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思わぬ出会い

今回はまた第三者視点です。

 突然見た事のないピンクの巨獣が降ってきた。


 ドシュッ!!


「ギャアアーッ!!」


 それが身軽に着地した次の瞬間。一撃で腕をえぐり取られた仲間が絶叫する。


 ビシュッ!


 ほぼ同時に何かが飛んできて、切れた束縛魔法付加の獣綱が宙に舞う。


「グイィイイイイ!!!」


 綱を切られ、興奮したチートタルディグラーダが後足立ちした。

「グイィイ!!」

「グイィイイイ!!」

 興奮が他の3頭にも伝染し、殺気立ったチートタルディグラーダが暴れだす。こいつらが本気で暴れたら太刀打ちできない。俺たちは残った綱を手放さないようにするので精一杯だった。


「何だアレはッ!」


 御者達を組み伏せていた上司達が叫び攻撃態勢に入る。


 バキャッ! ドシャアッ!


 ピンクの巨獣の長いかぎ爪が振り回され、上司の首が飛んだ。鮮血が飛ぶ。ダガーが地に落ちる。

 体格の割に動きが速い。野獣ではなく肉体強化された魔物のようだ。あのバカ強かった上司が一撃でやられるなんて、王都の結界内にこんな大物が現れるなんてどういうことだ。オレは状況が飲み込めず立ち尽くした。


「逃げるぞっ!」


「あ・・・」


 上司の死で隷属を解かれたのか、仲間が背を向けて走り出す。逃げたかったが、オレは金縛りのように動けない。

 じり、絶対的強者がこちらを向く。

 このピンクの生き物が次に身動きしたとき、オレの命の終わりだと思った。



「タ タスケテ・・・」



 *************************


 最高級乗用獣であるホワイトユニコーンペガススが舞い降りるのを見つけたオレたちは、町外れの廃屋に来た。


 ベージュや茶などでも十分高値だが、真っ白なんて王都中探しても数頭いるかどうかだ。王族と相当な金持ちしか所有しないあれが出歩くのは珍しい。しかも町外れに降りるなんて、めったにないチャンスだ。とは今死んだ上司の弁。


 いざ着いてみたら、ホワイトユニコーンペガススは見当たらなかったが建物の前に最新型の4頭立て馬車が停まっていた。しかも付けてあるのはチートタルディグラーダ。

 ”馬”とひとくちに言ってもこの世界ではいわゆる馬や牛のような形の動物だけではない。チートタルディグラーダは8本足の中型草食節足動物で、いわばチーターのように足が速い巨大クマムシだ。知能はそこそこだがとにかく固い甲殻を持った身体が強く、悪路でもよく走るしそうそうのことでは死なない。

 最初見たときはグロくてびっくりしたが、これもとても高く売れる。


 周りにいるのは御者2人の他、特に強くもなさそうな下男2人だけだった。雇い主の金持ちは建物の中だろう。ホワイトユニコーンペガススは屋上かもしれない。上司は「まずこいつらを頂くぞ」と舌なめずりした。

 こちらの手勢は上司含む8人。うち肉体強化型の本職黒扉が4人、オレを含む【魔物使い】と【動物使い】特化型隷属が4人。これなら強奪に手間はかからないはずだった。俺たちに各々捕獲用獣綱を用意させ、上司達が御者達に襲いかかった先の出来事だった。


 そう、オレは黒扉の動物闇取引グループに使役されていた。


 オレは3年前の第二期勇者候補だった。

 だが元々肉体強化型ではなく、動物にやけに好かれ扱いがうまいというだけの能力だった。だがそれだって強い魔物相手には試した事はない。

 しばらくは神殿の馬の世話をさせられていたが、このままではいつか前線に連れて行かれ魔王に食われると思うと怖くてたまらなかった。

 隙を見て逃げたつもりだったがあっけなく捕まり指を切られた。神官に捕まったはずだったのに何故か今は黒扉の元で顎で使われている。基本的な仕事は取引に出す魔獣や野獣の世話。そしてたまにこうして商品調達につき合わされる事。


