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新米退魔師と氷結の姫  作者: 槻白倫
第一章 覚醒編
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第一話 夢


「ごめんなさい…。今は、こうするしかないの…。本当に、ごめんなさい…」


 誰かの声が聞こえる。幼さの残る高い声だ。女の子だろうか?でも、誰の声かは分からない。ただ分かることは、その声が、ひどく懐かしく感じる声だということだ。


「行くよ、氷霞」


 今度は違う声が聞こえてくるが、こちらも聞き覚えがある声だった。


「ええ、分かったわ。お姉様」


 行って欲しくない。行かないで欲しい。そう思っていても体が言うことを聞かない。


「あっ、くっ」


 必死に声を出そうとしても、喉から空気が出るだけで、声にならない。

 その声に彼女が振り返る。


「また…。また、会いに来るから…」


 彼女の、泣きそうな声を最後に、僕の意識は暗転した。


********************


 ピピピと、聞き慣れた電子音が聞こえる。多分目覚まし時計だろう。鳴ってるなら起きなきゃな。


 僕は、体起こし目覚まし時計を止め、大きく伸びをする。

 さっきまで、夢を見ていた気がするが、どんな夢を見ていたのかは、思い出せない。ただ、懐かしく感じたことだけは覚えている。


「何だったんだろう」


 しばし思案してみたが、さっぱり思い出せない。

 懐かしく感じた、と言うことは、結構昔のことだろう。

 声は聞いたことがある気がするんだけどな…。

 何か引っかかるものを感じ、それをたどっていこうとしたとき、急に頭にズキッと痛みが走った。


「うっ!」



 呻き声をもらししばらく堪えていると、謎の頭痛は去っていった。

 何だったんだ、今の?


「おっと、もうこんな時間か」


 思案を巡らせていると、起きてからそれなりに時間が経っていた。


「そろそろ準備しないとまずいな」


 一旦考えるのを止めて、僕は、身支度を始めた。

 身支度を済ませ一階のリビングに行くと、ちょうど、姉が朝食を作り終えたところだった。


「あ、綴くん。おはよう」


「おはよう、姉さん」


 料理を、テーブルに運ぶのを手伝いつつ、挨拶を返す。


「そう言えば、今日は、お母さん仕事で遅くなるから、晩ご飯は、作ったら冷蔵庫

に入れといてね。だって」


「うん、分かった」


「テレビつけてみたら?多分、お母さん出てくるんじゃない?」


 促されるがままに、テレビをつけてみると、姉さんの言ったとおり、朝のニュースでは母さんのが映っていた。


『下級の妖魔なので、すぐに討伐は終わると思います。ですが、近隣住民の皆さんは、討伐が終わるまでの間は、外出は控えてください』


 案外近いな。登校時間は少し遅らせようかな?などと考えていると。


「また妖魔か…。最近多いね」


「そうだね…」


 妖魔。この妖魔と呼ばれている者は、いつ、どこで生まれたのかが定かではない。研究をしている今でも、それは分からないらしい。ただいえることは、妖魔は、世界中にいて、昔からいたらしい。それと妖魔には決まった形は無く、人型もいれば、獣型、さらには異形の者までいるとか。


 そして、妖魔には人に害をなす者もいれば、そうでない者もいる。人に害をなす妖魔は、討伐対象になり討伐されてしまう。一方、人に害をなさない妖魔は、使い魔として使役したり、そのままのほったらかしにしているか、発見されずに、のほほんとと暮らしている者もいるらしい。ただ、こちらは少数派なので大概の妖魔は、討伐対象になってしまう。


「お母さん、怪我しないといいけど…」


「大丈夫だよ。母さんも同じ隊の人も強いから」


 ご飯の準備が整い、二人とも椅子に座る。


「いただきます」


「はいはい、いただいちゃってください」


 ご飯を食べながらもニュースを見ていると。


『なお、現場の周辺には退魔師が配置されておりますのでご安心ください』


 良かった、これなら登校時間をずらさなくてすみそうだ、と思っていると。


「今日は、私が学校まで送ってくわね」


「え、いや、大丈夫だよ。退魔師の人も配置されてるんだから」 


「そう言うわけにはいかないわよ。お父さんとお母さんに留守を頼まれてるんですから」


 因みに、母さんも父さんも退魔師だ。母さんは、日本の退魔軍の関東支部に所属している。父さんも、日本の退魔軍に所属しているが、九州支部なので別居している。


「それに、私だってこう見えて、退魔師なんだからね?」


 そう、姉さんも退魔師だ。と言っても、退魔師育成学校の高等部に通っているので、退魔師の卵みたいなものだ。


「それはそうだけどさ。ほら、姉さん、学校遠回りになちゃうよ?遅刻しちゃうかも…」


「なら、いつもより早くお家を出ればいいだけでしょ?」


「いや、でも…」


「…そんなに私と行くの、嫌?」


 シュンとうなだれて、悲しそうな声でたずねてくる姉さん。


「…」 


 こう言うのは、ずるいと思う。


「ふぅ…。分かったよ、姉さん。一緒に行こう」


 すると、瞬く間に笑顔になり。


「そうと決まれば、早くご飯食べて、早くでようか。ささ、早く食べて食べて」


 妙に嬉しそうな姉さんに促されて、僕は、少しばかり急いでご飯を食べた。 

 


 



不明瞭な点がありましたらお手数ですがご報告下さい。

できる限り、修正や説明をしていきたいと思います。

未熟者ですが、楽しんで頂けましたら最後までおつきあいしてくだされば嬉しいです。

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