苦手なものでも、作れるぞという事か。


 え、何をやっているのかって?

 講師役をやらされる事になったので、えっち先生に神魔法と精霊魔法の違いを教えて貰ってる最中だ。

 予習しておかないと、恥かくからな。


≪立派な心がけだな≫


 いやいや、単に気が小さいだけだよ。だって大規模クランでも随一の魔法使いなんだぜ、そんな優秀な生徒じゃ怖いよ。

 ちなみに宿は、運ばれてきたところに引き続き泊まることになった。もちろん宿泊費は捧げる剣ブレードデヴォート持ちだ。

 監視はするぞ、という意味だろう。

 でもこれだけ立派な宿に泊まれるなんて滅多にない、というより迷宮都市にきて初めてなので今のうちに堪能するのだ。風呂もさっき入ってきたしな。

 あ、この世界の風呂はお湯に浸かるのではなく、サウナが基本だ、ちょっぴり残念。


「えっち先生、詠唱のやり方は同じなのか?」

≪力を借りる部分は借りる相手が違うので異なるが、後続の詠唱は同じだ≫

「ああ、じゃあコツは教えられるな」

≪うむ、そうなる。ただやはり実戦で何度も使い身体に染みこませるほうが良いぞ≫

「だよなぁ。じゃ、最初の数日はこの宿で良いとしても、残りはダンジョンに潜って実戦か」


≪だがな、精霊魔法そのものを汝であればともかく他人に教える気はないぞ≫

「分かってる、えっち先生の知る魔法はやばいものが多いからな。下手なもの教えたら自滅するかも知れないしな」


 英知の宝珠の名は伊達じゃない。ありとあらゆる魔法を知っている。その中には世界を滅ぼせるような禁呪もあるのだ。

 こんな危険なものは封印しておくに限る。

 もちろん俺だって、危険な魔法があるということを知っているだけで、呪文のやり方は教えて貰っていない。教えろといえば教えてくれるだろうけど、自重しているのだ。

 だってこう見えても、えっち先生の主だからな。


「そういえば、えっち先生って過去の主に禁呪って教えたことがあるのか?」

≪ある。乞われれば教えざるをえない≫

「そうか……よく世界が無事だったな」

≪そうだな≫


 えっち先生の前の主が誰だったかは聞いてない。

 推測出来るからだ。

 だって俺がえっち先生と契約したのは三年前。そして三年前にぴたりと活動を停止し、それ以降全く名前を聞かなくなった探索者。彗星の如く現れ瞬く間にレベル六十五まで上り詰めたヒーロー。

 おそらく彼は五十階層のエリアボスに挑み、そして破れたのだろう。いつか五十階層を突破する、とギルド内で叫んでいたのを見かけたからな。

 なぜあんな路地裏にえっち先生が転がっていたのかは分からないけど。


 しかしレベル六十五ですら五十階層のエリアボスは倒せなかったのだ。

 どれほど強いのだろうか。

 いや、エリアボスに単身突っ込むなよ、とは思うけどさ。

 だいたい十階層のエリアボスですら、レベル二十を四人とか五人用意しないと勝てないのだ。五十階層ならレベル六十を五人とか六人いるんじゃないのか?


「なあえっち先生、五十階層のエリアボスって強いのか?」

≪強いかはさておき、それまでの魔物とは一線を画す事は間違いないな≫

「人類が五十階層を突破したのは一度だけだよな」

≪八十二年前だ。レベル五十超えの探索者二十一人で挑み、生き残ったのは四人だ≫


 マジぱねぇ。

 一体どんな魔物なんだろうか。

 ギルドも魔物の種類は把握しているのだが、非公開になってる。十階層、二十五階層、四十階層のエリアボスは公開しているのに、なぜだろう。


「いったいどんな魔物なんだ?」

≪それは汝が実際目で見て確かめよ≫


 五十階層なんて行ける気がしない。


「秘密って事か」

≪うむ、全てを知ってしまうと知る楽しみがなくなる。一つだけ伝えるならば、エリアボスはダンジョンの性質が変化する階層の手前にいることは知っているな?≫


 それは知っている。

 例えば十一階層からの魔物は魔石以外にも魔道具などを落とすようになるし、二十六階層からは単なる無機質の通路と部屋で構成されてたフロアが、いきなり山とか森とか外にいるようなフロアへと変化する。

 また四十一階層からは魔物が連携して襲ってくるようになる。

 こんな感じで変化するので、エリアボスは通称門番、とも言われている。

 人類が一度しか到達してない五十一階層ってどんな風に変化するのだろうか。

 噂では生き残った四人がちょっと様子見で五十一階層を覗いて速攻諦めた、とか。おっそろしいな。


 だが次のえっち先生の言葉に、一瞬俺は言葉を失った。


≪全百三十八階層からなるこのダンジョンは、五十一階層から中層・・となる≫


 ……中層?

 中層って真ん中って意味だよね。

 あれ、じゃあ五十階層までは上層扱い? 

 え? じゃあ人類は普段上層の魔物しか倒してないの? 序盤で行き詰まってるって事?

 いやまて、百三十八階層からなる、って新事実だ。多分誰も……えっち先生歴代の契約者以外知らないんじゃないのか?

 そうかー、百三十八階層あって、二百年かけてもまだ半分も行ってないのか。

 ……もし下層の魔物がダンジョンから出て来たら一発で国が終わるんじゃないの?

 だって、中層の入り口の門番ですら多大な犠牲者を出して一回しか倒したことないんだよね。下層の門番もいるだろうし、やばくない? 


≪余談だが一千八百年前、原初の魔法使いたちはこの大陸を切り開いたが、そのとき戦った魔物は下層にいる魔物に相当する。努力を怠らなければ人類もダンジョンの下層へ到達することは可能だ≫


 ふぇぇ、原初の魔法使いって本当に人間かよ。

 迷宮都市最強クラスの探索者たちが束になってかかっても倒せないレベルだな。

 しかしそんな凄い魔法使いの血が、俺にも流れてるんだよな、元貴族だし。一千八百年前じゃ相当血は薄くなってると思うけど。


≪やる気になったか?≫

「いや、壁の高さに回れ後ろして帰りたくなった」

≪なんと情けない。汝は本当に我、英知の宝珠と契約したものか?≫

「拾ったら勝手に契約って、テレビ機能ついたスマフォ買ったら契約と同じレベルだぞ。それに分かってるよ、俺は可能な限りダンジョンへ潜る・・・・・・・・契約だって事は」


 勝手に契約されたけど、それでも一度交わした契約は行使しないといけない。これは前世のリーマンの時の教えだ。

 損な性格だよな、まあ対価は凄いものなんだけどさ。


 ま、そんな先の話よりまずは目先の家庭教師だ。

 俺は再びえっち先生に魔法の制御などを交わしながら夜を過ごした。







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