表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/54

第二章22

 ――――口唇を、奪われた。

 想像も付かなかった行為に体が緊張する。

 荒々しい舌使いで僕の口の中の血が舐め取られる。

「コウキ、君!?」

「んー、じゃましちゃだめー」

(や、やめ………て、よぉ)

 エリーシャが助けに来て(リプシマ(ディド)に止められているが)ようやく抵抗する意思が生まれて、ジタバタと足掻く。が、『剣聖』は僕の体を締め上げて放そうとしない。

 と、痙攣する右手から、

(あっ、だめ、ダメ)

 根こそぎ力が奪われていく感覚。百年掛けて守り続けられ、そして、ついさっき、僕の元へ帰ってきた力が、奪われていく感覚。

(いや、だ。やだーーーーーーーー!)

「んあ!?」

 力任せに動いて、ようやく『剣聖』を突き飛ばした。

「〜〜〜〜〜〜っ!!」

 手の甲で自分の口唇をゴシゴシして、『剣聖』を睨みつける。

「クハハハハハ、貰った貰った貰ってやったぜ鵝臨射をよぉ!ババアたちが百年かけて守った鵝臨射をなぁ!」

 『剣聖』の方は僕の事などお構いなく

「舞風・八葉……来い鵝臨射どもよ!」

 試し切りを、始めた。

 バサリ、バサリと翼の音、しかしそれは福音でなく、

「!やめてーーーーーーーーーーーーー!」

 無差別に大規模に、喉が裂けんばかりに張り上げたエリーシャの声が、蚊の鳴くようにしか聞こえないほど、『剣聖』の手に渡った鵝臨射は全てを切り裂き始めた。

 壊れる壊れる螺旋回廊実験鳥籠。

 ピーピーギャアギャアガーガーキーキー。

 小さく大きく強く弱く、種々様々な………断末魔。それは百年を守られた絶滅危惧種達の………断末魔。

 飛び散ってくる血、羽、肉片、卵の残骸。

「ちっ、まだ半分だけか。いまわの際じゃねえと吸い取れねーって面倒だな」

「そ、んな………」

 鵝臨射が………鵝臨射の半分、刀に変わる猛禽四羽が………奪われてしまった。

 アカリが、ヒカリさんが………守ってくれた………鵝臨射が………


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