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第二章26

「取引失敗、交渉決裂か」

 ぐいっと体重を掛けてくる『剣聖』。

「そういうこと。君の恐喝暴力に屈しない」

熱い吐息が首筋に掛かる。

「自殺なんてしないし、命乞いだってやらない。だからこれは要らない。君に返すよ」

左手に持ったままの自殺短剣を差し出す。刃先を我が手にしたままで。

「いいよ、餞別だ。とっときなって。死にたくなったらいつでもそいつを使いな。比較的楽に死ねる。

 あんたにその意思が無いなら無いで…何か、他の使い道もあるかもしれないからなぁ。

 売払ったらそれなりの値段にゃなるしな」

口元を歪めて、皮肉気に哂う『剣聖』。

「――――そう、それなら貰っておくよ」

手から放して袖口に隠すように短剣を収納。

「じゃあ、容赦なく行くぜ御先祖様。

 自害したほうが楽に逝けたと後悔しな」

「後悔なんて何一つ。

 あらゆる人の後悔と悔悟と諦念と絶望の末に僕が呼び出されたんだろう?

 ――――ならば、僕だけはそんなものを感じちゃいけない」

 『剣聖』が後方に跳び退る。リプシマ(ディド)の所まで。


『舞風――――』

 同じ顔、同じ声、同じ魂の二人で、同じ技で斬り合いを始める。

「――万葉(まんよう)!」

「――――四葉(よつよう)!」

 中身の欠けた僕と、僕の欠片による、まるで鏡地獄のような、戦い。

 『剣聖』の雨霰と降りかかる刃。

 ピリリリ――――一万刃(それ)を残った四羽の鵝臨射が弾けるだけ弾いて無力化する。それでも機関銃の如く物凄い数の刃が襲い掛かる。

背後のエリーシャを庇う。

 足元の雛鳥を庇う。

 しかし、右手の水心子正秀の重みがある限り恐れなどは微塵すら。

 戦闘技術なんて、僕にはない。

 神呪天討流の『技』なんて、僕には無い。

 ならば、こどもの頃から繰り返してきたやり方を戦闘に応用するしかないだろう。

「――――加速」

 魔力が全身の隅々まで行き渡る。

 思考・判断能力、筋力・神経伝達能力、五感の八倍速化――――開始!


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