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第二章23

「御先祖様よ、取引だ」

「――――あ………あ?」

 最早抗う力も痛みに喚く体力すら無くなったところで『剣聖』が加虐の手を緩める。

 差し出したのは、一本の短剣。

 柄口には宝石が散りばめられた西洋貴族が儀礼用に持つような、煌びやかな短剣。魂が吸い取られそうなほどの、輝き。

「自分の意思でコイツを腹に突き刺したら再生能力が作動しないように術が掛けてある」

 

「………御先祖様が自害切腹すりゃ、百万の人間は生き残れる」


「――――え?」

 呆けた答えを返す僕に『剣聖』は笑いかける。哂うのではなく、優しく、笑う。

「今のままでは人類の絶滅は避けられない。けれど御先祖様が死ねば、自ら命を絶ち、人類に最早ミゼリコルディアへの全ての抵抗力が無くなった事を示せば………」

――――そう、エリーシャが作った政府広告の中の『剣聖』のように、優しく、やさしく、一目で見るものを魅了するように。

「『腐敗王』ガモンハイド様は力無く惨めな人間ごときが月の片隅、暗闇の穴底で細々と生きていくぐらい黙認してくださる」

「じが、い…せっぷく………?そんな……」

「なあに戦国日本ならどこでもやってた事だぜ。主家が天晴れ至極な割腹姿を見せる事で一族郎党部下家臣一門衆まとめてそっくり生命保障の本領安堵ってな。

 そしたら俺達ランツクネヒトがこの箱舟(ウトナピシュテム)を取り仕切って、平和に話が終わるわけよ」

 笑いが、再び哂いへと変わる。

「………(もっと)も、あんたがここで死ななけりゃ封印を破ったガモンハイド()が直々に手を下す事になる。そうなりゃ、情け容赦なく皆殺しだ。なんせ、御先祖様に戦闘能力も殺神能力も無いんだからな」

 辛辣という文字を顔に書いたような表情で、

「さあどうする御先祖様、今すぐみんな纏めて絶滅するか、それとも慈悲深く最後の時間をくれてやるかの二択だ」

 答えを迫る『剣聖』



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