第1章 第6話 初めて
ー 香花館 中央 無限自室 ー
ハアハアハア
と、息を切らし、大急ぎの表情を浮かびながら
「無限さん!」
彼は、主の名を呼んだ。彼は陣之内 優多。重力を操る能力を持った人間であり、この香花館の主である
知学 無限の執事だ。
「優多か、ちょうど良いとこに来た!」
「え?なんでしょうか?」
「客人だ黒隊だから君にはちょうど良い相手だね」
無限はニヤリと言った
「君の力であれば数百の黒隊も簡単に倒せるだろうから頑張ってね」
「えっ?ちょっと待っ…」
消えてしまった。まだ状況が上手くまとめられない。
僕が無限さんの部屋に入ったらなぜか勝手に黒隊と戦うことになった。しかも数百体は無理だと思った次の瞬間、無限が座っていた椅子の背後にある巨大なステンドガラスが割れて黒い物体が飛び込んできた
「な、なんだこれ!」
黒い物体が次々と室内に入っていく。そして次々と落ちてだんだん液体のような形から黒い人型になっていくとてもグロテスクな光景だった。そしてその物体、いや、黒隊は
キイィィィィ
と黒板を爪て引っかくような叫び声を上げ優多に襲いかかってきた。
「わああ!くるなああ!」
優多の体は震えていた。初めて見る恐ろしい生き物の恐怖といつ殺されてもおかしくない恐怖に。
だが、剣術で鍛えた精神で自分をなんとか落ち着かせた。
「そうだ!僕には重力を操る能力を持っているそれに僕は剣術を習っていたんだ!」
なんとか自分に言い聞かせ、こいつら黒隊を倒すという選択肢を選んだ。が、肝心な事を忘れていた。
「待て待て待て!重力を上手く利用したところで肝心の剣がないと!確か持ってきた刀は…やばい!部屋に置いてきたんだった!どうしよう…」
“ 刀がないなら自分で作れは良いじゃないか ”
「…へ?誰かいるんですか?」
空耳だったのか、周りには数百体の黒体と自分しか居ない。だが、そこで優多の頭がキレた。
黒体の連続で続く攻撃を華麗なステップでよけ、ひらめいた。
「…そうか、そういうことか。 ー刀を作るー 今の僕だったらできる」
優多は、確信し集中力を入れ刀を抜くように手を思いっきり振った。そして驚くことにその手には、
青白く光輝く聖剣 ー 気力刀 ーがあった。
なぜ、このような事が今の自分に思いついたのかさっぱりだが、優多はあまり深く考えない。
「よし今度こそ戦える準備が整いました。さて、どこからでもかかってきなさい!」
優多は自信満々な顔をし、刀を構えた。そして、
「キイイィィィィ シャアァァァァァ バャォォォ」
悲惨な黒体の呻き声が多くなると共に
黒体がものすごい速さで、こちらに向かってくる。
襲い掛かる黒体の群れに一歩も引かず優多は攻めて行く。
前だけでは無く。横、斜め、背後、360°どこから見ても黒体が優多に手を出す隙は無かった。
そして、決まり技に勢いをつけ、高く飛び刀を残像ができるほどの大回転斬りを放ち、ここにいた全ての黒体の下半身と上半身を分けた。
1時間約43分5.38秒全て黒体を倒した。
でも不思議なことに黒体の血などがまるで無かったかのようになっていた。
初めてやることだったからか、疲れがどっと出てその場で倒れこんでしまった。
「ああ…疲れたなぁ」
それに、不思議な事に今までの自分だったら襲われるだけで、何もできなかっただろう。だが、
『今』は違った。
黒体になんの抵抗もなく…いや、少しはあったが、一歩も恐れなかった。
ものすごい成長だった。同時にものすごい勇気を得られたような気がした。少なからず、ここは今の自分がいるべき場所だと確信した瞬間だった。