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第4話 心強い助っ人達

 「アンタ、目を覚ましなさいよ」


 私は驚いて目を覚ました。

心臓が高鳴ったまま周囲を見回した。同僚が私の両肩を掴んで揺さぶっていた。

バスは宿に到着していて次々と降りていた。バスガイドさんが、お疲れ様でしたと労いの声をかけている。


「ねぇ!これは現実?」


 私は同僚を揺さぶり返し時計を確認する……事件発生の2時間前だ。

私は同僚とその友人、夢で助かった人達に声をかけ集まってもらった。

夢で見た話を聞いてもらい、一か八かで惨事を回避する相談をした。


「ごめんなさいね。この子一日中こんな調子で……」


 同僚が半ば泣きながら皆に謝る。すると一人から意外な言葉が出た。


「僕は正直、半信半疑だけど信じますよ」


 彼は社内外で信頼を寄せ、将来有望と噂されている中途採用の若い社員だった。


 「白い蛇が夢に出る話……。この地域では古い言い伝えになっているそうです」


 彼は前もって調べ印刷した資料を取り出した。


「部長達には紙が良さそうなので印刷しました。 これにまず、目を通してください」


 彼は、興味深く端的にまとめていた。

A4用紙3枚程度だが、すっきりと理解できて難を避けられる期待が湧いた。


「あなたが夢で見たその時間は、もう1時間後です。全員助けるには足りないかも知れませんがとにかく動きましょう」


 彼は私達に作戦を話した。


「あの、え……と」

「あ、俺は林崎っていいます」

「林崎さん、私の夢は信じてもらえるかしら」


 私は彼の名を覚えてない事に恐縮しながらもやっとの思いで言った。


「大丈夫ですよ。白い蛇が出た夢を話せば、女将や古くから住んでいる地元の人達なら理解してくれるハズです。勿論、あなたが話してくださいね。あなたの真剣さで信憑性を見てもらうんですから」


 私は彼に励まされ早速、女将を訪ねに行った。

ところが…。


「女将が倒れた!?」


 私達は動揺した。

女将がいなければ誰にどう伝えれば最善なのかがわからなかった。


「あのっ!白い蛇について、女将さん、何かおっしゃってませんでしたか?」


 話しを切り出したのはなんと同僚の彼女だった。私が目を白黒させていると


「ちょっと! アンタがしっかり言わないから、あたしが代わりに言ってやったのよ! 何とかしなさいよ!」

「ご、ごめん」

「得に皆さんへはありませんでしたよ。どうぞご心配なく、ごゆるりとお過ごし下さいませ」


 私達がなんだかんだと話しがまとまらないでいたら、痺れを切らしたスタッフが仕事用の作り笑顔で言った。


「……どーすんのよ!ねぇ!」


 同僚が私に詰めよる。


「落ち着いてください」


 なだめたのは、中途採用の林崎だった。彼はスタッフに訪ねた。


「女将さんは白い蛇について何か言ってませんでした?」

「あ、この地元の言い伝えですね♪」


 スタッフが明るく答えると彼は言った。


「失礼ですが、あなたは地元出身ではありませんね。この宿で地元出身の従業員の方はいらっしゃいませんか? 大切なお話があるのですが……」


 するとスタッフは怪訝そうな顔をして他のスタッフに何かを命じた。


「お客様……。こちらにおかけになって少々お待ちいただけますか? ただいま専務を御呼びします」


 私達は林崎君を囲んでソファーへ腰掛け、専務を待った。だが、いつまで経っても専務は来ないしスタッフも見当たらない。


「どうしちゃったんだろ」


 私は不安に思い、時計を見る。


「大変!! 時間が!!!」

「仕方ない、食事会場に行って直接言おう! 出来る限り皆を避難させるんだ!」


 彼の先導で私達は立ち上がり食事会場へ向かおうとした時、館内放送がかかった。


「只今より、抜き打ち避難訓練を開始します。

東日本大震災を教訓に、当旅館では地元観光協会と協力しお客様の安全の為に、避難訓練を実施しております。突然ですが、お客様全員参加でのご協力をお願いします」

「その手があったか!」


 彼は目を輝かせた。


「この時間に避難訓練かよ……」

「あたし、温泉に入っていたのに急に出されちゃったのよ、 酷いよね!!」


 他の宿泊者からの苦情が飛び交う中、淡々と避難訓練は進んだ。

スタッフは皆、時計を確認しながら険しい顔つきで誘導する。

いつしか、彼らの真剣さに、本気で逃げなければ何か恐ろしい事が起こるのでは……と宿泊者達は思うようになっていた。


「速やかに慌てず、バスにご乗車下さい」


 スタッフが皆を誘導する。

1台50人が乗れる観光バス5台と宿送迎専門のミニバス3台、スタッフ自家用車に分散し宿泊者全員とスタッフ全員を乗せた。1人の観光バスの運転手がメガホンで言った。


「私が先導しますので、後に続いて下さい」

「……あっ」


 私は驚いて声をあげた。

夢に出てきた運転手だ。


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