第二章27
「舞風・空蝉――――七星剣!」
燕のセイが真名を呼ばれて、僕の左手で真の姿に戻る。
ざっと当たりをつけて、秒間十数の刃を弾き返す、返す、還す!
ギギギィリィギリィギャリンジャギリィン
刃と刃の耳をつんざぐ金属音。
「ハッ!」
右手に和泉守兼定、左手に長大な西洋剣火炎剣。
「――――豺狼」
刃の雨を縫って、地を這うように襲い掛かる『剣聖』。初手は足薙ぎ、七星剣で止める。続いては、オーバースイングで頭蓋を断ち割ろうとした火炎剣を、
「ッケイ!」
逆手に握った水心子正秀で根元から叩き折る。
「ッチ」
舌打ち一つ残して『剣聖』は超低空姿勢のまま脇をそれて通過。
息抜く暇もなく飛来する刃のうち危険性の高いものだけ選んで両手の刀剣で切り払う。
一本二本なんて数える暇なく秒間十本程度を斬り、払い、弾き、砕き、割り、崩す。
「――――蓮香」
三秒後に『剣聖』が再び斬りかかって来る。左手には新しく喧嘩剣を握って。刃の雨と雨、その僅かな隙間に側転から身伸宙返りの飛技を使って。
「うわ!?」
奇抜な動き不安定な体勢からの、首狩り目指した精確な斬撃。重く強い和泉守兼定の一撃を何とか水心子正秀で受け止め、間髪いれずに顔面に切りかかった喧嘩剣を七星剣で払い除けた。
――――が、
ザジュっという肉切り音、貫く衝撃。激痛、
「あ!」
注意を『剣聖』に向けすぎた。刃が左太腿に深々と突き刺さっている。
刹那、視界に翳が差す。目の前には、もう刀刃が――――