第二章29
二撃目は辛うじて防いだ。水心子正秀と和泉守兼定の正面衝突。肩が軋み腕の筋肉が悲鳴を上げる。噴き出す血が顔を濡らす。ぬめる血液充満する血臭。
大鷲のように空中を制した『剣聖』はその体勢のまま一捻り。軽く空に上がって、仕留めに掛かる。
「八極光舞――――」
軽やかに、バレエダンサーのようにくるりと身を翻して、
「――――無影斬!」
量子加速器のように、和泉守兼定を撃ち放つ。これまでと速度の桁が違う!余りの豪速に空間が歪み衝撃波が唸りを上げる。
六十四倍速でも、絶対に、追いつかない!
(まだ!速度が足りない!なら!)
脳内・心臓内・臍下丹田に加速回路を仮想魔術展開=情報処理・魔法演算・肉体運動統括を分散運用計算三核機構開始。五一二倍速化!
ギリっと奥歯を噛む。
獲物を切り裂く鷲爪は推定秒速二万キロ!
一直線に心臓を穿ちにかかる!
「ううう…チエエエエエエエエエエエエエェェェイイイ!!!」
対するこちらは、振るう水心子正秀に全霊を込めた秒速二万八千!
キギリリリイイイイイィィィィィィンンンンンン!!
凄まじい金切り音を上げる剣戟樂団。
水心子正秀から伝わってくる数万トンの衝撃が、体を貫いていく。
「アヅ………クウウ」
全力を掛けて振り抜いた一撃は、和泉守兼定を弾き返した――――代償として、僕の両手の骨を粉々に砕いて。
(あう………っつ)
無理な力を使って虚脱した体に緊張が走る。目前に数十の刃が迫っていた。
(やばっ………)
急いで迎撃態勢を取ろうとするが、一度崩れた集中はすぐには高まらない。ハリネズミのように身体じゅう棘だらけになるのを覚悟したその時、