 黒扉の他のグループとの面識はほぼないが、逆らって半殺しにされた隷属仲間の話を聞いていた。もう一度脱走したら殺される気がするし、元々動物の世話は嫌いではない。死ぬよりましと思って今までなんとかやってきた・・・。


 だけど、ここで死ぬのか、オレ・・・。


 日本に帰りたかった・・・。


「あれぇ〜?おじちゃん日本人にゃの?」


 さあ殺されるぞと思ったとき、ピンクの巨獣は血塗れた爪を下し、オレに顔を近づけ小首をかしげた。ピンクの鼻先がぴくぴく動く。


 ・・・3年ぶりに聞く日本語だった。




「ちょっとストップッ!強盗くらいで殺すのはやめよ!」 


 あまりのことに惚けたオレの横に、音もせず黒スーツの女が現れた。

 頭をぶん回して暴れていたチートタルディグラーダ達も女の魔力に気圧されたのか急に大人しくなる。


 ざわっ・・・。


 怪我をしうずくまっていた御者達と、巨獣にボスを殺され戸惑っていた黒扉達。全員が動きを止め息をのんだ。


「助かった!助けてください黒の使者様!」

 黒扉達は危ない所で後ろ盾が来てくれたと思って喜色を浮かべる。


「ヒッ!た、助けてくれぇ!」

 元々怯えていた御者達は絶望的な表情で頬を引きつらせた。


 御者達と黒扉が各々別の意味で助けてくれと叫ぶ中、オレは混乱していた。


(このヒトも日本語だった)

(黒い服・・・でもあれ、元の世界のスーツだよな)


 音もせず急に現れるということは、ステルス魔法どころか隠密魔法の使い手だ。上級の軍人や傭兵くらいしか使えない高級魔法だと聞く。それにこのヒトはマントこそグレーだが、中のパンツスーツは黒。極めつけに黒い長髪に一筋白いメッシュ。

 もしオレと同じ、召還された日本人なのだとしても、黒の集団の使者だと勘違いされる要素ばかりだった。


 黒扉の後ろ盾は、黒髪に白いメッシュ・全身黒装束の「黒の集団」と呼ばれる者達だ。下っ端の下っ端であるオレは正体は知らない。

 黒扉は最下層の男どもの流れ着く先なので金髪はおらず茶髪が多いが、黒の集団に憧れて髪を黒く染める者も多い。天然で黒髪のオレが黒扉の中で半殺しの目に遭わされずにすんでいるのはそのせいもあったと思う。


「え〜?悪い人やっつけるのぉ〜!」


 男達の懇願や悲鳴などはまるっと無視して、ピンクの巨獣が女に向け甘えるような口調で地団駄を踏んだ。

 仕草はかわいらしいと言ってさしつかえないが、いかんせんサイズがでかいのでズシズシ地面が揺れる。


「この子説得して〜!」

 黒髪の女が上を仰ぎ叫んだと思ったら、さっと視界から消えた。


「皆動き止まってるウチに生け捕りしろ殺したらもったいないから殺すなよわかったな〜」

 建物の屋上あたりから少年の声がしたのとほぼ同時に、仲間が逃げていった方向から爆発音がした。


 ちゅど〜ん!!


 ガキィッ!!


 あっと思う間もなく、消えたと思った女がさっき走って逃げた仲間を地面に引き倒していた。

 その向こうではもう1人の仲間が爆風を食らい目を回して倒れていた。


「え〜もおずる〜い!力加減が難しんにゃもん〜!」


 ピンクの巨獣は拗ねたようにドンッと地面を踏みしめると、びょ〜んとジャンプして御者達を組み伏せていた黒扉3人に襲いかかった。


 そしてたった数秒でその場に立っているのはオレだけになった。


 また消えたと思った女が目の前に現れ、思慮深げな目つきで問いかけてきた。


「あなた、日本人ですか?」

年末進行と衆院選準備で忙殺中>>やっと生き返りつつあります。1月1週目には少なくとも更新しますのでよろしくですう!

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